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引き寄せられる力

決めポーズのまま、笑いをこらえる二人に質問をする。


「この辺をどついてもいいですか?」


ぶるぶると首を横に振る二人。


どの程度の力が出るのか、部屋の壁をたたいてみようと思ったのだが、却下された。


---


「あなたの体に神器が宿っていることは間違いなさそうです」


ライトブラウンが何かの測定器をこちらに向けている。


「これ、お返ししたいのですが」


コスプレイベントなら活躍できそうだが、生憎とヒーローオンリーは地元では開催されてない。


「神器はあなたの精神体と深く結びついています。無理に引き剥がすと」


「剥がすと?」


「…精神が崩壊します」


それは死を意味するのか、それとも廃人になるだけなのか。


さっきから体が勝手に動いて落ち着かないので、スーツを解除したいと思っていたら、視界の隅にそれらしいボタンがみえたので押してみた。


体の外側を覆っていたスーツが光の粒になって消えていく。全裸になったりはしなかった。股間をさらしたところで、どうというものではないが。むしろ見せ付けて困惑させたい。迷惑チンを払えというやつだ。


「脱いじゃうんですか?」


金髪女神がカメラらしきものを抱えてやってきた。大昔の映画に出てくるじゅばっ!とフラッシュを光らせるのに似ている。


「こう見えても最新鋭のデヅタルカメラなんですよ?」


デヅタル?中国製品の名称でジがヅになっていたりするお約束的な?


「本部への報告があるので、もう一度お願いできますか?」


あのセリフは勘弁してもらいたい。


「省略!」


ぺかーっと辺りがまばゆく輝き、ふたたび銀色の中二病患者が現れる。


---


その頃。


突如とし地球周回軌道上に現れた全長7kmほどの恒星間宇宙船。


某大国の観測網が数分の間をおいて二回ほど高エネルギー反応を捕らえていたが、それが何であったのか特定は出来なかった。


そして俺と二人の女神は気づいていない。


「俺」に宿った神器の本体がこの宇宙船であることを。


---


モデル立ちをして数十枚ほどデヅタル写真を撮られた俺は疲労困憊していた。


「神器がなじむまでの辛抱ですよ」


神器と精神体が完全に融合するまで倦怠感や頭痛、めまいがするという。


この二人は俺からこの神器を取り出す気は無いらしい。


「そういえば困りましたね。この神器を本来受け取るべきなんとかさん?」


金髪女神はひとごとのように言う。


「エリーシャ・オリバー。魔王を倒す宿命の騎士ですよ!」


二人がぎゃいぎゃいと言い合っているので口を挟む。


「無いなら作ればいいんじゃ?」


「「そんなことが出来れば困りません!」」


逆切れされた。元々は金髪女神のせいなのに!


うーん。作れないのか。そんなことを考えていたらバイザーに何か表示された。


読めと催促されている感じなのでバイザー内部に表示されたコマンドを読み上げる。棒読みで。


「ローディング!武器創造!マテリアルセット!マキシマムホーリーブレイド・マックス!アクション!」


目の前に光の玉が浮かび上がり、それは徐々に細長く引き伸ばされる。


上下からハンマーで叩かれるエフェクトが数度繰り返され、そこには…


「「神器が!!!!!!!!!!」」


きらきらと無駄に粒子を振りまきながら一振りの剣が姿を現す。


「ほう。」


俺はその剣を手に取り、しげしげと見つめる。こんなのが刺さったのか俺。


二人の女神の目から光が失われ、呼吸すらしているのかも怪しい。


「なんだ、簡単じゃないか」


一緒に創られた鞘に剣を収め、事務机の上に置く。


「んん?」


視界がぐにゃりと曲がり、そのまま暗転した。


「お疲れ様ですおにいさま」


そんな声が聞こえた気がする。


---


「もにゅ」


何かつかむ夢を見ていた気がして、手を伸ばしたらやわらかいものにあたった。


「お」


「ひゃっ!」


俺は金髪女神の膝枕で眠っていたようだ。


もにゅっというのは…忘れよう。


「女神の乳房をもてあそんだ罪!責任とってください!」


「いや責任取るのはそっちだろ!」


跳ね起きたせいで、俺の顔を覗き込んでいた金髪女神と頭ゴチーンして目から火花が出た。


「うぎー」

「あがー」


ふと隣を見るとライトブラウンは何かの書類を作っている最中だった。


「お気づきになられましたか?あなたは力を使いすぎて倒れていたのです。いきなり神器を創造するなど前代未聞です!その剣一振りを作るのに何ヶ月もかかるはずなのに!」


その声はトーンダウンする。


「ともかく、ありがとうございました。神器を行使する人間に譲渡すれば任務完了です」


「どうやって渡すのですか?」


興味本位だ。悪い癖が出た。聞くだけ地雷だろう。


「エリーシャ・オリバーに直接届けなくてはなりません」


ライトブラウンは金髪を見つめるが、金髪の目が泳いでいる。


乗りかかったなんとかだ。


---


「ぴしゃーーーーーーん」


俺と金髪女神は雷に乗ってエリーシャの住む世界へと降りた。いわゆる雷タクシーである。


「タクシー自腹とか無いです…」


「あれだけ問題起こしておいて首にならないだけマシじゃね?」


ちなみにクビは無く、何かやらかすと降格されて地上勤務になるのだそうな。お仕事の内容はあえて聞かなかったけれど相当ひどいものらしい。


今回は俺が神器を創り出したので注意程度で終わった。


未練がましく財布を開閉する女神を引っ張って、エリーシャとの合流ポイントである焼け落ちて寂れた教会へと進む。


---


「エリーシャ!」


「め・・・めがみさま!」


見た目18歳くらいの薄いピンクのショートヘア女子が無骨な鎧をまとって立っていた。どうやら事前に接触はしていたようだ。


エリーシャは金髪女神にひれ伏す。


「エリーシャ・オリバー。そなたを勇者と認め、このまきしまむほーりーぶれいどを進呈する」


進呈?


エリーシャはあっけにとられていたがすぐに気を取り直したのか、女神から剣を授かる。


しゃん!と鞘から抜き取られた剣は七色の光を放ち、ぼろぼろの教会の中を照らし出す。その後、奇跡と呼ばれるお約束の現象が起こり、教会が美しく生まれ変わった。


「こ…これは!」


おどろいているのは金髪女神である。「この神器にはこのような力は無いはず!」と呪文のようにうめいている。


伊達に「マックス」が付与されているわけではない。同じものを創るのは二流。乗り越えてこそ一流だ。


「ほほう。人間ごとき下等生物がたのしそうなおもちゃをもっているではないか?」


声のする方向を見ると、真っ黒な衣装に身を包んだろりっこがぺったんこな胸をそらしてふんぞり返っている。


「ま・・・・・・・・・まおおおおおお!」


魔王?


いきなりのエンカウント!

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