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カオスキャッスルで朝食を

俺が家に戻ると金髪さん以外は全員が目を覚ましており、それぞれ身だしなみを整えたり、お茶を飲んだり、テレビにかじりついたりと思い思いにすごしていた。


「朝ごはんは外に食べに行きますよー」と伝える。一応外食だよね。


テレビにかじりついていた王女、まだ寝癖のついたミラさんだが、見ていた教育番組をあわててニュースに変える。


王女が見ていた幼児向けの「みこみこぴゅん!」は大人も楽しめる良作なエンターテイメントなのに。別に子供っぽくないですよ?


ぶかぶかの巫女装束を纏ったリアル幼女の「みこぴゅん」が玉串を振り回して「のじゃ!のじゃ!」と言いながら相方のCG合成されたロボットと共に雑学について語る番組。今のみこぴゅんは三代目だ。


今朝のお題は「地球を回る人工衛星が落ちてこないのはどうしてなのじゃ!」というものだったらしい。最後の「またなのじゃ!」が見たかったのに。


「おじさん、今日は「ふらっしゅぷれぴあ」お休みみたいだよー」


と新聞のラテ欄とにらめっこしていたお嬢様が残念そうな顔をする。


ちなみにうちのお嬢様は「みこみこぴゅん!」と同じくらい「ふらっしゅぷれぴあ」が好きなようだ。


こちらはすこし背伸びした女児向けのアニメ。


地球の隣に突如として現れたテバーランドと呼ばれる異世界。そこを支配するダサイーターマス帝国は地球を手中に収めるべく、恐怖の干物改造人、通称ジャージングを送り込む。


侵略の足がかりとして選ばれたのは、日本の「とある県」にあるベッドタウン。


何かの因縁であろうか?

かつてテバーランドにファッションエネルギーを吸い尽くされて滅亡した世界「プレピア」の王女は自身を禁断の技術を使って生命エネルギー体に変換、ジャージング達の追跡を振り切ったのち何故か宝玉となって「とある県」の神社の社に祭られていた。王女はテバーランドの接近を察知。適正のあった近所の女子小学生五人をスカウト。


地元にダサイー粒子をばらまいてファッションエネルギーを根絶やしにしようともくろむジャージングを倒す武器、フラッシュチェンジという変身アイテムを五人の少女達に託したのだ。


彼女達は「ぷれぴあ」と呼ばれる光の戦士に変身し、オシャレを武器に戦う事に!


大人の事情により、フラッシュチェンジにコーディーと呼ばれるさまざまな衣装が描かれたオプションカードを差し替えて立ち向かい、ダメージを蓄積させて最終的に怪人をおしゃれに目覚めさせれば勝利となる。


威力の高いコーディであっても過度に使いまわしをすると威力が半減するので、カードの切り方も戦略の一つとなるのだ。


ちなみにその大人の事情で番組に登場するカードはデパートなどのゲームコーナーで入手できるがいつも品薄らしい。ぷれぴあ軍曹と呼ばれる女児達がコーディを収納した分厚いバインダーを抱え、ゲームの順番待ちをしているのはなかなかにシュールである。


お嬢様はこのアニメを真央といっしょに視聴し、覚えた必殺プロレス技を俺に試すのだ。二人がかりで。


どうしておしゃれ対決でとび蹴りが炸裂するのか…。


説明が非常に長くなってしまった。何故かって?俺も毎週楽しみに見ているからに決まっていr。


次週もみんなでフラッシュチェンジ!


適当に切り替えられたニュース番組だが、某国の衛星が地球と火星の間にある小惑星帯に調査に行き、謎の建造物を発見したというとんでもないリーク情報について、コメンテーター同士がどうでもいい論議を戦わせていた。


ネタ元はあの衛星だろうな…。


金髪さんが起きてくるまで見るとするか。女神なのに血圧低いらしい。ケツはでっかいのに。


ちなみに俺が起こしに行かないのは、寝ぼけて抱きついてくる金髪さんから身を守るためだ。一度山脈の谷間で窒息しかけた。


「隣におじゃましますよ」


「はい、どうぞ!」


俺はミラさんの隣に座ってテレビを見る。


異なる世界の一国の女王と肩を並べて下世話なニュースショーを見るという構図は…。俺のひざには新聞を見終わったお嬢様とまだ眠たそうにしている戦争中の世界で拾ってきた女児が納まる。


真央がやっているのを見て真似しているのだろうか。


一人は地球外生命体の存在を示唆し、もう一人は衝突を繰り返した小惑星の見間違いだとつっぱね、お互い一歩も譲らずに放送時間が終わってしまったようだ。


「おはようございます…私が最後です?」


金髪さんの支度を待って、皆で城に向かう。もちろん「タイガーII型」で。


王女様以外は荷台ですよ。


荷台のシートに縛り付けた人たちを気遣いつつ、超安全運転で例の場所へと向かった。


ちなみに私道なので(ry


山道をぐねぐねと進み、巨大な城の全容が見えてくると…。真っ先に反応したのはお嬢様だ。


「おじさん!あれってティバの」


甲高い声で言うのはやめて!


---


まがまがしい正門を抜け、石畳の上をしばらく走り、噴水のある車寄せに「タイガーII型」を駐車、荷台の人たちを順番におろす。


王女様とおしっこ勇者は魔王の根城ということもあり、かなりビビッている様子だ。それを察知したのか、リビングメイル達は姿を見せない。


お嬢様はスマートフォンを取り出し、城の写真を撮影しまくっており、戦争中の世界で拾ってきた女児は金髪さんにへばりついてキョロキョロとあちこちを見回す。


「…真央様がお待ちでございます」


俺から真央を受け取ったメイドが案内をするようだ。嬉々として真央を担いで言った先ほどのような元気が無い。


巨大な玄関ドアが音も無く開き、豪華なシャンデリアがぶら下がった一般の家がまるごと入りそうな広さの豪華なホールを抜け、これまた巨大な応接室に通された俺達。


数十人がゆったり座れそうな巨大なテーブルの一角にちんまりと陣取ることにした。


出迎えたメイド長の顔色が悪い。


「城の周囲の森がいきなり消えたのに気づきまして…」


真央を城に運んだ後、あるべきものが無いことに気づき、城の中は大変な騒ぎになったという。


豊かな森の中から一転。石ころだらけの灰色の地面と薄暗い雑木林に囲まれたおかしな場所になったのだから。


カオス具合でいえばここは最高の立地だろう。


城を根っこからほじくりだして転送した件は真央も知っているはずだが、他のメイド達にもみくちゃにされていて説明する暇が無かったようだ。


おしっこ勇者、そして巻き込まれた王女も交えて今回の件を説明。


どうやったの?とたずねられたが、戦艦に備わった転送装置の詳しい仕組みは俺にも分からない。


争いの種をなくす為に城を移設したと説明するにとどめた。


城の存在が一部の人々を狂わせていたことを知り、メイド長はがっくりと肩を落とした。


「昔は森に巣食う魔物を倒し、近隣の民ともうまくやっていたのですがいつの間にそんなことに」


城の襲撃を企てた者たちは流れの野盗の類と判断し、リビングメイルに命じて適当にあしらっていたという。


ご近所づきあいはよかったのだが、今回は遠方から厄介ごとが来たのだ。


ふと、応接室の壁に飾られた等身大の肖像画に気づく。


夫婦らしき若い男女と間に立つ少女の絵。男性は青を基調とした立派な甲冑を纏い、女性は落ち着いた紫色のドレス姿。真ん中のゴシックロリータのようじよは真央であろう。


メイド長の説明によれば、男性は数百年前に異なる世界で活躍した勇者であり、女性は…。


「真央さまの母君は魔の国を統べる王の娘。勇者として仕方なく魔の国に攻め入った現在のだんな様と意気投合されて駆け落ちなされ、お二人の愛の力によって世界の壁を渡り、あの地に住まわれたのです」


メイド達は元々真央の母に仕えていたのだが、何しろ生活能力の欠如した王女のこと。それではが苦労するだろうと駆け落ちにそのまま付いてきたのだと。


魔王討伐に向かった勇者が、魔王の娘と駆け落ち?その子供が真央なの?


ぬしさま。遅かったな!」


肖像画の前に立つ真央。トータル二千円ほどの女児服の上に、見るからに高級そうな漆黒のマントを羽織っている。


真央はマントをメイド長に預け、俺の隣に座った。


「真央…実はハイスペックなお嬢様だったのか!」


「い、いまさら何を!」


ぷうううう。と膨れた真央のほっぺたをつつく。混沌カオスプリンセスと呼ばれる理由の一端が見えた気がした。


---


バターを多めに塗った厚切りトーストに、こんがりと焼いたベーコンとスクランブルエッグ、フレンチドレッシングを掛けたサラダという洋風の朝食を味わう俺達。飲み物については俺はコーヒーを、ほかの皆さんはオレンジジュース。


お嬢様は何故か藤枝の朝ラーカップ麺を持ってきてお湯を注いでもらおうとしていたが…焼き立てトーストの香りに負けたようだ。


お嬢様の傍らに置かれたカップ麺を凝視するメイド達。


その彼女達の説明によれば、スクランブルエッグが聞き間違いでなければコカトリスの卵だったり、ベーコンは魔獣のおにくだったり、小麦が地下の農場で育つ特殊な品種、サラダもしかり。バターをぬりぬりしていると…お一人、顔を真っ赤にしたメイドさんが。角の形状を見ると牛の魔人らしく、山脈もミラクルド級である。顔を赤らめている理由についてはご想像におまかせしよう。


肝心の味に関しては地球のものと遜色ないどころか、すばらしいの一言に尽きる。


皆無言でもしゅもしゅとお食事を続ける。本当においしいものに出会うと、脳の言語野すら味わうための器官に成り果てるのだ。と、適当なことを。


「それで…」


話は肖像画に戻る。


二人が既に他界していたら…と思ったらそうではなかった。


たった今吸血してきましたといわんばかりに、ケチャップまみれとなった真央の口元をぬぐっていたメイド長が不穏な内容を口にする。


「はい、だんなさまと奥方さまは現在別の世界にてご活躍を。とある方々からの依頼で…」


いやな予感がする。


「もしかして…派遣ですか?」


「ハケン?シュッコーと聞いておりますが」


俺は金髪さんに話を振ろうとしたのだが。


「そんなに見つめられますと…」


俺の向かいに座る金髪さんにアイコンタクトを行ったが、勘違いした金髪さんからいきなり女神フェロモンが出た。


「ふんっ!」


即座に銀色のにくいやつを透明状態で展開してガードする。フェロモンの沸点が低すぎるだろう。


言葉にしないとだめでした。


「金髪さん、この件について何か知っていることがあったら正直に…」


ぶるぶると首を横に振る金髪さん。山脈がワンテンポ遅れてぶるぶるし、それを見たメイド長は自身の平地と見比べるというハプニングもあったが。


「うむ。その件はワシが説明しよう」


突然現れた気配とバリトンボイスに驚き振り向くと、見知った顔のご老人、テンカイのホワイトさんが立っていた。


何故か執事の姿で。


突然の侵入者にも関わらず、メイドや別の部屋で待機しているはずのリビングメイルは全く反応しない。どういうことだ?



「みこみこぴゅん!」のみこぴゅんは奇々怪々の小夜ちゃんあたりを思い浮かべていただくと…。

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