表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/18

エリーシャの危機

またもやおひさしぶりです。



兵器格納ブロックへ移動するために委員長AIを抱えたまま立ち上がる俺。


金髪さんがいきなり硬直し、虚空に向けて何かを話しているのを見てしまった。


ああ、やっぱりやばいめがみだったのか。いまさらだが。


「た、たいへんなんです!エリーシャさんが!」


あのおしっこ勇者に何が?


とにかく時間が無いというので、エリーシャのいる世界へ移動することに。


再起動に時間のかかるドック内の「ミレニアムコンドル」ではなく「戦艦」を使用する。


妹様はしばらく旅行の予定は無いといってたはず…。こういう事態を想定して転送専用の拠点を作るべきなんだろうか。


ほどなく次元航行システムがオンラインとなり、全長7kmほどの「戦艦」はゆらめきながら漆黒の宇宙へと溶け込む。


---


今回は緊急移動のためエリーシャのいる世界と微妙な位相のずれが生じており、そのずれを修正するために約二十分ほど謎の空間に滞在する。


ただし、元いた世界、そしてこれから移動する世界との時間差はゼロに近い。ここで過ごす時間は無かった事にされるというのだが…。


突然鳴り出す謎の着信音。だれの電話!


ホワイトさんから金髪さんのガラケーっぽい端末に直電が入った。最初からそれで話をすればいいのに。


と思ったら次元をまたいだ際は通話代が高いそうです。次元移動中は無料らしい。


電話を代わるように言われたので受け取る。形状は俺の世界で言うところの十世代くらい前のケータイだが、中身は何だろう…。


「はいはい。俺です」


「若いの、わしじゃ。それは下界でハヤリのとしよりをアレするアレか?それよりもじゃな…」


間延びした感じのホワイトさんの声。空間の揺らぎが電波に悪影響を…。


話をまとめると、エリーシャがどこかの連中に異端指定され、今にも処刑されそうなので阻止してほしいと。勇者に指定された者が予定外に死んでしまうと、持ち主の居なくなった神器が暴走してしまうらしい。


それはすなわち、この世界の破滅。


異端指定の原因は真央の住んでいた魔王城。主無き今、蓄えられているはずの「宝物」を狙ってこそ泥が大量に集まったようだ。


しかし、城の結界は生きており、強力な魔法を放つ厳ついリビングメイルが雑魚どもを追い散らして大変な騒ぎに。


そのこそ泥の元締めであるなんとか教団が「城が落とせないのは魔王が生きている証拠だ!」と騒ぎたて、いまだに復興行脚中のエリーシャを捕縛し、魔王城に向かっている最中らしい。


本当に魔王が死んでいるなら城に入って宝物を持ってこられるはずだ。できなければ処刑…という無茶な要求をしたと聞かされた。


そもそも混沌を撒き散らす魔王がいなくなり、世界は落ち着いているはずなのだが。今度は強欲の時代が来るのか?


「城そのものはもういらんのだが」


と、元魔王さまご本人がさらりと。いろいろと強力な武器もそのまま残っているようなので、そのまま明け渡すのも危険だろう。


足の速い戦艦で来た。ので予定よりもずいぶんと早く到着した。モニタに大写しになった惑星、改めてみると本当に地球とそっくりな星である。


例の魔法生物と戦闘中の世界にある惑星、あれもわずかな差異はあるものの、基本的な構造は変わらないようだ。


早速惑星地表のスキャンを開始する委員長AI。エリーシャを乗せた護送馬車はあと1時間くらいで魔王城付近に到達しそうだと判明。


俺は委員長AIにお願いして魔王城の解析を行いつつ、真央に尋ねる。


城の敷地は大体一キロ四方。地上は数十メートル、地下は数百メートルほどまで構造物が伸びている。


「真央、あれ本当にいらないの?」


ぐっと背伸びをしてモニタを覗き込む真央に尋ねる。


ぬしさま。そう言われるとだな…集めたガラクタはどうでもいいのだが、魔力で作り出した配下の者たちをそのままというのも」


なんだかんだで愛着がありそうだ。


城の中に住んでいる真央の配下、城のあちこちにちらばっており、なんと言っても生き物ではないので個別に探して転送するわけにはいかないようだ。かといって、真央にお願いして一箇所に集めている時間もなさそうである。


「よし、俺にいい考えがある。委員長、ちょっと相談が…」


俺は委員長を抱き上げて、ぽしょぽしょと説明をする。


「正気か!やってやれないことは無いが…そんな使い方を思いつくとはさすがというか…」


委員長がずれためがねをくいっと持ち上げつつ俺を見る。


真央へのプレゼント第一弾。ちょっとしたサプライズというやつを。


その前にエリーシャの救出を行う。


---


「え?あの…真央さん?それに…女神さま!」


幸いというか行軍中の連中をスキャンした結果、エリーシャを乗せた護送馬車に窓は無く、見張りも置かないお粗末な警備体制が判明し、俺が銀色のにくいやつに変身して直接転送で馬車に乗り込み、エリーシャを抱えて戻ってきたという行き当たりばったりの作戦は見事に成功した。


おもらし勇者は以前別れたときよりも幾分やつれた感じはあったが、特に怪我などはしている様子は無かった。


「それじゃやりますか。委員長お願い!」


「戦艦メインリアクター出力上昇。亜空間コンデンサへのエネルギー充填開始。全転送システム、バッファチェック完了。転送座標固定完了。転送先の空間に二キロ四方の保護エネルギーフィールド展開。内部重力を0.9Gに設定」


ブルーフィングルームの机に浮かび上がるホログラムのスイッチ。


二十センチ四方の黄色と黒のストライプで塗り分けられた「押すな危険」という感じの箱から突き出た、手のひらサイズの真っ赤な叩きボタンにこぶしを振り下ろす俺。ちなみにボタンは波動拳が出そうな感じの。


「所有者、準備完了だ!」


「ぽちっとな」


転送装置が稼動すると同時に戦艦内に備蓄されたエネルギーを一瞬で消費、ブリーフィングルーム内の照明がすっと暗くなる。


「ターゲット転送完了。曳航準備に入る」


びっ!と親指を立ててニカッ!と笑う委員長AI。それどこで覚えたの?


---


「教皇様、もうすぐ魔王の城です」


白塗りの四頭立て六人乗りのゴージャスな箱馬車は荒れた路面をものともせず、かっぽかっぽと優雅に進む。


その前後には数十の騎馬隊、二百名ほどの歩兵が守りを固めている。


列の後ろについた金属で覆われた厳つい護送馬車がゴトゴトと揺れながら走っていた。


白塗りの馬車に乗るのは六十代の男と召使の若い女性。男は全身白づくめではあるが、腹の中は真っ黒である。


「うむ。あのおぞましき魔王を倒したなどとすっかりだまされるところであった。偽の勇者を魔王の城に投げ入れ、憎き魔法よろい共がつられて群がっている隙に宝物を取り返すのだ」


「ははっ!おおせのままに!」


馬車に併走していた完全武装の騎士は一礼すると、馬に拍車をかけて行列の先頭へと躍り出る。


「ものども!勇者をいけにえに!城を落とすぞ!」


「「「おおおおお!!!」」」


その時、異変が起こった!


「ドンッ!」


数秒遅れて、強烈な衝撃波がチンドン行列を襲う!


「「「うわあああああああ!」」」


横倒しになる馬車。馬は乗り手を振り落として暴れ、歩兵は暴れ馬や飛ばされてきた土砂や木々の破片に翻弄された。


ダメージの少なかった重装備の歩兵がいち早く立ち上がり、周囲を確認する。


ごっそり。という表現が正しいだろうか。


今まで見えていた魔王城が周りの森ごと姿を消したのだ!


真四角に切り抜かれた大地からはもうもうと煙が立ち上り、地下には赤黒い川が…いや、あれは。


偵察に向かった兵士が何事か叫びながら戻ってきた。


「全員退避!溶岩だ!巨大な穴の中から溶岩が溢れてくる!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ