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三話

「こっちに来てから一週間が経つ訳ですが、なにか進展はありましたか?」


「あぁ。小説を読んで大体人間の感情を理解することはできた」


「しかし、感情が戻ってきたかというとそうでもないな。実際分からないがことも多いしな」


「そうですねぇ.....理解するのとそれを得るのはまた別問題な気がします」


「でも、大きな一歩ですね!」


「あとは多くの人と触れ合うことがいいんじゃないてしょうか」


「実践あるのみですっ」


「そうだな」


「それで、さっき言っていた分からないことってなんですか」


「例えばこれだな」


「前後と合わせて読むとこの主人公は嬉しいはずだろう?」


「それなのに涙を流す描写がある」


「涙は辛い時に流すものじゃないのか?」


「んー。これは難しいですね」


「これは飽くまで推論ですが」


「人の感情には許容量があってそれを超えると涙として表に出てくるんではないかと思うんです」


「確かに、ギンさんの言っていた通り辛い時に涙を流します。でもそれは『辛いから』ではないんです」


「つまり、この主人公は喜びが許容量を超えて涙を流したと.....」


「そういうことです」


「ギンさんなら嬉しい時、どういう反応をしますか?」


「僕なら.....分からない.....」


「そうですね。まだこっちに来て一週間ですもんね」


「焦らず地道にいきましょう」


「ああ」


「そういえば、この病院の食堂行ったことないですよね」


「僕は物を食べなくても生きていけるからな」


「でも、食べちゃいけないわけじゃないですよね?」


「それはそうだが....」


「なら、いきましょう!ここのお団子は絶品ですよ」





〜〜〜食堂〜〜〜〜



「あら、茜ちゃん久しぶりね」


「おばちゃん久しぶり」


「ん?見ない顔だねぇ」


「この人はギンさん」


「よろしく」


「イケメンじゃない!茜ちゃんの彼氏かしら?」


「ち、違いますよっ!」


「ふふっ。で、今日は何にする?」


「お団子二本ください」


「はいよ。毎度ありがとうね」


「おばちゃんまたね」


「じゃあ」


「ギンちゃん、ちょっと」


「なんでしょう?」


「茜ちゃんのことよろしくね。あの子は良い子なんだけど、全部自分で抱え込んじゃう節があるから」


「......わかりました」


「ギンさーん行きますよ」


「では」


「またいらっしゃい」


「はい」





〜〜〜〜庭〜〜〜〜


「んーー!気持ちいい」


「まだちょっと寒いけど、もう春の香りがしますね」


「春の香り?なにも感じないが」


「ギンさんにもきっと分かるよ」


「季節にはそれぞれ特徴があるでしょう?」


「例えば、冬には雪とか夏には入道雲とか」


「それと同じようにその季節独特の香りがあるの」


「上手く説明できないけど.....」


「あ、これお団子。食べてみて」


「ありがとう」


「お礼言えるんだ!」


「本を読んで学んだんだ」


パク モグモグ


「美味しい」


「でしょ!」


「もうすぐ桜が咲くね」


「楽しみだなぁ」


「ギンさんと一緒に桜見たいな」


「あぁ。そうだな」

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