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子ども心と町の空  作者: 伝道師
第二章 万引きと強盗事件
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三話

「それって、ミニカーじゃん。・・・あれ?値札ついてるよ。それもってきちゃったの?・・・だめだよ、かず君!」


「だって、このミニカー、弟が欲しがっていたから・・・どうしよう。」


「えー、どうしよう。」


森山もびっくりした。


「どうすんだよぉ。見つかったらすごく怒られるぞ。」


3人とも思わぬ事態に対処しきれず、暫く入口あたりでうろうろした。

内山は事の重大さに気付いたのか、力が抜けて座り込んでしまったようだ。

金田もパニクっていたが、自分なりに何とかしなければいけないと必死に考えた。

このまま知らん顔しても、ずっと悩み続けるかもしれないし、返しに行っても親や学校に知れてしまい、すごく怒られる事は間違いない。でも自分が盗ったんじゃないから、大丈夫かもしれない。

葛藤の末、決断して内山に話しかけた。


「かず君、やっぱり返しに行こうよ。一緒に謝るからさぁ。」


森山も。


「そうだよな、返したほうがいいよな。」


2人は座り込んだ内山を宥めておもちゃ売り場へ引き返す事にした。

辺りを見回しながら恐る恐る売り場に入るが、何やら雰囲気が違うし、先ほどより静かだ。

ミニカーの積んであるワゴンに近づいた時。

けたたましい音とと共に、複数の女性や子供の叫び声が聞こえた。

3人はその音に驚いて立ち止まった。


「びっくりしたぁ。なに?この音は・・・」


どこかで聞いたことのある音だ。


散弾銃?

金田は頭の中では否定したかった。

3人に不安が走る・・・。

ミニカーの積んであるワゴンを過ぎて、暫く進むとモデルガンのコーナーがあり、そこを左に曲がるとレジがある。

そのコーナーの角から人の後姿が見え隠れし、何やら揉めているようだ。


「早く金を出せ!」


その大きくドスの聞いた声に再び悲鳴が上がった。

先ほどの散弾銃の効果もあり張りつめた空気が流れている。

3人は何か恐ろしいことが起こっている事に気づいたようだ。

こんな出来事は映画でした見た事が無いし、まさか自分が巻き込まれるなんて想像もしていなかったであろう。

彼らはワゴンの片隅で固まってしまった。


「ご・・・強盗だ、金田!」


「だめだよ、しゃべっちゃ・・・。」


直立不動のまま微かに震えながら、掠れた声で会話が始まった。


「なんでおもちゃ売り場に来るんだよぉ。普通は銀行だよぉ。」


「知らないよぉ、そんなの。僕に聞かないでよ、よっちゃん。」


「きっと子供を人質にするんだ・・・。」


「そうだよ・・・あそこに座っているのは人質だよ。子どもばっかりだよ。」


「逃げると銃で撃たれるかも。」


「撃たれると痛いかなぁ・・・。」


「ばか!撃たれたら死んじゃうんだぞ。」


次第に話し声が大きくなってきた。

内山は相変わらず固まったまま何も話せない状態で、ミニカーの事はすっかり頭から消えてしまっていた。

それが当然だが、この2人の会話は止まらなかった。


「映画撮影かも知れないぞ。」


「でもさっきの銃の音はすごかったよ。」


犯人が叫んだ。


「おい!静かにしろ!そこの小僧!」


気付かれたようだ。

野球帽に黒のサングラス、白いマスク。その風貌はまさに強盗犯だ。

右手の散弾銃はレジの方角へ向けたまま、命令口調で話し始めた。


「おい、そこの小僧!今行くからな・・・。動くなよ。おい、お前も金を早くこの袋へ入れておけよ!わかったな。」


レジの店員にも睨みを利かせ、釘を刺すように命令した。

こちらからはコーナーが邪魔になってレジや店員の様子はわからないが、金田はなぜか周りやレジの様子も気になり、きょろきょろし始めた。

あちこちに座り込んでいる人達がいるようだ。

レジ近くには、赤いワンピースの女の子、向いのプラモデルのコーナーには、青いTシャツを着た男の子が泣いている。

まだ低学年らしい。

金田は思った。


「まさかあんな小っちゃい子は撃たないよな・・・。」


きっと店員さんも怖がっているよなぁ。

お金をあげちゃうのかなぁ・・・。

おもちゃ売り場じゃあんまりお金は無いと思うけど、なんで・・・?

金田がいらぬ心配をしていると、強盗犯が右手に散弾銃を持ったままこちらに向かって来た。

まだ気になるレジを覗こうと、きょろきょろする金田を見て犯人が怒鳴った。


「なに見てんだ!お前!」


「ご、ごめんなさい!」


間近で怒鳴られたのを見てびっくりした内山は、慄いて後ずさりした。

そこにはミニカーの山積みされたワゴンがあり、背中から覆い被さるように倒れ込み、ワゴン諸共ひっくり返った。

ものすごい音と共に積み上げられていたミニカーが内山の上に土砂のごとく降り注いだ。


「ひゃ~!痛い・・・。」


「お、おい、内山、大丈夫かぁ!・・・。」


森山は思わず声を掛けたが金田は勘違いした。


「あぁぁ、かず君が撃たれたぁ・・・。」


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