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子ども心と町の空  作者: 伝道師
第二章 万引きと強盗事件
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一話

桜のひとひらが頬をなでると、空を見上げたくなる。

空に純白の雲を見て綿菓子を思い出す。

今すれちがった春の風を感じて、ひとつ深呼吸をする。

新学期になり、クラスも再編成され、仲の良い友達とも別れ別れになる。

しかし、すぐに新しい友達が出来るものだ。

これは子供の持っているすばらしい能力のひとつでもある。

そんな中、相変わらずこの3人の結束は固い。

金田と藤田、3人目の親友、森山吉一もりやまよしかず、通称“よっちゃん”である。

放課後、金田は森山を誘いに行った。

「おーい!よっちゃん、一緒に帰ろうよ。」

「金田!今日は部活無いんだっけ?」

「そうだよ。6年生はあるけど5年生は無いって。」

「そうか、やった!スズキさんへ行こうぜ。」

スズキさんは近所の駄菓子の通称である。

苗字が鈴木なので看板もそのまま「スズキ」となっている。

駄菓子屋は多いが、近所の子供たちの間では結構人気のある店だ。

その理由は、お菓子の種類の多さは勿論のこと、店主のおばさんの心意気が勝敗を分けている。

ちょっと太り気味でいつも同じエプロンをしている。

そんなおばさんの肝っ玉は大きく、町の子供たちには第二のお袋といったところだ。

金田と森山は息を切らしながらスズキさんへ駆け込んだ。

「おばちゃん!ペプシちょうだい!」

「はいよ、冷えてるよ。」

おばちゃんは専用の冷蔵庫から、片手でペプシ2本をさっと取り出し、あっという間に栓を抜いてくれた。

その速さたるは、まさに神業である。長年駄菓子屋を営んできた職人とも言える。

「おばちゃん、栓は捨てちゃだめだよ!」

「あ、ごめんよ。」

実はペプシの栓にはオマケがついている。

只今キャンペーン中で、裏ぶたを剝すと“あたり”か“はずれ”のメッセージが書いてあるのだ。

“あたり”が出るともう一本もらえる。

二人はどきどきしながらゆっくり裏蓋をめくり始める。

確率的には低いのだが、子供的には五分五分の確立で、常に当たるかもしれないという期待をもっているものだ。

「ちぇ、はずれだ!」

森山のペプシは残念ながらはずれた。

続いて金田のペプシもはずれた。

今まで当たりが出た事が無い金田は、おばちゃんに聞いた。

「当たりあるの?おばちゃん。」

「もちろん、あるよ。昨日も当たった子がいたよ。そういえば、この頃毎日来てるねぇ。」

「ふ~ん」

「なんて名前だったっけねぇ・・・ええと・・・カズって言ったかな?」

「カズって、内山のこと?」

「う~ん、ごめんよ、おばちゃん最近物忘れが激しくなってねぇ。今度来たら聞いとくよ。」

二人はペプシを飲みほすと公園に向かった。

そこにはなんと内山がいて、逆上がりの練習をしていた。

彼は成績は良くないが、運動能力にかけては抜群の能力を持っている。

皆が出来ないバク転を誰よりも早くマスターしていたし、もちろん逆上がり程度は楽勝である。

「おい!内山!何やってんだ。」

「見りゃわかるし・・・。」

「昨日、ペプシ当たったんだって?」

「なんで知ってんの?」

「さっきスズキさんに寄って来たんだよ。」


逆上がりは小学生には必ず通らなければならない登竜門みたいなものである。

出来ない子は必ず放課後に練習させられた。

コツを掴めばあっという間にマスター出来るのだが、掴めない子は何時までも掴めない。


逆上がりのコツを教えよう。


初めてやる子は必ずと言っていいほど手を伸ばしたまま足を蹴って上がろうとする。

よっぽどの跳躍力があれば可能性はあるが、殆ど無理である。

ではどのようにしたら簡単に上がれるのだろう。

鉄棒を胸に付ける事で、足が自然に前に出る。バランスを利用するのである。

蹴ったと同時に腕に力を入れ鉄棒に胸を近づける。

するとあら不思議、自然に足が上に上がりクルっと回る事が出来る。

更に懸垂と腹筋の力を付ける事で、蹴って上がらなくても体を鉄棒に回すことが出来るようになる。

実はこの3人はその領域に達している。


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