四話
藤田の母親が血相を変えて呼びにきた。
子供心に何か不安を感じる・・・。
救急車の音が鳴り響いた。
夕焼けの空に突き刺さるように鳴るサイレンの音は嫌なものだ。
藤田の家の前で停まり、サイレンも鳴り止むと、周りに人が集まり始めた。
金田は怖くて近寄りたくなかった。
暫く一人でメンコの練習をして家に帰った。
「お母さん。カッちゃんの家で救急車止まったよ。」
「おばあちゃんが倒れたのよ。」
「え?今日カッちゃんの家行ったとき会ったよ。」
「急だったみたいね。」
「ふ~ん。」
次の日、藤田は学校を休んだ。
彼のおばあちゃんは永遠の眠りにつき、翌日大勢の人に見送られて葬儀が行われた。
その夜、母親にいろいろと尋ねた。
「カッちゃんのおばあちゃん、なんで死んだの。」
「心筋梗塞だって。少し前から心臓が悪かったみたいね。」
「心筋梗塞?なにそれ?」
「心臓に血が行かなくなる病気よ。藤田さんのおばあちゃんも高齢だからね。」
藤田のおばあちゃんは町では有名で、毎朝公園に来ては掃除をするのが日課だった。
身内でも他人でも、差別なく叱る事が出来て、町のためには率先して行動し、誰に対しても優しく声を掛けられる人だった。
そういう人は少ない。
その夜、金田はいろいろな事が頭をめぐり、なかなか眠りにつけない。
数日前、声を掛けたばかりなのに、もうこの世にいない。
おばあちゃんに怒られた事、お菓子をもらった事、昔話を聞かせてもらった事など、様々な思いが頭を駆け巡った。
他人なのに、やはり身近で係わり合いがあった人の死は衝撃である。
明日、カッちゃんになんて言ったらいいんだろう。
考えながら眠りについた。
次の日の朝、いつも通り藤田を呼びに行った。
インターホンを押す。
聞き慣れた音なのに、一昨日と違った響きに聞こえた。
少しお線香の匂いも残っている。
「カッちゃーん!」
暫くして奥の方から声が聞こえた。
「ちょっとまってー!すぐ行くー!」
藤田が玄関から出てきた。
いつもと同じ声、いつもと同じ仕草に金田はほっとした。
胸の中でモヤモヤしていたものが少し消えたように思えた。
突然身が軽くなった金田は走り出した。
「門まで競争だぁー!」
「あー!待てよー!」
実は学校の門までは100メートルぐらいしか無いのだ。
公園も近い、学校も近い、友達も近い。
こんな良い環境は滅多に無い。
そんな空の下で成長して来たのだから、二人はいつも元気で明るくいられる。
健康で友達も大勢いる。
頭も良ければなお良いのだが・・・。
そんな少年たちを包み込んでいる町の空も、常に穏やかに見守っているわけではない。
たまに、試練を与える事もある。
この後、三人目の友人を巻き込んだ騒動が待ち受けている。
第2章へつづく




