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子ども心と町の空  作者: 伝道師
第三章 蛇騒動と赤ちゃん置き去り事件
11/14

二話

「なんなんだ、この速さは。こんなに炭酸がキツイのによく一気に飲めるなぁ・・・。」

その飲みっぷりに藤田も思い出したように言った。

「去年の夏の特訓の時はもっと凄かったぞ。持って来た1.5リットルのペットボトルを全部飲み干して、その後スズキさんでペプシ2本飲んで帰った事があったよな。金田は休んでいたから知らなかったろ。」

「え?そーなの?それって人間じゃないかも・・・。」

森山は自慢げに

「おぉ、そうさ!俺は人間じゃないんだ。実は宇宙の彼方、M77星雲から来たウルタルマンだ。」

「何それ?ウルタルマン?タルのようにたくさん入るからってかぁ・・・。」

「おお、よくわかったな。」

「はぁ・・・。」

金田は馬鹿さ加減に溜息をついた。

藤田もウルトラマンの大ファンである。

「そう言えば、先週のウルトラマン見た?カネゴンっていう怪獣が出て来たよな。あれ絶対おかしいよな、よっちゃん。」

「何が?」

「お金を食べるんだけど、なぜか硬貨ばっかりで、お札は食べないんだよ。」

「あれ?知らなかった?カネゴンはお札を食べると口のなかでくっついて息が出来なくなって死ぬんだぞ。口の形も平べったいだろ?」

「へぇ、そうなのか?」

「・・・多分。」

「多分ってなんだよ。」

「多分、そうだ・・・。」

「え?なんだよ、よっちゃんもいい加減だなぁ。」

「へっへっへっ・・・。」

「よっちゃん、ちょっとやばいかも。金田帰ろうか。」

「そうだね。よっちゃんペプシ一気のみした後はいつも変だよ。酔っ払っちゃうのかな?」

「そんな訳無いだろ。」

森山はさらに調子ずいて、

「正義の味方、ウリタルマン登場!・・・出たな、怪獣カネダゴンとフジタン星人!」

金田と藤田は何も聞かなかったふりをして

「じゃ、お先!」

おばちゃんは無言

「・・・」


金田はペプシのクジを思い出した。

「あ、そうだ。ペプシの当たりを見るのを忘れてた。どれどれ・・・。はずれだ。」

藤田も、

「俺のもはずれだ。なかなか当たらないな。」

森山も、

「おばちゃん、ぜんぜん当たらないよ。」

子供は必ず次は当たると期待しているものだが、いや、子供だけではなく、大人でも“くじ”には夢を託している。

今ははずれても次は当たる気がして、つい買ってしまう。

子供にはペプシ一本でも大きな夢なのだ。


駄菓子屋には、めくった栓を捨てるための専用のごみ缶がある。

金田は閃いた。

ひょっとして、めくらずに捨てた人がいるかもしれないと微かな望みを託し、ものは試しでおばちゃんに聞いてみた。

「おばちゃん、この缶の中を探してもいい?」

「ああ、いいけど、当たりは無いと思うよ。」

「やった。よっちゃん、かっちゃん、ちょっと待っててよ。」

「いいけど、あるわけないじゃん。」

「わからないよ。あったら皆で飲もうよ。」

「金田はあんまり運が良くないからなぁ。だめだと思うぞ。」

「なんだよ、冷たいなぁ。こうなったら全部見てやる・・・。」

「え?それ全部探す気か?」


金田はごみ箱の栓をめくり始めた。

当然の事ながら、ほとんどが既にめくられてある。

たまにめくられてない栓もあるが全部はずれだ。

「う~ん、だめだ・・・。なかなか当たんないよ、おばちゃん。」

「そら、言ったとおり、当たりは無いと思うよ。今日は諦めな。」

「わかった、また明日来ていい?」

「いいよ。何回でもおいで。」

「ありがとう、またね。おばちゃん。」

三人はスズさんを後にした。


森山はジョギングの事を金田へ提案した。

「そうそう、明日早起きして山田のじっちゃんとこ行こう。」

「え?明日から走るの?」

「思い立ったら吉日って言うだろ?」

「意味わかって言ってんの?それに明日って吉日?」


翌朝、3人は山田のじっちゃんのいる橋のたもとへ向かった。

「ふぁ~、眠たいよ。」

「金田は朝が弱いからな。」

「いきなり今日からだなんて・・・よっちゃん元気だよなぁ。でもこんなに早く起きたのは久しぶりだし、天気がよくて気持ちいいいね。」

「そうだろ。朝早く起きると朝飯もうまいんだ。それより山田のじっちゃんいるかな。」

「毎日来てるんだよね?」

「・・・あ、いたいた。」

黒い毛糸の帽子に黒い上下のジャージ。細身で締まった体はまさにマラソン選手のような風貌だ。

既に周りには何人か集まっていた。


「じっちゃん、おはよう!」

「おお、ヨシ、久しぶりだね。また走るのかね。」

「そうだよ、今日は友達を連れてきた。金田と藤田。」

「そうかね。おはよう。」

「おはようございます。よろしくお願いします。」

「じゃ、早速準備運動をしなさい。」

60歳はとうに過ぎているはずだが、正式な年齢は不詳である。

動きにしろ言葉使いにしろ、驚くほどしっかりしている。

「山田のじっちゃんぜんぜん元気だね。」

「あたりまえだろ、毎日走ってるんだぜ。金田ついて行けるか?」

「いっしょに走るのは始めてだけど・・・そんなにすごいの?」

「おじいさんだと思っていると大変だぞ。」

「そうなの?」


「さあ、そろそろみんな行こうか。今日は浜公園までだ。」

一斉にゆっくりと走り出した。


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