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子ども心と町の空  作者: 伝道師
第三章 蛇騒動と赤ちゃん置き去り事件
10/14

一話

アスファルトから陽炎が消え、暑い夏も終わる頃、恒例の陸上大会が始まる。

全地区の小学生が、7種目を競い合う“レインボー競技会”である。

陸上部はこの1か月前から強化練習に入り、放課後にはかなり厳しい練習が待っている。

陸上部の顧問は、もちろん“けつバット”で有名な中津先生だ。

「おーい、みんな集まれ!・・・早くしろ、金田!」

おのおの練習をしていた部員たち。

金田はコーチのしごきに足が棒になっていたため早く走れない。

「はあ、はあ、あ、足が重い・・・。」

「頑張れよ、金田!」

「よっちゃんタフだよなぁ。」

「いつも走ってるからな。」

「部活終わったらスズキさんいこうぜ。」

「そうだね、ペプシ3本くらい飲めそうだ。」

久し振りに登場の藤田勝也かっちゃんも寄ってきた。

「金田、調子はどう?」

「かっちゃんはいいよな、走り高跳びは練習が楽みたいだね。僕は持久力がないから大変だ。」

「そんなことはないさ。かなり脚にきてる感じ。」

「いよいよレギュラーの発表みたいだね。5年生も何人か出られるかな?」

「う~ん、わからないけど、なんかドキドキするな。」

金田と森山の種目は走り幅跳び、藤田は走り高跳びである。

4年生以下は出られないが、5年生からは出られる可能性があるのだ。

「よし、全員揃ったな。いつもこのくらい練習に来るといんだがな・・・。それぞれの種目で出場できるのは2人までだ。補欠も2人必要だ。まずは100m走から・・・。」

中津先生の一挙一動に固唾をのんだ。

次々とレギュラーが決定していくが、大体予想したメンバーになっていくものだ。

6年生が主体で、5年生は補欠という構成。

「・・・次は走り高跳びだ。レギュラーは6年生の高林と5年生の藤田で行こうと思う。藤田は最近頑張っているからな。補欠は・・・。」

「やったね!かっちゃん。すごいじゃん。」

「おー!いっちょ~やったるかぁ。」

「やるき満々だね。」

「最後は走り幅跳びだが、今回は事情があって6年生が誰も出られないから、5年生に頑張ってもらわないとな。・・・夏木、森山がレギュラーで金田が補欠だ。」

思わぬ出来事に森山は大喜び。

「やった、やった!マコトがんばろうぜ。」

「おー!」

ここで登場する愛称マコト。夏木誠といい、成績優秀、スポーツ万能で、学年の鏡のような生徒である。

こういう生徒はクラスに必ず一人はいるものだ。

体力勝負の森山とは違う・・・。

「そういえば、西部地区の小学校に、走り幅跳びのすごい選手がいるらしいぞ。出場した大会すべて優勝だそうだ。夏木と藤田、頑張ってギャフンと言わせてやれ!」

「先生、俺にまかせてよ。ギャフンとでもバフンとでも言わせてやるよ。」

「おぉ、森山!大きく出たな。やれるのか?」

「大船に乗ったつもりでいてよ、先生!」

「あまり調子に乗るなよ。」

あまりの調子のよさに森山の頭にげんこつが一発・・・。

「ギャフン・・・」

かくして中津先生の厳しい練習が開始された・・・。

「ふぁ~、疲れたなぁ金田、足が棒みたいだ。のども渇いたし・・・。早くスズキさん行こうぜ。」

「行こう行こう!体操服がびっしょりだから着替えてからだね。」

「カッちゃんも行こうぜ。」

森山は藤田も誘った。

「いいよ。誰が一番早くスズキさんへ着くか競争しようか?」

「え?また走るの?もう足があがらないよ。」

練習だけうんざりしていた金田を見て森山は言った。

「金田は持久力ないからな。今度早朝ジョギングでもやろうぜ。・・・そういえば山田のじっちゃんまだやってるらしいから、今度の日曜に行ってみようか。」

「へぇ、山田のじっちゃんすごいよな。よく続くよね。・・・でも朝起きられるかな?」

通称、山田のじっちゃんは毎朝近くの川でジョギングをすることで有名である。

いつの間にか一緒にジョギングをする人が増え、日曜日には5キロほど先の浜辺でバーバキューをするのが定番となっている。金田は朝早く起きられるのだろうか・・・なにせこのじっちゃんは4時起きなのだ。

さて置き、金田、森山、藤田の三人は、おのおの家で着替えをしてスズキさんへ向かった。

スズキさんにはいつものように、元気のいい名物おばちゃんがいる。

近所の子供たちは皆このおばちゃんを慕っている。

スズキさんについた金田は、砂漠で脱水症状になったゾンビのごとく、ふらふらした足取りでおばちゃんにペプシをせがんだ。

「おばちゃんペプシ頂戴。栓も頂戴よ。」

「はいよ、わかってるよ。」

冷え切ったペプシの外側についた水滴のみずみずしさ、あの透き通った茶色、さわやかさを感じさせる炭酸の泡・・・。金田はひとつ唾を飲んだ。彼にとってこの瞬間は、このうえのない至福の時である。

瓶を手に取り、口に運ぶ・・・。喉を通り過ぎるこのたまらない一瞬に誰もが吠えたくなるのだ。

乾ききった喉をその液体が通り過ぎた瞬間。

「ふぁぁぁぁぁ・・・・!」

「ふぁぁぁぁぁ・・・・!」

「ふぁぁぁぁぁ・・・・!」

おばちゃん「・・・」

「このひと口がたまらないんだよなぁ。」

と言いながら森山は一口で一気に飲み干した。

彼の飲みっぷりに金田はいつもながら驚くのであった。


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