心霊写真を霊視したら、ざまぁ執行中の男を見物に来た野次馬霊でした
――某スタジオ。
照明が落ち、静かな音楽が流れる。
神妙な顔の司会者がゆっくりと口を開いた。
「こんばんは。本日はお集まりいただきありがとうございます」
「この番組では、視聴者の皆様から寄せられた“説明のつかない写真”を、スタジオで検証していきます」
「ただの偶然なのか、それとも――本当に何かが写っているのか。それを見極めていくのが、この番組です」
司会者が神妙な表情で手元のカードを見る。
「そして本日も、この方にお越しいただいています」
「数多くの霊視調査を行い、国内外で活動されている霊能力者――ギーボレイコ先生です」
霊能力者ギーボレイコが静かに頭を下げ、落ち着いた、静かな声で答える。
「よろしくお願いします」
司会者が続ける。
「そして本日のゲストの皆さんです」
「まずは歌手のコズエさん。怖いものが苦手で有名ですが、本日は勇気を出して参加していただきました」
「わ、私やっぱり、む、無理かもしれないです……」
コズエが高い声で可愛らしく答えると、スタジオに少し笑いが起きる。
「続いて、現役冒険者のノブナガさん。オカルト大好き冒険者として知られています」
「はい、俺こういうの大好物です!」
ノブナガが拳を握る。
「そして最後に、俳優のレンさん」
「実は幽霊はあまり信じていません。僕自身そういう経験がなくて。ですが、心霊写真にはけっこう興味があります」
司会者が神妙にうなずく。
「では早速ですが、こちらの写真をご覧ください」
画面に、少女の写真が映る。
カフェのようにも見える美容室の店内。
1人の可愛らしいポニーテールの少女が、温和な表情でこちらを見ている。
そして、少女の正面には大き目の鏡。
――おわかりいただけたでしょうか。
司会者が続ける。
「さて、皆さん。何かお気づきの点、違和感はありませんか?」
ゲストが写真を見つめ、まっさきにコズエが首を傾げる。
「えー……普通にかわいい女の子の写真ですよね?
正直この子、めっちゃ好みのタイプです」
「そういえば、コズエさんは百合好きを公言なさっていましたね」
司会者が軽くフォローを入れ、次にノブナガが目を細める。
「うーん、女の子の正面に大きな鏡がありますね」
レンが腕を組ながら唸る。
「そうですね、僕にはただ可愛らしい少女が写っているだけで、特に違和感はないように思えます」
司会者が軽くうなずく。
「実は、この写真には“ある不可解な点”があると言われています」
「ですが、やはりまずは専門家の意見を聞いてみましょう」
「では、この写真について、霊能力者のギーボ先生、お願いします」
ギーボは静かに写真を見つめ、そして口を開いた。
「……少女の正面に、鏡がありますね。ですが、鏡に写っている人物をよくご覧ください」
指先が画面を示す。
「この角度では、映る位置が不自然です」
スタジオが少しざわめく。
「それに、鏡の中の人物が着ている服、そして手の位置も、写真の少女とは違います」
ゲストが身を乗り出す。
「え?言われてみれば、あー本当だ」
ギーボが優しい表情になり、そっと告げた。
「ですが、私はこの鏡の中の女の子から、嫌な感じは全然しないんです」
司会者が聞き返す。
「ギーボ先生、嫌な感じがないとは?」
ギーボは少女の目元を見る。
「むしろ、とても優しい視線です。何か、この少女を見守っているような。そんな印象を受けます」
スタジオが静まり返る。
司会者が神妙な顔でカメラを見た。
「実は、この写真の提供者の方と、現在電話が繋がっています。お話を聞いてみましょう」
電話が繋がる。
「もしもし?」
女性の声。
「はい、もしもし」
司会者が優しく話しかける。
「本日はお電話ありがとうございます。まず、さっそくなんですが、この写真を撮った時の状況を教えていただけますか?」
女性が少し照れたように話す。
「えっと……美容室に行ったんです。その時に、ポニーテールにしてみて」
「友人が“似合うから写真撮ろう”って言って撮ってくれたんです」
ギーボが静かに口を開いた。
「……大変失礼なんですが、お亡くなりになった身内の方はいませんか。ご兄弟か……」
女性が黙る。
ギーボは続ける。
「おそらく……あの、本当にごめんなさいね。歳の近いお姉さんとか……」
スタジオが一瞬静まる。
電話の向こうで、女性の声が震える。
「……はい、実は……」
「私には双子の姉がいました」
ゲストが息を呑む。
「ただ……私たちが本当に幼い頃……
1歳か2歳の時に事故で亡くなったそうで……
母からそう聞いています」
スタジオに沈黙が落ちた。
ギーボがゆっくり言う。
「そうですか……これではっきりしました。
お姉さんはね、今でもあなたを見守っていますよ」
女性が息をのむ。
「……え?」
ギーボの声は優しい。
「とても似合っていたんでしょうね、この髪型が」
「それで、少しいたずらをしたんだと思いますよ」
「鏡に、ほんの少しだけ、一瞬だけ、姿を見せたんでしょうね」
電話の向こうで、女性が小さく息をのむ。
「……お姉ちゃん……なの?」
スタジオに静かな空気が流れる。
司会者がゆっくり視聴者に促す。
「……みなさん、それではもう一度。
写真をご覧ください」
画面に少女の写真が映る。
鏡の中の姉は、
その視線は――まっすぐ、妹を見つめている。
「よく似合ってるよ、そう言ってるように思えませんか?」
静かな音楽が流れ、司会者がゆっくりと視聴者に語りかけた。
「亡くなった人は、決して消えてしまうわけではないのかもしれません」
「もしかすると今この瞬間も――」
「大切な誰かが、あなたのすぐそばで、見守ってくれているのかもしれませんね」
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司会者
「それでは続いての写真です。
大変ショッキングな写真です。皆さん、驚かないでください。」
「こちらの写真は、今巷を賑わせている
覇天軍の軍団員の方から寄せられたものです。」
「では――ご覧ください」
モニターに一枚の写真が映し出される。
荒野を走る馬車。
その馬車を――半裸の男が必死の形相で引いている。
後ろの御者台には、黒いドレスの女性。
――おわかりいただけたでしょうか。
コズエが恐る恐る口を開いた。
「……あの、これ大丈夫な写真ですか?その、色々と……」
ノブナガが身を乗り出す。
「いや待ってください、そもそも人が馬車を引いてません?」
レンが困惑した表情で言う。
「状況が全然わからないんですけど……」
司会者
「私から状況を説明させていただきます。
まずこの男性は、覇姫エレクシア様を暗殺するべく送り込まれた暗殺者です。
そして、四天王に返り討ちにされ、このような処罰を受けているということです」
ノブナガが真顔で言う。
「あの覇天軍に喧嘩売ったら……そりゃまあ、そうなりますよね」
スタジオに軽い笑いが起きる。
しかし司会者は、まったく笑わず、真面目な顔で続けた。
「ですが――問題はそこではありません」
スタジオの空気が一瞬で引き締まる。
司会者がモニターを指さす。
「この写真には、もう一つ不可解な点があります」
ゲストたちが改めて写真を見つめる。
「本来、ここにいるはずのないもの……」
「いや――」
「いてはいけないものが写っているんです」
コズエが小さく声を漏らす。
「え……いてはいけないもの?」
司会者がカメラに指示を出す。
「カメラさん、少し寄ってもらえますか」
「――そう、そのあたりです」
そこに映っていたのは――
一頭の馬の顔だった。
レンが何かに気が付く。
「あれ……ちょっと待ってください」
モニターを指差す。
「この写真……男が馬車を引いてますよね?」
「でも……なんで後ろに馬も、いるんですか?」
スタジオに沈黙が落ちる。
司会者が静かにうなずく。
「ええ、レンさんの仰る通りです」
「なぜか……
馬が、いるんです」
スタジオに動揺が走る。
司会者
「それでは、この写真について霊視をお願いしましょう」
「ギーボ先生、いかがでしょうか」
霊能力者ギーボが静かに目を閉じる。
「……見えます。
先ほどの説明にもありましたが、
この男は現在――ざまあ執行中です」
レンが声をたまらず漏らす。
「すごい“ざまあ”ですね……」
ギーボが続ける。
「現在は、このように……罰として馬車を引かされていますが、この写真の本当のポイントはそこではありません」
スタジオが静まる。
ギーボが馬を指さす。
「この馬です」
司会者
「この馬、ですか」
ギーボ
「ええ。この馬は――かつてこの冒険者に酷く扱われていました」
「無理な荷を引かされ、
疲れても休ませてもらえず……」
「そして、無念のまま命を落としました」
スタジオ
「……」
ギーボがゆっくり画面を見る。
「ですが、この日、この男が“ざまあ”されている噂を聞きつけ――」
「わざわざ見に来ました」
ノブナガ
「……それは、野次馬ってことですか?」
ギーボがカメラを見据え、神妙な顔で頷く。
「はい……野次馬の霊です」
スタジオが静まり返る。
司会者
「カメラさん、もう少し野次馬の顔に寄れますか」
画面いっぱいに馬の顔が映る。
司会者
「……ご覧ください。この馬の……」
「いえ、本懐を遂げた者の目を」
コズエが息をのむ。
「うわ……なんか……」
「めっちゃ――ざまぁ――って言ってるような気がします」
ノブナガが腕を組む。
「めちゃくちゃ冷めた目してますね」
「そう、まるで汚物を見るような目で」
司会者
「ええ。とても冷めた目で、この男を見ています」
ギーボが静かにうなずく。
「ですが同時に――」
「とても満足しています」
「こう言っています」
「“ざまぁ” とね」
コズエが恐る恐る言う。
「この子は……その……」
「野次馬さんは、成仏できたんでしょうか……?」
ギーボが真剣な眼差しで頷く。
「ええ」
「もう、この馬は成仏して、逝きました」
「ですから皆さん、ご安心ください」
「これは――」
「ただ“ざまぁ執行”を見物に来ただけの……」
「ただの、野次馬霊です」
――おわかりいただけたでしょうか。
虐げられ、
酷使され、
理不尽に命を落とした者の恨み。
その声を――
「……ざまぁ……」
┈┈┈ おまけ ┈┈┈
これは、家の近くの道を何となく撮影した写真です。
もちろん、撮影した時――
道には誰もいませんでした。
ですが写真を確認すると、
このようなものが写っていました。
司会者
「これは……一体なんなのでしょうか」
霊能力者ギーボが静かに言う。
「写真に写っているのは――悪魔です」
スタジオ
「ええええ!?」
ギーボ
「ですが、この写真には少し不思議な特徴があります」
「これ、見える方と……見えない方がいるんです」
コズエ
「え?」
ギーボ
「霊的な力が強い方は――」
「二体の悪魔がはっきり見えます」
「ですが、弱い方は」
「おそらく……下の一体しか見えません」
コズエ
「うわああああ!!」
「やだやだやだ!!」
「わたし二体見えます!!」
「どうすればいいんですか!?」
ギーボは静かに頷く。
「ご安心ください」
「もし二体見えてしまった場合は――」
「ブックマーク」
「評価」
「これを行っていただければ、
特に問題はありません」
コズエ
「します!します!」
「すぐします!!」
――おわかりいただけたでしょうか。
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番組では、皆さんのお手元にある
「不可解な写真」を募集しています。
もし、プロの霊能者に一度見てもらいたい写真がありましたら、ぜひ番組までお送りください。
それが――
ただの偶然なのか。
それとも、
本当に“何か”が写っているのか。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。 もし少しでも面白いと感じていただけたら、 ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです^^
悪魔が二体見えてしまった方でも、評価はしなくても特に問題ないと思います。
この短編集を一気読みしやすいようにした連載版。
☆★ 婚約破棄され系女子 ( 漢 ) の芸術的ざまぁ劇場。
こちらもよろしくお願いします。




