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第七六段 懸想文にて来たるは(前半)
懸想文を持って来た者は、あれこれ言うべきではない。
しかし、ただ話だけするか、またそうでなく、自分からやって来た人で、すだれの内側に入ってたくさんの女房と座り込んで話をする者がいる。当分帰りそうにもない様子でいるのを、すだれの外で待つ供をしてきた男や童などが、
「斧の柄も、腐ってしまうだろうよ。」言う様はやっていられない、と思っているのだろうが、長々とそれを眺めて、ひそかに嘆いているつもりだろう、
「ああ、やりきれない。煩悩苦悩だよ。もう、夜中になってしまっているだろう。」
などと言っている。
(まったく、いい気なものですね。はた迷惑この上ないい。)
ひどく不愉快で、この供の者は何を言おうとどうということはないが、この座りこんでいる人は、「おかし」と見聞きしていたことも消え失せてしまったように感じられる。
(一人の女性に言い寄るのはいいけれど、時を忘れてたくさんの女房と話し込むのは、よろしくないようです。)




