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第四六段 節は(前半)
節は五月に及ぶものはない。菖蒲と蓬のにおいが競うように香っているのが、たいそうおもしろい。宮中から言うに足らない身分の低い者の家まで、どうやってよそよりたくさん菖蒲を敷き詰めようかとひしめくように敷き詰められているのは、めったに見られない様子で、「おかし」。他の節句ではこんな様子は見られない。
空の景色は曇っているが、中宮様のいらっしゃる御殿には、衣装をつかさどる縫殿から御薬玉といって色々の糸を組んで垂れ下げてあるものが献上されている。それが、御帳を立ててある母屋の柱に、左右につけられていて華やかである。ここには、九月九日に菊を綾と生絹に包んで献上されていたものがずっとあったのであるが、薬玉に取り替えて捨てられたようである。この薬玉は、菊の咲く折までここに飾られているのであろうか。しかし、薬玉の糸は、ものを結ぶのに使われるので、あっという間に引き抜かれて、しばらくの間も残っていないのであった。
菊の包みは放っておかれるのに、薬玉の糸は使われて無くなっちゃうのね。




