第四四段 木の花は(前半)
木の花は、なんといっても梅の花が「おかし」。濃い色でも、薄い色でも、紅梅がよい。桜の花も、花びらが大きくて、美しい色合いのものが、枝は細くて枯れたように見えるものに咲いている様子のものがよい。
藤の花は、しなやかに長く枝が垂れて、美しい色合いで咲いている様子が、とてもめでたく思われる。
それらに比べると、卯の花は品格が劣っていて、なんということはないが、卯月の夏の季節に咲くのが面白い。ほととぎすが、卯の花に隠れているだろうと思われることが、風情があってよい。賀茂祭のかえりなどに、紫野あたりの質素な家や手入れされていない垣根などにとてもしいろい卯の花が咲く様子がよい。
それを見ると、古く黄ばんでしまった萌黄色の上着の上に、白い単襲をひきかぶっているような美しさがある。また、卯の花がなくても、青朽葉色の衣に似ていて「おかし」。
四月の終わり、五月の一日などのころに、橘の木の葉が青々と茂っているところに、橘の花が真っ白に咲いていて、雨が降っている早朝の景色は、この世のものでないように感じられるほどすばらしい。花の中にまるで金でできた宝玉のように橘の実がきわやかに見えている様子は、朝露に濡れた桜の花におとらず美しい。ほととぎすが寄ってきて実をついばむと思うからであろうか、わざわざ言う必要がないほど素敵だ。
梅や桜のことは、一言で済ませ、卯の花について詳しくその素晴らしさを書き連ねるところが清少納言らしいですね。




