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第百八二段 宮にはじめてまいりたるころ(その4)
しばらくたって、先払いの声が音高くしてくると、
「道隆様が、いらっしゃいます。」と言って、そこのあたりに散らかっている物たちを取り払いなどしているので、私は奥の方に引き入っているのだが、さすがに知りたい気持ちがするので、御几帳のほころびからちらっと中を見た。
すると、父君の道隆様ではなく、兄君の大納言の伊周様であった。御直衣のうし、指貫さしぬきの紫色が雪に映えて趣深い。柱のもとに座られて、
「昨日、今日と物忌であったのですが、雪がひどく降っておりましたので、定子様がどうしておいでかと気がかりで。」などとおっしゃる。
「(歌に『山里は 雪降り積みて 道・も・な・し・ 今日来ん人を あ・わ・れ・と・は 見ん』(拾遺集)とあるように)『道もなし』と思っていたのに、どうしていらっしゃったのですか。とお答えになるようである。
伊周様は、お笑いになって、
「『あわれと』思って、私をご覧になってくださると思いまして。」などおっしゃるご様子は、これより何事か勝ることがあろうかと思うほど素晴らしく優美である。物語の中で素晴らしい会話を思いつくままに喋っているのにも劣らないと感じられる。(とても現実だと思われないほどすばらしい。)




