第百八二段 宮にはじめてまいりたるころ(その3)
私が膝立ちして、定子様の御前から隠れるやいなや、局の格子を上げたところ、雪の様子がたいへん素晴らしい。
「今日は昼のうちにいらっしゃい。雪で曇っていて、姿があらわになることもないでしょう。」などおっしゃって、何度もお召しになるので、私のいる局のあるじである女房が、
「そのように局に引きこもっていようとなさるのは不都合です。あっけないほど簡単に、定子様の御前に出ることを許されたのは、そうお思いになるわけがおありなのでしょう。お考えに違えるのは、にくらしいことですよ。」など言い、ただ急いで参上させられるので、茫然自失としながら参上するのだが、たいそう苦しい。
警護のために火の焚かれる火焼屋の上に雪が降り積もっている様も、珍しく趣深い。定子様のお部屋の前近くには、例のごとく炭櫃の火をことごとしく熾して、それにはわざと誰も座っていない。定子様は、沈香木で作られた火桶で、金銀の梨地の蒔絵を施したものに向かっていらっしゃる。上臈の女房達が身の回りの御世話をしてそのまま近くに侍している。
次の間には、長炭櫃に、隙間なく座っている女房達が、唐衣を垂れるように着こなして、物慣れて安らかな様子でいるのを見るのも、うらやましく思う。
(おどおどしている私とは、大違いである。)
定子様に、お文を取り次ぎ、立ち座る様子も、気が引けることもなくものを言いながら笑っている。
「いったい、いつになれば、そのように宮仕えの仲間になれるのであろうか。」と思うのさえも気が引ける。奥の方で三、四人集まって、絵などを見ている人もある。




