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第百八〇段 村上の御時、雪のいと高う降りたるを
村上天皇の御時に、雪がたいそう高く降り積もったのを、食器に盛らさせられて、それに梅の花をさして、月がとても明るい折に、兵衛の蔵人という女房におやりになった。兵衛の蔵人が、それを受け、
「月雪花の時」と申し上げたのを、村上天皇は非常に素晴らしいと感嘆し、称賛されたということだ。
「こういう時に歌などを詠むのは、一般的でつまらない。このようにその場にあったことを言うのはなかなかできないことだ。」とおっしゃったそうだ。
(白楽天の「雪月花の時、最も君を憶う」の漢詩の一節を口にしながら、「貴方を大切にお慕いしています」を言わずに伝えた趣のあることばです。)
それと、同じ兵衛の蔵人を御供にして、村上天皇が殿上の間にだれも参上していなかったときに散策をなさっておいでになると、炭櫃の煙が立ち上っていたので、
「あれは何の煙か。見てきなさい。」とおっしゃられたので、見て帰られて、
「わたつみの 沖に漕がるる もの見れば あまの釣りして 帰るなりけり」
(海の沖に漕がれている(焦がれている)ものをみると、海人が釣りをして帰る(あまがえる)ところでした。(焦げていたのは、あまがえるでした。)
と和歌を詠んで申し上げたのは、趣があって面白い。かえるが飛び込んで焦げていたのだったそうだ。




