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第百七九段 雪のいと高くはあらで(後)
宵を過ぎたかと思われるころに、沓の音が近く聞こえたので、変だなと思って見てみると、ときどきこのような折に思いがけなく訪ねてくる人であった。
「今日の雪をどのように見ておられるかと思い申し上げながら、何と無しにお尋ねするのもはばかられて、そのままそこにいたのですよ。」などと言う。
(拾遺和歌集に採られた平兼盛の)
山里は 雪降り積みて 道もなし 今日来ん人を あわれとは見ん
という歌の筋を言っているのであろうか。
昼にあった出来事などから始めて、いろいろなことを言い、笑う。円座を差し出したのだが、片方の足は縁から下に下げたままであるのに、暁の鐘の音が聞こえるほどの時刻になってしまった。それでも、御簾の内側の私も、外側の人も、話し飽きることはないように感じられる。
薄明りのころに、帰ると言って、
「暁、梁王ノ苑二入レバ、雪、群山二満テリ。
夜、庾公ノ楼二登レバ、月、千里二明ラカナリ。」(和漢朗詠集)
と吟じられたのは、たいそう趣のあるものであった。
女だけでは、夜明かしはできないであろうものを、普段より大変趣深く、風流であった男の様子などを、残った皆で語り合ったのだ。




