第二二段 すさまじきもの(その四)
「すさまじきもの」多すぎ。まだあるけど、これで終わりにして、明日は二十三に行きます。
春の除目で、どこの国の司にもなれなかった人の家は、「すさまじ」。
「今年は必ず国司の任官があるだろう。」と聞いて、以前にこの家に仕えていた者たちや、田舎に住む者たちなどが、みんな集まってきている。出入りする牛車もひっきりなしで、任官祈願の物詣といえば、お供しましょうと、われもわれもとやってきて、食べたり飲んだり大騒ぎをする。
任官の詮議が終わる夜明け方になっても、誰も門をたたかない。
「おかしいな。」と耳を澄ますと、詮議に参加していた上達部が、帰宅のために先払いをさせている声が聞こえる。夜中にお役所のそばで様子をうかがっていた下男たちが、春の寒さに震えながら沈んだ様子で歩いてくる。これには、待っていた者たちの誰もどうだったかと問いもしない。
よそから来たものはのん気に、
「殿は何におなりになられたので?」などと尋ねる。それにたいしては、
「もと何々の国司ですよ。」と必ず答える。
(つまり、今はどこの国司でもない。)
本当に頼みにしていた者たちは、非常に残念に思ってため息をついている。
(お先真っ暗。)
明け方になって、ひしめくように待っていた者たちが、だんだん一人二人と立ち去っていく。立ち去りがたく残っている者たちは、来年はどこどこの国司が交代になる、と指を折りながら数えたりしている様子が、全く気の毒で、「すさまじ」。
(就職・昇進戦線に敗れた貴族の家のもの悲しさよ。清少納言が生き生きと描写しているので、がっかりした部下たちの顔が、目に浮かぶようです。)
あと、歌を送ったのに返事が来ないこと、おめでたいことや惜別の使いに心づけを取らせないこと、婿取り、子育てに関することと続きますが、以下略!