第百段 ねたきもの(後)
見せてはならない人に、他のところに送るべき文を、取り違えて持って行ってしまうのは、ひどく腹立たしい。
「確かに間違えてしまいました。」とは言わないで、頑固に認めまいと抵抗するのは、人目さえ気にしなければ、走って行ってぶってやるべきところだ。
(人目を考えて、ぶつのはやめるのね。。。)
風情のある萩やすすきなどを植えて見ていると、長櫃を持った者が、鋤などを引き下げてやってきて、その萩やすすきを掘りに掘って去っていくのは、そうしようもなく腹立たしい。相手が身分のある者の時はそんなことをしないのに、こちらがひどく止めるのに、
「ほんの少しだけ」などといって掘って行ってしまうのは、言うかいもなく腹立たしい。
(これは、ひどい。)
受領(国司をしている貴族)などの家に、その家のしもべが来て、無礼な態度でものを言い、自分を何だと思っているのかという気配が言葉つきに出ているのは、まったく憎らしい。
(大した身分でもないのに、自意識が高くて自分は偉いのだ、と思っている人物かしら。)
見せてはならない人が、文を取って行ってしまって、庭に降りて立って読んでいるのは、どうしようもなく憎らしいが、追いかけて行っても、御簾から出るわけにもいかず、御簾のうちでとどまりながら、飛び出していきたい気持ちがするものだ。
(平安時代、あるあるなのでしょう。男の子が、何か取って行って、女の子が入れないところに持って行ってしまう意地悪、あったなあ。)
百段まで来ました!実は、枕草子は三二三段まであるので、まだ半分にもなりません。読んでくださってありがとうございます。まだまだ、がんばります!