117/186
第八七段 返る年の二月二十五日に(その5)
「頭の中将が、『西の京というところの荒れていることと言ったら。一緒に見る人があればいいのにと思った。垣なども皆破れてしまっていて、苔で覆われていて。』」と言っていました。などと、聞いたことを話していると、才女で知られる宰相の君が、
「『瓦の松はありましたか。』と言ったのを大変褒めて
(萃華来たらずして歳月久しく、牆に衣有り、瓦に松有り」白氏文集からの引用)
『西の方去れることいくばくの御命ぞ』と、その続きを口ずさまれました。」
というのを聞き、その場の人々が騒がしいほどこの話題について言い合っていたのが「おかし」。
西の京の衰退を本気で嘆いている頭の中将の気持ちを知ってか知らずか、メインは頭の中将の様子のすばらしさに終始して「おかし」などと言っている清少納言でした。まあ、女房が心配しても、どうしようもありませんが。




