第一段 春はあけぼの
葉月は、転移のための学校に5年通い、転移して平安時代に行き、清少納言と親友になった。転移を終え、令和に戻って、定時制の高校に通い、国立大学の文学部に入学し、国文学の研究をしている。その傍らで、『枕草子』のレポートを作成し、ここに発表している。葉月の実体験に基づく勝手な注釈付き『枕草子』レポートをお楽しみください。
清少納言は、四季の移ろいを、独特の感性でとらえた。
天皇の妃に仕える女房たちの朝は、早い。もちろん、夜明け前には仕事を始める。
春は、曙が「をかし」。四季の移ろいは、素晴らしく、「をかし」がいっぱい!!なんといっても、春は、夜明けが一番よ。早朝に起きて、女房の仕事を始めると、朝が明けてくるの。まず、山際が白々としてきて、少し明るくなると、空の雲が紫がかって細くたなびくさまが素晴らしいわ。
夏は、夜が「をかし」。月がきれいだなんて、当たり前のこと書く気はないの。真っ暗闇こそ「をかし」の宝庫よ。蛍が飛び交うさまの素晴らしいこと。それから、夏の夜は、雨が降っているのさえ、「をかし」だわ。
秋は、夕暮れが「をかし」。美しい夕焼けがあたりを真っ赤に染めているときは、やまぎわがとっても近くに見えるの。そんなときには、あのカラスという鳥さえしみじみと心に響いて、三羽、四羽連れ立ったり、二羽、三羽とそれぞれに宿に急ぐ様子が風情あるものに感じられるの。まして、遠くの空に、雁の群れが飛んでいくのが小さく見えたりすると、それはそれは「をかし」ね。夕日がすっかり隠れてしまうと、今度は、風の音や、虫の声が聞こえて来るわ。ああ、素敵。
冬は、早朝が「をかし」。雪が降っていれば、満点だけども、霜で真っ白になっているのもいいわね。そうでなくても、とっても寒い朝に、急いで火を起こして、各お部屋に炭火をもって廊下を渡っていくのも、とっても冬らしくていいわね。それが、昼頃になると、気温も中途半端に上がってきて、囲炉裏や火鉢の日も、白い灰ばかり目立つようになってしまって「わろし」でがっかりよ。
近頃は、小学校で暗唱させられるので、(私も、小学生で覚えた。意味は、さっぱりわからなかったけど)まず、令和の人間のほとんどが知っている段だ。清少納言の得意顔と観察力が見事に感じられて面白い。