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4、宮内庁への依頼

NKHの大道は意見書を提出してもらうために宮内庁に出向く。そこで若き研究者の佐久間美佳に出会う。佐久間は純粋な歴史研究家だが、このあと複雑な事件に巻き込まれていく。そして彼女の生誕には深い因縁が隠されている。

 大道が宮内庁に出向いたのは翌日5月11日の午後2時 NKHからの文書を持参して宮内庁書(しょ)(りょう)部陵墓(りょうぼ)課へ向かった。陵墓課では佐多(さた)課長が迎えてくれた。話はNKH制作局長から宮内庁長官へ通じていた。陵墓課の佐多課長は仕事を受ける前提で話を聞いてくれたので、スムーズに進んだ。

「2023年から3年かけて放送する年末歴史ドラマの舞台に箸墓古墳を舞台とした邪馬台国の卑弥呼を描く案と北陸の越国出身で大和朝廷の大王になった継体天皇を描く案と2つ考えておりますが、その最終的な意見書を出していただきたいと考えております。私たちは歴史研究の専門家ではありません。こんな話なら面白いなという事は考えられますが、こんな話に持っていくと史実と会わなくて不都合が生じるとか、話の前提が史実に基づいていないとかいうことがよくわかりません。迂闊に決定して、ドラマ撮影に入ってから中止するわけにはいかないので、慎重に進めるために外部の意見を取り入れようと言うことになった次第です。最終決定はNKHが行いますが外部専門家の意見という形での意見書をお願いします。」

大道の言葉に、佐多課長は

「あらかじめ、担当者を考えておきました。佐久間美佳(さくまみか)といって早稲田大学文学部歴史学科大学院卒業で新進気鋭の歴史研究家です。今呼びますね。」といって部屋を出ると、1人の若い女性を連れてきた。歴史オタク的な分厚い眼鏡をかけた中年女性を連想していたが、女優さんではないかと思われるような美女が大道の目の前に現れた。佐多課長は

「あらかじめ、話はしておいたのですが、佐久間君です。佐久間君は早稲田大学で中川教授に師事し、日本史を世界史的見地から検証するような研究をしてきました。宮内庁に来てからは主に宮内庁所蔵の文化財の研究をしてもらっています。正倉院御物も世界史的観点から見ると、その価値が美術品としての価値から歴史的証拠品となり、学問的価値が変わってくるんです。近畿地方の古墳からの出土品なども専門領域になります。では佐久間くんよろしくお願いしますね。」

紹介された佐久間美佳は臆することなく、堂々とした態度で挨拶をした。

「佐久間と申します。NKHさんのドラマの舞台決定の仕事に携われるなんてとても光栄です。どうかよろしくお願いいたします。」と言って名刺を渡した。

長い髪はストレートでスタイルは細身、紺の上下のスーツでインナーはレースの入った白いブラウス。タイトなスカートはひざ丈で、公務員としての気品を感じさせ、鼻筋は通っているが丸みのあるかわいい目で、童顔の女優ではないかと思わせるような容姿だった。大道はこれからこの人と仕事できるのかという期待で胸がどきどきした。名刺には仕事用のアドレスも書かれていた。慌てて大道プロデューサーも佐久間に名刺を渡し、

「これからはこのアドレスにメールを送って連絡を取らせていただきます。また、取材をする際の経費はNKHが持ちますので、取材など行っていただいて、交通費・宿泊代・書籍料など遠慮せずにご請求ください。それにしてもこんな美しい方とお仕事ができるなんて大変光栄です。できましたら他の仕事でも受けていただけたらNKHの番組に出ていただけないでしょうか。絶対に人気が出ます。いや、私が何とかして時の人にして差し上げます。どうでしょうか」と言うと、佐久間は

「御冗談がお上手ですね。」と言って話をそらした。大道は軽く受け流されたがメインの依頼を受けてもらえた歓びを満面の笑みで表現してNKHに帰っていった。

 早速、佐久間は翌日から調査活動に入り、翌月の6月にはまず奈良県に行って現地調査に入る計画を立てた。



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