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現実系ショートショート

こいにおちる

「おはようございます!」

 先生にそう挨拶すると、先生は驚いたような顔をした。普段地味で声も小さな生徒がこんな風に挨拶すると、やっぱり驚かれるらしい。

「おはよう」と明るく同級生に挨拶をすれば、やっぱりみんな驚いていた。

 自然と口角が上がってニコニコと笑う私を見て、なにか良いことでもあったのかと聞いてくる人もいる。「うん、まあね」と私は答えて、おかしくなって笑い出す。

 少し気味悪がられたけど、知るもんか。だってこんなに楽しいんだもん。

 踊るような足取りで教室を出ると、私は屋上に向かった。

 手紙はすでに彼の座る机の中。それとは別に、昨日文章を必死に考えたもう一枚はいまも私の胸ポケットに。

 屋上は南京錠で施錠されているけど、鍵が壊れているから、ちょっとコツこそいるけど十円玉を使えば簡単に開く。

 開け放たれた扉から屋上に出ると私は一つ大きな深呼吸をした。

 屋上の空気は澄んでいて、雲一つない青空が気持ちいい。いますぐにでも飛んでいけそうな空だった。

 靴を脱いで揃えると、胸ポケットから取り出した手紙を、ハンカチを一枚噛ませてその下に丁寧に置く。

 そして、本来なら今日も私が授業を受けるはずだった第一校舎の教室の窓を見た。窓際の席の彼は、机の中に入っている「第二校舎屋上」とだけ書かれた紙を見つけて訝しそうな表情をしている、ような気がした。そこまで遠くは見えないから想像だけど。

 彼は教室から見える第二校舎の屋上、私のいる屋上の方へと顔を向けた。私の方を見てくれた。


 私がこいにおちた人が、こっちを見てくれた。

 ある女の人が忘れられないと、私の告白を断った人が、私のことを見てくれていた。

 それが分かったから、私はこいにおちた。


 これでもう、私のことも忘れないね。

有名な意味怖を反対側から書いたら面白いかなと思って書いてみました。

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