2話・教会で働きます
このストーリーをさらに広げ長編作っていきます。
話し溜めてちょくちょく投稿すると思うので
送ってくれた恩を返す為に野菜を荷馬車から降ろすこともせず、王都に着くとジーレックは荷馬車を急いで降りて王族が住む中心部に向かった。
走るジーレックは醜いものであった。
太ったお腹が走るたびに揺れ、鼻息は荒くまるで豚のようだ。
王族しか入れない門に着くと、門番に話しかけた。
「第三王子のジーレックだ王様に合わせろ」
「あん、あの国王に愛想付かされて追放された王族の面汚しか、いや元王族と言うべきか、この豚野郎が」
門番の一人がジーレックの肩を押し、しりもちをつかせた。
しりもちをついたジーレックを門番のもう一人が顔に蹴りを入れ、前歯が数本折れた。そこからは、殴る蹴る身ぐるみをはいだ。
門の前とは言え、人通りがあるが全員ジーレックの悪行を知り嫌っていたので通行人たちの見世物になっていた。
鼻と口から血を出し、今にも死にそうな瀕死状態になるまでボコボコにされた。
兵といい、門番といいどれほど元第三王子ジーレックを嫌っているのかをジーレックは知った。今まで金で従いお金さえあげれば喜ぶ物だと思っていたが、物は金と地位を失うと、逆らい手のひらを反すことが分かった。
「おいおい、この豚をどうする?豚小屋に閉じ込めるか」
「ううう...」
「いや、こいつが死んだら俺たち犯罪者じゃないか?」
「はあ!?こいつを殺して犯罪ならこの国がおかしいわ!!」
「だけどよ...」
「わかった、なあ!!お前らここで見たことは沈黙しろよ!!」
最初にジーレックの肩を押した門番は弱気になり、犯罪者になりたくなくびくびくし始めたが、もう一人の門番はジーレックによっぽど不満があるのかもっと痛めつけたいが、門番がびくびくし始めたので痛めつけるのはやめ、通行人たちに今起きていた出来事は黙るよう言った。通行人たちは「もちろん」・「胸がスッとしたよ」・「あんた達は最高だよ」と、むしろ歓迎の声が上がっていた。
門番二人は重たい巨漢を引きずり、あまり人目のないゴミ置き場に捨て去り今日の事をなかったことにした。
「ヒュー、ヒュー、ヒュー」
ジーレックは、今にも死にそうな呼吸をしながら自分がどれほど嫌われていたのかを思い涙を流し始めた。
今まで慕っていたやつや、兵士、門番、メイド、お父様まで全員嫌っていた。
自分はそれを知らず、お金を使い、お金を使う事はいいことだと思っていた。
お金は人を幸せにすると思っていた、お金を上げると喜び媚びを売り、悪口を言うやつは取り押さえて殴りサンドバックにしていた。
だけど、それは違ったのだと。
お金をもらえるから僕についていたのか....
もう、人なんて信じられない。
すると雨が降りだし、体が冷え始めた。
意識は薄れ、段々ボーっとし始め僕は死を悟った。
「あの、大丈夫ですか?」
「ヒュー、 ヒュー...」
ゴミ置き場に捨てられた僕をたまたま見つけたのだろう、王都まで送ってくれた先ほどのシスターが、傘を僕の方に近づけ雨が当たらないようにしてくれた。
「今治してあげます」
「ヒュー、ヒュー...いや...いい...」
「ですが」
「僕は...ヒュー、このまま死ぬことにする。ヒュー、ここまで送ってくれてありがとう....」
人生で初めて感謝の言葉を言うことが出来た。
感謝すると僕も慕われる真逆の人生が味わえたんだろうな...
もう、スーっと意識が消え始め、体に力が入らず手も動かすことが出来なくなった。
「ヒール」
かすかにそう聞こえた。
すると体の寒い痛いなどの苦痛が消え、もう死ぬんだろうと感じた。なんだか体も暖かく死ぬとはこういう事なんだと思った。
しかし、目を覚ますと本で読んだような場所ではなかった。
白く幻想的で、綺麗な天使様がいるはずなのだが見覚えのある天井があった。
「やっと起きましたか」
目を声のする方に向くと、シスター服を着た人がいた。
しかし、僕を王都まで送ってくれて、ゴミ置き場で会ったシスターではなかった。
「ああ、やっぱ死んだか」
「いえ、死んでいませんよ。確かに貴方はここまで連れてこられたときは死にかけでした。シスターメレッタが魔力を使い何とか死を遅らせることは出来ましたが、メレッタはまだ未熟、あなたを救うことは出来ませんでしたよ」
「じゃあ、何故生きている」
「それは、メレッタが死にかけの貴方を連れてきて今まで見たことがない顔で「助けてあげてください」と頼まれたのです。私たちシスター総勢であなたに回復を施したのです。ちなみに、最初にこの教会に来た時もこの私が治したんですよ」
「あ、ありがとう...」
「お礼なら、ベッドで寝ているメレッタに言って下さい。」
そういわれ、少し起き上がり辺りを見渡すと椅子に座り、ベッドに倒れているベレッタがいた。
動くときに多少布団を引っ張ったのでシスターメレッタが起きた。
「よかったです。もう、目を覚まさないかと思いました。」
「ありがとう。改めて君の名前は」
「メレッタです。」
「メレッタさん、改めて礼をいうよ」
「ジーレックくん、私は心配しました。もう死のうとしていたので、どれだけ絶望が有っても死んだら元も子もなんですよ。わかりましたか」
「あ、ああ」
子供に説教をするような感じで調子は狂うが、シスターメレッタの言っていることは正しいと思う。
「あの...もし、邪魔でなければここで働かせてくれないか?僕はお父様などに捨てられた嫌われ者。こんな何も知らないクズな自分を助けてくれたお礼と雨をしのげる場所をくれないだろうか」
「いいですよ。男手が必要なんです。こちらこそお願いしても?」
「ありがとう」
僕は第三王子レペリック・ジーレック改め元第三王子のジーレックとしてこの教会の仕事を手伝いながら僕が生きる意味などを見つけ、また生きるために働く事にした。