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そこからはあっけないもので、謎の力でボロボロだった少女達を突然現れた、金髪の女の子が守りながら見事に敵を撃退していった。
金色の髪を振り乱して、出会ったばかりの人を守って戦う姿に私は目を奪われていた。
「お姉ちゃん。今日のお話は少し怖かった」
頬を掻きながらハニカムと俯きがちに言う妹の頭を撫でながら私はアニメの余韻に浸っていた。
「でも金髪の女の子カッコ良かったね」
「うん!お姉ちゃんも真姫が負けそうになったら、あの子みたいに助けてくれる!?」
「もちろん。真姫はお姉ちゃんが守っちゃうよーっ」
学校ではのけ者にされている存在の私が妹を守れるかと聞かれると正直自信はない。
けど、この可愛い妹だけは何があってもお姉ちゃんが守る。
日本にいる限りはそんな命の心配なんて早々する必要はないけどね。
「じゃあ。真姫とお姉ちゃんの約束だね!」
真姫が胸の前で小指を立てた。
私もそれに応じて小指を差し出すと、小指を絡めてきた。
私に取って約束は何があっても必ず守り通すもの、過去の出来事からそう決めている。
あれは確か、私が小学4年生くらいのときだっただろうか。お父さんと約束した門限を遅れて帰った時の事だ。
その日は家族で食事に行く大事な約束だった。
私は本を読む事が好きだ、本と言う裏切る事の無い物語は私の孤独を埋めてくれる。
学校に友達のいない私は帰り道の公園でその日も本を読んで過ごしていた。
学校から毎日真っ直ぐ帰っていると、お母さんに友達がいない事を心配されるからだ。
すると私のそばに寄り添うように私と同じような目をした黒猫が座っていた。
私と同じくこの子も孤独なのか……と好奇心の赴くまま猫を撫でるとすぐに懐かれた。
それから時間を忘れて猫と戯れてしまい。
気付くと約束の時間を過ぎたことを知らせる夕方6時を知らせる切ない音楽が流れたところで我に帰った。
時は夕暮れ、日も落ちかけている、約束の時間確か5時。
どうしようかと慌てている私の元へ、夕日の逆光に照らされた大きな大人の影が近づいてくる、近くまで来てようやくわかった、お父さんだ。
仕事着から普段着に着替えたであろうシャツとズボンは汗によって色は変わっていて、仕事で疲れた顔には大粒の涙を浮かべていた。
先程まで焦っていた私の心は申し訳なくなると共に、約束を破ってしまったことで頬を打たれるのではないかと、恐怖に怯えていた。
「……麗奈、よかった」
お父さんもベンチに座っていたのが私だとわかると駆け寄ってきて私をギュッと抱きしめた。
汗に濡れたお父さんの体は小刻みに震えていて、冷たいけれど抱かれた腕は、胸はとても暖かかった。
「お父さん……ごめんなさい!」
緊張の意図が解けてしまったのか、私の瞳からも熱いものが込み上げて溢れ出した。
「心配したんだぞ……麗奈は約束を破った事ないからな」
今まで約束をそこまで重要視したことはない、約束なんて守って当然と思っていたから。
でも、その時父から言われた約束、と言う言葉に幼いながら私の胸がチクリと痛くなった。
私たち親子はお互いに泣き、謝り、父に手を引かれて帰ったのを今でも鮮明に覚えている。
それからと言うものの、私は小さいものから大きいものまで約束は絶対破らないようにしてきた。
そもそも門限を破らないように、お姉ちゃんと遊びたいと言う真姫を理由にして真っ直ぐ帰るようになった。
知ってか知らずか、真姫も私に何か日常的にして欲しい事があると、約束という言葉を使う。
首を縦に振れば私はやるし、横に振れば私には出来ないって事を理解しているのだろう。
まあ、可愛い妹にお願いされたら、ある程度の無茶なお願いも聞いてあげるのがお姉ちゃんと言うものだ。