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か、可愛い。自分も寂しいはずなのになんて健気な妹なの?
ご飯中にも関わらず真姫を抱きしめてしまった。
「きゃーっ」
「真姫は可愛いなあっ」
「お姉ちゃんも可愛いよ?」
「はぁ……あんた達は……両方とも可愛いからイチャイチャしてないでさっさと食べなさい」
真姫の天使のような微笑みにお父さんの事なんて気にならないくらいに私の心は晴れ渡っている。
ごめんねお父さんっ、だって真姫ったらこんなにも懐いてくれるんだもん。仕方ないよね!
朝食を食べ終わり、食べ終わった食器を洗っている音が聞こえる中、私は真姫を膝の上に乗せて2人で日曜日のアニメを見ている。
私はもう女児向けのアニメには興味はないけど一緒に見ないと真姫が拗ねてしまうからしょうがない。
テレビの中で私と同年代くらいの少女達が戦闘用の衣服に身を包んで、物理で戦っている。
今時、魔法とか超能力とかじゃないんだね、でも戦闘シーンの動きのしなやかさは目を見張るものがある。
「いけー!ぱーんち!」
アニメの中の少女を真似して真姫も私の膝の上ではしゃぐものだから、肘や肩が時々私の顔にぶつかる。
その度に真姫が振り返って謝ってくる、ほら、ちょうど今当たった。
「あう、お姉ちゃんごめんなさい」
だから都度私は言ってあげるのだ。
「君の攻撃程度じゃー私はびくともしないよっ」
実際、はしゃいでいてちょっと当たった程度だから痛くも何ともない。
「お姉ちゃん強い!」
真姫がキラキラと輝かせた瞳で純粋無垢な視線を向けてくる。
「なんせお姉ちゃんは悪者だからねーっ食べちゃうぞー
!!」
ゆっくりと捕まえないように真姫に向かって手を伸ばす。
「なにーっ!?じ、じゃあこの正義の使者!真姫がお姉ちゃんの悪の心を打ち砕く!」
それを躱して真姫が私の膝から立ち上がり、ファイティングポーズを取った。
毎週日曜日定番ごっこ遊びの始まり始まり。
私も真姫の身長に合わせて膝立ちで立つと、真姫の動きを待ち受けるように腕を広げて迎撃準備をとる。
「お姉ちゃんに勝てる物ならかかっておいでよ!」
「悪の心に取り憑かれたお姉ちゃんめ!笑っていられるのも今のうちだー!とう!」
それはどちらかと言うと悪者のセリフでは?と思っている私に向かって、掛け声と共に真姫がトタトタと助走をつけて飛びついてきて私の事を抱きしめた。
「なっ!私の悪の心が……浄化されていく……!!!」
「どう?お姉ちゃん!これが私の光の力よ!」
「ぐぁあ、私の手が勝手に真姫を抱きしめてしまぅう……!」
壊物を扱うように優しく、真姫を抱きしめた。
「もう少し!もう少しでお姉ちゃんの中の悪の心が無くなる!お姉ちゃん!私の頭を撫でなさい!」
それは颯爽真姫の願望でしかないけど、勿体ぶらずに左手で真姫の頭を撫でると、くすぐったそうにキュッと目を瞑っている。
「もうだめだぁあ……」
腕を解き、全身から力を抜けたように真姫の横に倒れ込むと、眠ったふりをして真姫が起こしてくれるのを待つ。
いつまで経っても来ない。どうしたのだろうか。
寝転んだまま目だけを開けて真姫の方を見ると真姫の目はテレビに釘付けになっている。
テレビ画面にはいつもより劣勢に立たされている女の子達が悲痛の叫びをあげていて、それを見た真姫の瞳も悲しいに揺れている。
「あぁぁ……」
どうせ誰かが助けに来て窮地を救ってくれるか、新しい力に目覚めて敵を完膚なきまでに打ち砕く。と言うお決まりのパターンになるから気にする必要はないのだけど、純粋な真姫は、本当に負けてしまいそうだと思っているに違いない。
ボロボロになって動けなくなった少女と、少女にトドメを刺そうと敵が鋭利な槍を振り上げた所に低身長ながら凛々しい顔をした金髪の女の子が割って入った。
ほら、やっぱりお決まりのパターンだったね。