表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/23

8 誤算


「んん………………………はっ!!」


 ダンジョンを脱出してから、大体丸一日ほど経って、やっとケイは目を覚ました。

 しかし、森ど真ん中で寝たというのにケイは全くの無傷、それどころか全く寒さも感じず、熟睡したおかげか疲労も完全に取れていた。


(なんで、こんな所で寝て無事で済むはずが…)


 彼のこの疑問は、直ぐに解決された。


 ケイの寝ていた場所には、大量に黄緑色の小さい花が散りばめられていた。


「これは…木五倍子(キブシ)の花?」


 その時、ケイは一瞬で疑問が状況を理解した。何故なら木五倍子の花言葉は『出会い』、そして…


「嘘、だよね?エリス」


_____フフ、ちゃんと憶えてたの。


 頭の中でエリスの声が響いた。


「育てるだけって言ってたのに、今回はどんな気まぐれ?」


______別に?まぁ一応7年間一緒にいたわけだからね、おまけよおまけ


「そっか、ありがとう」


_____私の事なんかいいから、さっさと目的地に進んだらどう?ここからあんたの故郷は遠いわよ?


「うん、わかってる、また暇な時にでも祈っとくから」


_____はいはい、それじゃ気をつけてね〜


 エリスとの会話が終わると、ケイはゆっくりと深呼吸をした。

 7年、しつこい様だが、これだけの時間をかけてやっと戻ってきた世界に対して、達成感と喜び、そして少しの興奮がケイを満たしていた。


「スゥーーーーーー……よし!!」


 ケイは頬をパチンッと軽く叩き、気合を入れてからここから1番近い村へと歩き始めた。





 出発してから3日後、事件が起こった。


 それまでのケイの旅は順調に進んでおり、あと2日後くらいには村に着く予定だった。

 食料は森にいた鹿の魔物を狩って、水は川を見つけたおかげで困らず、野宿をする際はエリスの領域から取ってきた毛布を使い、火は魔法で起こしてと、実質サバイバル状態なのが嘘かのように、本来よりも圧倒的に快適に過ごしていた。


 今更だが、ケイがエリスの領域から持ってきた物は、水筒、ナイフ、毛布、包帯、フード付きのローブ、到着予定の国で使われている硬貨を必要最低限、そしてそれらを入れるためのカバン、となっている。


 その日は、その水を得た川の付近で野宿し、早く村に到着したかったのと、魔物を警戒していたおかげで熟睡はできなかったので、早朝には出発した。


 そして例の事件が起こったのは、太陽が丁度真上あたりに来る、真昼あたりだった。


 ふと、茂みの奥に何かの気配を感じ、魔物か何に狙われているかと警戒した。しかし、一向にその気配は動かず、何か罠かとも疑ったが、本当に何も起こらない。


 不思議に思って茂みを覗いてみれば、そこにいたのは身長の高い男性だった。

 うつ伏せの状態で倒れていて、見た目は、苔色の髪にボロ服、顔は結構整っていて、何より特徴的だったのは、その左の側頭部から生えた一本の角だった、


(え!?鬼人!?ていうか怪我してんじゃん!)


 ケイは彼の左の脹脛から血が流れていることに気づき、咄嗟に彼に駆け寄った。


「ちょっと大丈夫ですか!?意識はあります?」

「…………」


(意識はないか…にしてもこの出血も結構ヤバいな、うわっよく見れば身体中ボロボロだ…)


 ケイはカバンから包帯を取り出し、鬼の彼の膝らへんに結びつけ、鬱血させた。


(とりあえず出血を待ってから…川の方に戻って今日はもう休むかな)


 ケイは彼の血が止まったのを見てから、彼と一緒に今朝野宿していた川の辺りへと転送魔法を使って移動した。

 川に着くと、早速鬼の彼の傷を水で洗い、もう一度包帯を傷の部分に巻いてから、野宿に使っていた毛布に彼を寝かせた。


(はぁ…どんだ誤算があったもんだけど……)


 チラッと鬼の彼を見た。


「流石にほっとけないよなぁ…」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ