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プロローグ

はじめまして、桐ヶ谷生と申します。投稿不定期なので、気長に待ってくれると嬉しいですm(__)m

「いつまで寝てんだよクソガキっ」

「ガッ」


 鈍い音を立てて腹に痛みが走る。

 髪を引っ張られる感覚の後に、顔に息がかかるのを感じた。


「世間知らずなガキが、よくもまぁ世間様に迷惑かけてくれたなぁ?テメェの命の一つや二つで責任取れると思ってんのか?」


 頭が、回らない……身体中が痛い。

 ここは何処だ…?コイツは誰だ、どうしてこんな所にいる?……だめだ、頭が朦朧としてよく考えられない。


 頭がうまく回らず、俺が一点を見つめている事に気づいた男は「…チッ、薬使いすぎたか」と苛立っていた。


 薬?なんのことだ?

 

 回らない頭で必死に考えていたその時、施錠が外れる音と共に、明るい光が目に入った。

 まだぼやけた目をなんとか凝らすと、光の方向には明るい髪色の男がいる事がわかった。


「ここからは俺が担当する」


 男が書類のようなものを見せると、さっきまで俺を罵っていた奴は、不満げに鼻を鳴らして部屋を出た。


 男は俺の顔を見ると、一瞬だけ悲しそうな顔をした。


「意識はあるか?この指は何本あるか分かるか?」


 男は倒れている俺の顔をの覗き込む様にしゃがむと、目の前で4本指を立てた。

 俺は絞り出すように掠れた声を出した。


「よ、ん……」

「正解だ、意識はちゃんとあるみたいだな」


 男は何処からか椅子を用意し、俺を座らせた。


「悪いが、俺にも時間はないんだ。正直に答えてくれ…お前達の目的は?」


 ()()の目的……






 日差しが少し斜めに傾く空、心地よい静けさの中、ただ子供達のはしゃぐ声だけが響いていた。

 子供達が遊んでいる場所は、長らく子供の遊び場として定着している場所であり、大きな木が一本聳え立っているのが特徴の一つだった。その木も、長らく子供達の遊び場にあるということもあり、木の幹に名前を書き込んだ相手と両思いになれるやら、千年前からずっと立っているなど、多くの子供らしい噂があった。


 そして、そんな木の後ろに隠れ、はしゃいでいる子供達を羨ましそうに眺めている少年、ケイはいた。

 ケイは今年で10になるのだが、ここ2年ほど、同世代の友達複数人と遊ぶ事は無かった。


「あ!ケイ来てたのか!そんな所で見てないで一緒に遊ぼうぜ!」


 そんな彼を見つけた赤髪の少年イアンが、嬉しそうに声を掛けた。

 本来だったら喜んで駆け寄り、一緒に遊ぶ所だが、ケイは足を動かさなかった。


「イアン、ダメだって、アイツに関わるなって母さん達に言われてるじゃん」

「そうだよ、それにずっとこっちを見てるだけのキモいやつとなんか遊びたくないし」

「無視して遊ぼうぜイアン」


 ケイはこうなる事を理解していた。


 事が起きたのは2年前、彼が8歳になった日だった。

 この世界には天職(ジョブ)というものが存在していて、それぞれ8歳になった日に教会に行って、神父からその天職を教えてもらうのだ。

 天職とは全人類が持っているものであり、簡単に言うと最も自分に適している職業だ。

 神父にはそれを調べる特殊な能力、所謂【スキル】と呼ばれる物を持っている。


 では、彼の職業はあまりにも突拍子もない、もしくは不遇なものだったのか。この質問の答えはNOだ。

 この世界ではあらゆる天職に対して、その能力を十分に発揮できる様な職業が数多く存在している上、どんなに不遇な職業であろうと、無視や虐めの対象にはならない。

 では彼の何処が問題か、それは天職が発覚した直後、神父が放った言葉だった。


『こ、この子には…!この子には悪魔がついている!!』


 天職とは先にも言った通り、最も()()()()()。要するに天職を調べるためには、その対象の身体についての情報という物が必ず必要になる。神父はそのスキルによってケイの身体の情報を得て、悪魔が憑いていると言い放ったのだ。


 これによって彼は孤立してしまった。だが、彼はこれが半分嘘だという事を知っていた。

 というのも、悪魔が憑いているのなら、今頃自分は正気を保っていないという事が分かっていたからだ。それに悪魔に取り憑かれていたのなら、何故()()は何もしないのか、違和感でしかない。

 何のために自分を悪魔憑きにしたのかは分かっていなかったが、それでもこんなあからさまな問題点、()()()()()()()()()()()()()。そして、それはケイの周りの人間にも当てはまった。


 周りも気づいていたのだ、ケイは悪魔憑きではない、と。

 しかし、教会がケイに何かしらをしようとしている。なんとたったこれだけの理由で、周りは思考を停止してしまった。それだけ教会は民間に置いて、絶対的な信頼があったからだ。


 教会は悪魔憑きの少年は、いつ暴れるか分からない危険な存在だとし、近づかない様に言ったのだ。


「でも俺仲間外れにすんの嫌だ」


 しかしイアンは、ケイの両親以外で唯一、彼を避けなかった人物だった。


「で、でもあいつ悪魔に取り憑かれてるらしいよ?」

「ん〜、でも俺はケイと遊びたいから、2人で遊んでくるわ!」


 彼の言葉に不満げな声が上がりつつも、実はこのやり取りは初めてじゃなかったので、誰ももう引き止めなかった。


「ごめん、いつも邪魔しちゃって」


 周りとの遊びを中断してまでも、いつも自分を構ってくれるイアンに、ケイは罪悪感を持っていた。


「別に!俺が一緒に遊びたいだけだから、寧ろ俺と遊んでくれてありがとうな!」

「…!う、うん!」


 こうして時を忘れて遊ぶ2人だったが、この時はまだこの先に訪れる不幸なんて、知る由もなかった。

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