2-1
ズリ、ズリリ……ッ。
目の前で沢山の命が消えていく。
激しい拷問の末に朽ちた肉体。
干からび、更に切り刻まれ、すり潰される。
「ふっふふ〜ん」
そんな残虐非道な行為を鼻歌混じりに遂行する女が一人。名はソレイユ・レ・テンタクル。通称、ソル。
金髪蒼眼の美しい見た目とは裏腹に、恐ろしい性格をした女だ。
「もう少しでできますからねぇ、ルナ様」
「ひ、ひぃ〜ぃ……」
粉々になるまで小鉢ですり潰された様々な気色の悪い生物に、紫色の葉ときのみを加え更にずりずり。
完全に粉末にした後、彼女は満足げに唸り私に小鉢を差し出してきた。
「さぁ、出来ました。どぞどぞ、グィっと」
「……幽閉されていたとはいえ、私も貴族育ちなのよ、ソレイユ」
「存じ上げておりますよ!」
「そんな私にこれを……飲め、と?」
「ソルの田舎ではこーやってお薬を作ってたんですよ?」
うん、薬の作り方は知っている。
けど、言いたいのはそういう事じゃない。
「まさか飲みたくないと? 駄目ですよ、ここにはお抱えの回復術師なんていないんですからね!」
「贅沢を望んでいるわけじゃないわ……」
「でしたら、身体を治す為にも」
「六割は貴女に痛めつけられてこうなったのですが……まぁ、それに関してはこれ以上咎めるつもりはありません」
「死のうとするルナ様が悪いんですよ?」
「うッ……」
死、この単語が出た瞬間に部屋の空気が鉛のように重たくなる。
底知れぬ威圧感、ソレイユの眼光が強烈になり、私の自由を奪うのだ。
「もう、死のうとしたり、しませんよね?」
にっこりと微笑み掛ける姿は正に天使。
だが、私にとっては悪魔そのもの。
「……どの道、私の死は皆の憎しみを集めてこそ意味があるわ。こんな辺境の小屋で自害などありえない」
「なら、安心しました!」
スッと重さが抜けていく。
……やはり、ソレイユは得体の知れない女だ。彼女がいるうちは、逆らわない方がいいだろう。
せめて、死に場所くらいは自分で選びたいから。でも──
「ソレイユの気持ちはよーーく理解したわ。けれど、納得いかないことがあるの」
「なんです? ソルはルナ様の質問になら、なんだってお答えしますよ!」
「では……何故、わざわざ私の目の前で、しかも見せつけるように、尚且つ私がこういう物を見慣れていないと知っていながら、薬を作ったの?」
「……へ?」