第二章第3話 ご褒美断魔装備ガチャ(3)
2021/02/04 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
2021/03/20 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
さあ、次の百連で盾を引いて断魔装備をコンプしてやる!
そう思っていた時期が俺にもあったな。うん。懐かしい記憶だ。
俺はふぅっと一息つくとコップに入れた水を飲んだ。
「ちょとー! 何そんなところでやさぐれてるんだーっ!」
フラウが俺の顔の前にやってきては俺の鼻を両手で挟んで押しつぶしてくる。
「いや、ちょっとこの爆死が辛いなって……」
そう。ステータス強化を二つ引いて気分が良くなった俺は追加の百連を引いたのだ。
その結果、出た☆5はどう考えても使わないであろう【杖術】だけだ。
出ないよりはマシだろうと思うかもしれないが、【杖術】だけは違う。この【杖術】というスキルは魔術師なんかが護身用に覚えるものなので、【剣術】を持っている俺が使う事はまずないのだ。
そして☆4もステータス強化は無く希少品は『治癒のポーション(低)』が一つ出ただけだった。
もちろん☆4は他にも出たぞ? 鉄の鎧の下半身とかな。そう。今日三つ目の下半身だ。
こんなに鉄の鎧の下半身ばかり貰ってどうしろって言うんだ。
「あーあ。もう今日は撤退するかなぁ……」
「ディーノ……」
フラウはそう言ってしばらくの間押し黙ってしまった。それからフラウは絞り出すような声でこう言った。
「うん。そうだね。今日はディーノ、調子悪いし、しょうがないよね」
俯いているその表情は確認できないが、フラウのその声があまりにも寂しそうで、そしてその期待に応えられていない俺が不甲斐なさ過ぎて。
クソッ! 俺はっ!
フラウのおかげでこうしてトーニャちゃんに『蒼銀の牙』の皆さんやセリアさんといった素晴らしい人たちと出会うことができ、エレナやフリオの呪縛から解放されたのだ。
そんなフラウをこんな気持ちにさせてしまうなんて!
「いや、まだだ。見てろ! 俺が絶対に神引きして、断魔の盾を引いてやるよ」
「え? でも今日のディーノは……」
まだそんなことを言うのか。ここでこれまでずっと応援してくれたフラウを悲しませるなんて、男がすたるってもんだ。
よし!
俺は意を決してフラウにお願いをする。
「フラウ。頼む。応援してくれ! フラウの応援があればきっと神引きできると思うんだ」
「ディーノ……。もう、ディーノったらホントに。あたしがいないとダメなんだからっ!」
そう言って顔をあげたフラウの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
それを見た俺は決意する。
そう、この涙を神引きした喜びの涙に変えるんだ。決して失望の涙に変えることなんてことは許されない。
なぁに、まだまだ弾はたくさんあるんだ。断魔の盾が出るまで一生ガチャしてやる。
「よし! いくぞっ!」
俺がガチャの画面を開くとフラウがまた元気よく応援してくれる。
「よーしっ! ディーノ! がんばれっ! ふれー、ふれー、ディーノっ!」
「おう!」
俺はフラウの応援を背に気持ちよくガチャを引くボタンをタップする。
妖精たちが運んできた宝箱は……お! 銀箱が一つある!
「来い! 変われ! 金! 金!」
だが俺の気合と妖精の送るパワーも空しく箱は変化しなかった。
そして銀箱の蓋が開き中身が飛び出してくる。
『☆4 AGI強化』
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「やったぁ!」
俺が雄たけびを上げ、そしてフラウが嬉しそうな笑顔を浮かべてくれる。
「おめでとー。ディーノっ」
そう言ってフラウはふわりと俺の顔のそばまでやってきた。そしてちゅっという音と共に俺の左の頬に暖かくて柔らかい感触が訪れる。
「え? フ、フラウ!?」
「えへへっ。迷宮でちゅーしてくれたから、お返しっ。妖精からのお祝いのちゅーだよっ!」
フラウはそういってもじもじして顔を赤らめている。
「あ、ああ。ありがとう」
「うんっ」
俺が困惑しつつもお礼を言うとフラウはぱあっと花が咲いたかのような笑顔を浮かべた。
「よ、よし。次! 見てろ! また神引きしてやるよ」
「うんっ! がんばって!」
少し気恥ずかしさを覚えた俺はそれから逃げるようにガチャを引くボタンをタップする。
また銀箱が一つだ!
「よし! 今度こそ! 変われ!」
だが今回も変化してくれない。
そして出てきたのは『☆4 VIT強化』だった。
「よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉし! よぉし! よし! よし!」
「すっごーい! 二回連続の当たりだねっ!」
「ああ。フラウのおかげだ。このまま盾、引いてやる!」
「うんっ!」
そこから三百四十連目までは爆死が続いたが俺のメンタルはこの程度では折れない。この程度の事はよくあることだし、フラウという精神的支柱を得た俺がこのガチャに勝利することは決まっているのだ。
俺は次の十連を引いていく。妖精たちが宝箱をいつも通りに運んできた。
そしてその中には久しぶりの金箱が最初から入っている。
「お! いいぞ! 来い! 盾! 盾来い! 盾! 盾! 盾ェーー!」
ドヤ顔サムズアップする妖精を横目に金箱がゆっくりと開き、そして中から飛び出してきたのは――。
『☆5 水属性魔法』
「ああっ! 違っ! でもこれ当たりだ! よーしっ! よし! よし! よし!」
「やったねっ! これでレベル 2 だねっ!」
そう。二つ目が貰えたという事はレベルアップしたのだ。これでコップに水を満たすだけでなく、ルイシーナさんのように魔法が使えるようになるのではないだろうか?
今度ルイシーナさんと一緒に冒険することがあったら色々と教えてもらおう。
「やっぱりフラウの応援があると違うな」
「えへへっ。ありがとっ!」
そう言ってフラウは嬉しそうにくるくると飛び回る。
そんなフラウを見ているとこちらまで元気になってくる。
「よし!」
俺は残りのチケットを使って四百連目まで引き、『☆4 治癒のポーション(低)』を一つ手に入れたのだった。




