第53話 ☆3一点狙い
2021/01/25 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
2021/01/26 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
ガチャの画面の中ではいつものように妖精が宝箱をぶら下げて飛んできている。
木箱、木箱、銀箱、銅箱、銀箱、銅箱、木箱、木箱、木箱、木箱だ。
おお、銀箱二つとは調子がいい!
っと、違った。今回は☆3の堅パンが狙いなんだから銀箱と金箱はハズレなのだ。
あ、いや。金箱は出ればそれはそれでもちろん嬉しいわけだが。
まずは最初の箱を見てみる。妖精が必死にパワーを送ってくれたにもかかわらず残念ながら最初の木箱は銅箱には変化してくれなかった。
そして箱の中から出てきたのは『馬の糞』だった。
「おい、ディーノ。お前、どんだけウンコが好きなんだ?」
「そんなこと俺に言わないでくださいよ。出したくて出してるんじゃないんですから」
そう、どう考えてもこれは冤罪だ。このガチャの運営が馬の糞好きなだけであって俺の趣味趣向とは一切関係無い。
さて。それから次の木箱も変化せず、今度は『小さな布切れ』が出てきた。
「これもギルドでたくさん見たわねン」
「こんなもんを買うのに 300 近くもかかるのか」
出てきた布切れとトーニャちゃんのその反応を見たリカルドさんはうんざりした表情でそう呟いた。
「ディーノ様。このギフトは危険ですわ。あまりお使いにならない方が……」
「そうですね。でも自分の収入に余裕がある時だけしか使っていないですから安心してください」
「本当ですわね? 絶対に借金などしてはいけませんわよ?」
メラニアさんがそう言いながらずいずいと俺に迫ってきた。美人で巨乳なこの人に迫ってこられると俺としては目のやり場に困ってしまうのだが……。
それでも俺は何とか返事をする。
「はい。借金だけは絶対しません」
「神に誓えますか?」
「はい。大丈夫です。神様に誓って借金してガチャを引いたりなんかしません」
「わかりました」
「はは。今の状況は借金しているようなものだけどね」
メラニアさんは納得してくれたが、今度がカリストさんの冷静なツッコミが胸にぐさりと突き刺さる。
「ああ、いや。非難しているんじゃないよ。今の状況を考えると仕方ないと思うけど、きちんと考えてやらないといつか失敗してしまうな、と思っただけだよ」
「……はい」
どうにもやりづらい。やはりガチャを引いている時は他人がいない方がやりやすいな。
そう思いながら開けた次の銀箱からは『VIT強化』が出てきた。
「おおっ!」
『おめでとー! 当たりだねっ!』
「お? どうした? パンが買えたのか?」
そう言ってリカルドさんが近寄ってきたが何も出ていない状況をみて怪訝そうな顔をしている。
「いえ、そうではなく本来の当たりな奴が出たんです。VIT のステータスが 1 アップしたんです」
「あ? ステータスがアップするのか? それはすげぇな」
「お金でステータスが買えるというのはすごいね。もしかするとディーノ君のそのギフトはハズレなんかじゃなくて、可能性だけで言えば他のどんなギフトよりも大当たりなんじゃないかな?」
「そうかもしれませんが、お金がかかりすぎですわ」
「もう少し安ければ使えそうよね」
ガチャに対する反応でみんなの性格がよく分かる。男性陣は可能性を重視していてメラニアさんはセリアさんのように破産の心配をしてくれている。ルイシーナさんは中立な感じだ。
さて、次の銅箱から『石の矢×10』が出てきた。正直使えない。
そして次は銀箱だ。
よし! 来い!
心の中でそう念じているとそれが通じたのか、なんと銀箱は金箱に変化した。
そして中から飛び出してきたのは『☆5 弓術』だった。
「うわぁぁぁぁぁっ!」
『やったぁ! ディーノ、神引きだよっ!』
「おい! 何だ!?」
「ディーノ君?」
「ディーノ様!? どうなさったのですか? 今すぐスキルを中断して――」
「あ、すみません。大丈夫です」
しまった。あまりの事に驚いて変な叫び声をあげてしまった。
それから神様仏様運営様。矢が使えないなんて言ってすみませんでした。
「それで、何が出たのかしらン?」
「実は、【弓術】のスキルが出ました」
「「「「「はぁっ!?」」」」」
全員が同時に驚きの声を上げた。
「ちょっと、スキルまで買えるって言うのン? それじゃあディーノちゃんが【剣術】や【体術】を覚えていたのってもしかして――」
「はい。ガチャで出てきたからです」
「……そう。わかったわン。続けてちょうだい」
「はい」
神妙な顔つきになったトーニャちゃんに促されて残りの箱を開けていくが、さすがにこれだけ神引きした後には特に何も出ずに最初の十連は終了したのだった。
「じゃあ、次こそ、行きます!」
俺は次の十連を引いていく。木箱、金箱、木箱、木箱、木箱、木箱、木箱、木箱、木箱、木箱だ。
ん? 金箱?
「おおっ! 最初から金箱!」
『すごーい! ディーノ神引きだねっ!』
久しぶりに最初から金箱の演出俺のテンションは一気に最高潮に達する。金箱を祭壇に置いてドヤ顔をしてサムズアップしているこの妖精が可愛くして仕方がない。
こうなったら断魔の盾を神引きしてコンプするしかない!
「来い! 来いっ!」
周りにみんながいるのも忘れて俺は大声で叫ぶ。
そして金箱が開いて中身が飛び出してきた。
『☆5 断魔の鎧(上半身)』
「あーっ! 被った! くそっ!」
『でも凸がついたよっ!』
そして次の瞬間俺の断魔の鎧の上半身部分が眩い光を放った。
「きゃっ」
光を間近で見てしまったメラニアさんが悲鳴を上げて顔を伏せる。
「今のは何かしらン?」
「断魔の鎧の上半身が被りまして、それで強化されたみたいです」
「……そう。わかったわン」
そして俺は次の箱を開いた。すると中からは『腐った肉』が飛び出してきた。
「お? 食料か? って、おい! これ腐ってるじゃねぇか」
「すみません。それもハズレのようでして……」
「ああ、これもギルドでよく見たわねン」
そして残りのも変化せず、全て☆2のハズレだった。
その後の三十連目と四十連目では爆死してしまった俺だが、めげずに五十連目を引いていく。銅箱、銅箱、銅箱、銀箱、木箱、木箱、木箱、木箱、木箱、銀箱だ。
最初の三つの銅箱からは残念ながら『堅パン』も『干し肉』も出なかった。
そして次の銀箱を開く。
『☆4 VIT強化』
「あ、また出た」
『やったね! 今日のディーノの引きは神がかってるね』
「そう、だな」
「なぁに? またステータスかしらン?」
「はい。VIT が上がりました」
「そう。良かったわねン」
俺は続いて箱を開けていく。『ただの石ころ』『小さな布切れ』『動物の骨』とハズレが続いたが、その次の木箱が銅箱に変化した。
「来い!」
そんな俺の願いが届いたのか、『堅パン』が出てきた。
「おおお! やっと出た!」
『おめでとー! やったね!』
「おお、やったな」
「うん、ディーノ君。お疲れ様」
みんなそうは言ってくれているもののその表情は微妙だ。
分かっている。分かっているさ。どう考えても高い買い物になっていることくらい。
俺はその視線を振り払って残りの箱を開ける。すると木箱からは『小さな布切れ』が、最後の銀箱からは『鉄の盾』が出てきた。
その後、百七十連まで引き終わった。ここまでで堅パンは六つ、干し肉は五つ出ている。また、『☆4 AGI強化』も一つ引けているのでかなり順調と言えるだろう。
俺はさらなる食料を狙ってガチャを百八十連目を引いていく。銅箱二つに銀箱が一つ、そして残りは木箱だった。
銅箱二つからは食料は出ず、木箱もそのまま変化しなかったのだが、なんと銀箱は金箱に変化したのだ。
「お! まさかの三つ目の☆5!」
そして箱から飛び出してきたのは【風属性魔法】だった。
「あ、やった! 魔法!」
『おめでとー! 属性魔法、三つ目だね!』
「ありがとう! フラウ!」
「今度は魔法がでたのン?」
「はい」
「そう。すごいわねン」
「魔法まであるのか。ディーノ君のギフトはすごいね」
トーニャちゃんもカリストさんも、それに他の皆さんももうあまり驚かなくなっているようだ。
それから俺は残りの二十連を引き、残念ながら食料も目ぼしいものも出ずに終わってしまったのだった。
────
今回のガチャの結果:
☆5:
弓術
断魔の鎧(上半身)
風属性魔法
☆4:
AGI強化
VIT強化×2
鉄の鎧(上半身)
鉄の鎧(下半身)
鉄の盾
鉄の槍
魔術師の杖
魔術師の帽子
☆3:
テント(小)×3
火打石×3
干し肉×5
堅パン×6
石の矢十本×4
虫よけ草×3
鉄の小鍋×2
銅の剣×3
皮のブーツ×3
皮の鎧(下半身)×4
皮の鎧(上半身)×3
皮の盾×5
皮の水筒×3
皮の袋×2
皮の帽子×3
片刃のナイフ×2
木の食器セット×2
薬草×2
旅人のマント×2
☆2
ただの石ころ×18
枯れ葉×10
糸×13
小さな布切れ×22
薪×12
動物の骨×10
馬の糞×10
皮の紐×14
腐った肉×7
藁しべ×12
二百連でこれは神引きにもほどがありますね。なお前に引き当てたショートボウを持ってきていないので弓術は……。




