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ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです  作者: 一色孝太郎
第一章

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第33話 魅惑の拳

2021/03/30 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

「うるせぇよ。ハズレ野郎」


 そう言ったフリオは俺に黒いオーラの槍を打ち込んできた。あまりの速さに俺は反応すらできずにまともにくらってしまう。


 強烈な衝撃と共に俺は吹き飛ばされ、そのままセリアさんが先ほどまで仕事をしていたカウンターに思い切り叩きつけられる。


「あ、がっ……」

『ディーノっ! ディーノっ! しっかりして』


 フラウが必死に俺の名前を呼んでいるが、衝撃で息ができなくなった俺はそのまま尻もちをついて動けなくなってしまった。


 だが、それだけだ。


 普通に考えればあの黒い槍をくらった時点で命の心配をしなければいけないはずなのだろうが、鎧が受け止めてくれたおかげで俺は黒い槍に体を貫かれずに済んだのだ。


 やはりガチャを引いておいて良かった。


 俺がまだこうして生きているのはガチャのおかげで、そしてガチャを引く事を勧めてくれたフラウのおかげでもあると思う。


「何だ? 妙に硬い鎧だな。まあいい。ならば顔面を撃ち抜いてやろう」


 フリオがやや不機嫌そうな顔でそんなことを呟いたちょうどその時だった。


 何かが目にも止まらぬ速さで駆け抜けるとフリオが大きく吹っ飛ぶとそのまま壁に激突した。そして壁がその衝撃に耐えられずに破壊され、ギルドの外と中が繋がってしまう。


「あらン。おいたはダメよン。フリオちゃん」

「トーニャちゃん!」

「あらディーノちゃん。無事だったのねン。嬉しいわぁ」


 トーニャちゃんはそう言うとくねくねと妙なポーズを取った。


「あらン。カリストちゃんがここまでやられるなんて、よっぽどなのねン」


 そう言ったトーニャちゃんはカリストさんを優しく抱き上げるとメラニアさんのところに運んだ。そしてメラニアさんは小さく頷くと必死に治癒魔法をかける。


「こんの、オカマが! キモイんだよ!」


 瓦礫の山の中から立ち上がったフリオはトーニャちゃんに怒りの視線を向けながらそんな暴言を吐いた。するとそれを聞いたトーニャちゃんの雰囲気が一気に変わった。


「誰が……キモイですって?」

「お前に決まってるだろうが! このオカマ! お前も殺してやるよ!」

「ふふふ。そう。あたしがキモイですって? いいわ。お仕置きしてあげる!」


 トーニャちゃんは再び距離を一瞬のうちに詰めると拳を放つ。それに対するフリオは黒いオーラでその拳を受け止めた。


 ドスン、ドスンとトーニャちゃんの一撃を受け止めるごとに地面が、そして冒険者ギルドの建物が大きく揺れる。


 トーニャちゃんが一方的に攻めたて、フリオがそれを受け止めているように見えたが突然フリオの纏うオーラが爆発した。その爆発を近くでまともにくらったトーニャちゃんは吹き飛ばされたものの着地することには成功している。


「はははは。あの時はよくもやってくれたな。この恨み、今ここで! 殺して晴らしてやる!」


 高笑いをしているフリオに対しトーニャちゃんは額に大粒の汗を浮かべており、呼吸も少し荒くなっている。


 まさか、トーニャちゃんですら勝てないのか? Aランクのあの人で勝てないなら一体どうすれば……。


「フリオちゃん。あなた、悪魔に魅入られているわねン?」


 悪魔? 悪魔だって!?


「……悪魔? 何の話だ? これは俺の力! 俺が死の淵で神に与えられた力だ! そうだ! 俺が正義なんだ! 俺を認めない奴らが悪いんだ!」

「……やっぱりそうなのねン。仕方ないわン」


 トーニャちゃんはそう言うと再び戦闘態勢を取る。


「はっ! お前の拳じゃ俺を倒せねぇ。待ってろ! 今ぶっ殺してやる!」


 フリオがそう言うと黒い槍をトーニャちゃんに撃ち込んだ。しかしトーニャちゃんはその槍を紙一重で(かわ)すと一気に距離を詰める。


「フリオちゃん。残念だけどおいたの時間はここまでよン」


 トーニャちゃんの右の拳に光に包まれる。


「なっ! まさか!」

「これがあたしのアーツ、『魅惑の聖拳突き(ラブリー・パンチ)』よン」


 トーニャちゃんはその光る右の拳を空手の正拳突きのようなモーションでフリオに打ち込んだ。


 その拳はフリオの黒いオーラの守りを砕き、そしてその拳はトーニャちゃんよりもかなり背の低いフリオの顔面を完璧に捉えた。


 命中と同時に眩い光が放たれ、そしてフリオはそのまま大きく吹き飛ぶと、先ほどできた瓦礫の山にぶつかってようやく停止した。


「がっ、はっ」


 フリオは大量の血を吐いた。いくらなんでもああなってしまってはもう動けないだろう。


「さあ、フリオちゃん。覚悟なさい。残念だけど、悪魔に魅入られた者はもう元に戻すことはできないの。自業自得ねン」


 そしてトーニャちゃんはつかつかとフリオのもとへと歩いて行く。


「ぐ、く、そ……。この、変態、め……」


 フリオはそう悪態をつくが反撃する力が残っていないようだ。


「さよならねン。魂は悪魔に奪われて残らないでしょうけれど、せめて反省だけはするといいわン」


 トーニャちゃんの右の拳に再び光が宿る。


「あああああああ!」


 フリオは気が触れたかのように叫び声を上げると跳躍して距離を取る。


 あいつ! まだあんな力が!


「無駄よン」


 トーニャちゃんは先ほどのように一気に距離を詰めるがフリオは上にジャンプすると背中から巨大な黒い羽を出現させてそのまま宙に浮かんだ。


「くそっ。覚えてろよ! この変態も! ギルドも! ハズレ野郎も! そうだ。それに俺を認めなかったエレナも! 全員仲良く殺してやる!」


 そう捨て台詞を吐くとそのまま天井に黒い弾をぶつけ破壊した。


「うわっ」


 落下してくる瓦礫に俺は思わず声を上げるとカウンターの下へと慌てて避難した。


 そして瓦礫の落下が収まりカウンターの下から顔を出すと、そこには既にフリオの姿はなかった。


「逃がしちゃったわねン。まあいいわ。メラニアちゃん。他の怪我人の治療も頼むわよン」

「はい。お任せください」


 こうしてサバンテを震撼(しんかん)させたフリオによる襲撃事件はひとまず幕を下ろしたのだった。

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