第30話 北の森の残党狩り
2021/01/03 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
「おはようございます。ディーノさん。鎧を新調されたんですね」
「セリアさん。おはようございます。おかげさまで新しい鎧を手に入れられました」
「ふふ。とても似合ってらっしゃいますよ」
「ありがとうございます」
断魔の鎧の上下をセットで手に入れた俺は、早速それを着て冒険者ギルドへとやってきた。
この断魔の鎧、恐ろしいほど体にピッタリとフィットしていてもう他の鎧を着る気など全く起きないほど素晴らしい。さすがはピックアップガチャで出る☆5装備だ。
ここまで素晴らしいのなら早くお金をためてフルコンプしたい。
そう思った俺は居てもたってもいられずに冒険者ギルドにやってきたというわけだ。
「それでですね。早速討伐系の依頼を受けたいのですが、良い依頼はありませんか?」
「討伐系ですか。そうですね。今はまだ北の森はゴブリンの件が片付いていないために領主様が立ち入りを禁止しています。ですので実は今はこの町で受けられる討伐系の依頼は無いのです。他の町でしたらできるのですがディーノさんはまだEランクですので……」
セリアさんは申し訳なさそうな表情でそう事情を説明してくれた。
「そうですか。それでは仕方ありませんね」
俺がセリアさんにお礼を言って立ち去ろうとしたところにカリストさんがやってきた。
「やあ、ディーノ君。鎧を新調したんだね」
「はい。魔石のお金が入りましたから」
「あれを全部鎧に使ったのかい? それは感心だね。新人は大抵は使い切ってしまうか身の丈に合わない武器を買ったりするものだけど、身を守るための鎧に回す子は中々いないからね。おや? しかもよく見るとものすごい業物じゃないか。一体どこのお店で買ったんだい?」
「え? ええと、その……」
「ああ、いいよ。無理に言わなくても。毒消しポーションを持っていたくらいだし、ちょっとした秘密の伝手があるという事なんだろう。そういうのは冒険者にとってはアドバンテージにもなるからね。無理に聞き出そうとする奴がいたらそいつとの付き合い方は考えた方が良いよ」
「ありがとうございます」
カリストさんは本当に良い人だ。何から何までこうして教えてくれるのだから俺はカリストさんには足を向けて寝られない。
「それで、依頼が無くて困っているのかな?」
「はい。せっかくなので近場で討伐依頼を受けようと思ったんですが」
「なるほど。ディーノ君はまだEランクだったね」
カリストさんはそう言ってあごに手を当てて何かを考えるような仕草をしている。
「じゃあ、せっかくだから僕たちと一緒に北の森に行こうか。Cランク以上のパーティーは立ち入りを許されていてね。逃げたゴブリンの残党狩りを依頼されているんだ」
「良いんですか?」
「もちろん。僕たちは単に残党を狩るだけだし、君の実力は知っているから無茶はさせない。良いよね? セリアちゃん」
「カリストさんがよろしいのでしたら」
「じゃあ、決まりだね」
「ありがとうございます!」
こうして俺はカリストさんたち『蒼銀の牙』の皆さんと再び北の森へと向かう事になったのだった。
****
「あれ? ディーノ君、この間より少し強くなっていないかい?」
北の森でゴブリンを斬り捨てた俺にカリストさんがそう尋ねてきた。
「本当ですか?」
「うん。何だか動きが機敏になっているし一撃一撃のパワーも増しているように見えるよ」
「ありがとうございます」
やはりカリストさんの目は確かだ。
この間のガチャで STR と AGI が上がっているためパワーとスピードにしっかりと影響しているのだと思う。
「この短い間に何があったのかはわからないけど、この調子でしっかり鍛えればすぐにでもDランクに上がれるんじゃないかな」
「はい。がんばります」
そんな会話をしていると、森の奥の方で大きな爆発音がした。
「なっ!?」
俺は慌てて地面に伏せると爆発音のした方へと顔を向ける。しかしそんな俺にカリストさんは落ち着いた様子で声をかけてきた。
「あれは軍がやったんだろうね。昨日ブラッドレックスの魔石を買っていったから、多分それを使って結界を破壊したんだと思うよ」
「結界?」
「ああ、そう言えばちゃんと説明していなかったね。何でも、軍の話だとゴブリンは結界を使って中にいる人間を無力化したらしいんだ。ゴブリンがそんな魔法を使うなんておかしいんだけど、軍が決めたことだからね。僕たちはそれが成功することを願うだけさ」
カリストさんはそう言って肩をすくめた。
「そういえば、君をいつも睨んでいた彼は傭兵として参加して戻ってきていないそうだね」
「ああ、フリオのことですか?」
「たしかそんな名前だったかな?」
「はい。俺はあいつがどうなろうが別にどうでもいいですよ。散々迷惑かけられましたから」
「そうか。君の立場だとそうかもしれないね。ただ、冒険者ギルドとしては別に彼に限らず将来有望な若者がこうして行方不明になってしまう事に頭を痛めているんだ。彼の年齢ならまだやり直せるからね」
俺としてはあいつが反省などするわけがないと思うが、冒険者ギルドとしてはそうだというのはわからない話ではない。
だからこそFランクは町の外に出ることが許されず、そして昇格試験の受験資格も真面目にしっかり働いていたかどうかだったのだろう。
「俺はあいつが反省なんてするわけがないと思いますけど……」
「そうかもしれないね。ただ僕にもああいうのは身に覚えがあるからね。余計に気になるんだ」
「え? カリストさんがですか?」
「別に彼のように望まないギフトを貰った人を攻撃していたわけじゃないよ? ただ、まあ、有り体に言えば調子に乗っていたんだよ。僕の場合はアントニオさんに性根を叩き直してもらってね。だからああいう子でもきっと自分を見つめ直すきっかけさえあれば立ち直れると思っているんだ。そうなる前に死んでしまう子の方が圧倒的に多いのだけれどね」
そう言ったカリストさんはそう寂しそうな表情を浮かべると遠い目をしたのだった。
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