7話「のろいが効かない」
↓コンテ
https://www.pixiv.net/artworks/85168438
(擬音・吹き出し外文字)
「セリフ」
{人物モノローグ}
<ナレーション・モノローグ・解説・歌>
■7話「のろいが効かない」
●1
■
タイトル。
昼休みの屋上全景。
建て屋の上に登って給水塔の土台の上に腰掛けている。
マキミキ、チョコの母が作った弁当箱を開けて中を見て嬉しそうに。
マキミキ「うお、チョコのおばさんの弁当久しぶり!」
チョコ「大盛りにしたって」
■
並んで座っているマキミキとチョコ。チョコも弁当を食べようとしながらマキミキに。
チョコ「弁当渡すのに、なんで屋上でこんなコソコソ…」
■
マキミキ「バーカ!」
マキミキ突然の罵倒。
チョコ「えっ」
いきなりの罵倒にビクッと。
■
引き。一言罵っておきながらサバサバしてるマキミキ。パクパクと弁当食べながら。
マキミキ「他人の目があるところでお前から弁当受け取ってたら、変な誤解されるじゃんか」
チョコ「えっ?」
と急に赤くなって。
●2
■
チョコ{……考えたことなかった}
と弁当に目を落して赤くなりつつ愕然と。
■
チョコ{……こうやって一緒に食ってるとこを誰かに見られるほうが、誤解されるんじゃないかなあ?}
幸せそうに弁当を食べているマキミキを見るチョコ。
時間経過。
■
チョコ「……母ちゃんが、晩飯もウチに食いに来い、って」
チョコ「お前んちのおやじさんから、時々様子見てほしいって手紙で頼まれたみたいでさ」
食べ終わった弁当箱。
マキミキ「んーー……」
マキミキ「なんかあんまり甘えちゃ悪いし」
■
並んで食後の二人。
マキミキ「……おばさんにお弁当箱洗って返すって言っといて」
とナプキンで弁当箱を包む。
■
チョコ「あんまり帰ってきてないんだろ?」
チョコ「直登兄ちゃん」
その名前を聞いて溺愛する兄を思い出すマキミキ。寂しい心に刺さる。
■
マキミキ「……しょうがないよ。お兄、新しい彼女できたばっかだから…」
チョコ「そ、そうなんだ…」
ちょっと気遣うチョコ。
●3
■
マキミキ「…今度は年上みたいでさ」
片思いの相手に恋人が出来たことを語るように。
チョコ「……」
■
チョコ「…な、直登兄ちゃんかっこいいもんなあ」
マキミキ「……まーねー」
無理に空気を明るくしようと笑う二人。
■
マキミキ「お兄はあたしよりハーモニカ上手いし、ギターだって」
と誇らしげに。
ハーモニカをポケットから出そうと探る。
■
チョコ「うん、俺がバンドやりたいって思ったのは直登兄ちゃんに憧れてたからだからな」
うんうん、と頷く。
■
マキミキ「カッコいいもんね、お兄」
と、思い出したように。ハーモニカに口をつける。
■
(ぷゥーわぷぱぷう~ゥー↓)
チョコ「ハーモニカも面白そうだな」
マキミキを見るチョコ。
■
チョコ「ミキってハーモニカ何本も持ってんの?」
マキミキ「ん? そうだよ」
とチョコを見る。
●4
■
マキミキ「単音10穴(ルビ:テンホールズ)ハーモニカは曲のキーによって使い分けるからね」
とポケットから引っ張り出す。
マキミキ「これがCで」
■
マキミキ「…Dでしょ?」
マキミキ「Gっと、A」
マキミキ「残りはカバンの中だけど」
マキミキ「良く使うのはこの辺かな」
とマキミキのふとももの上に並ぶハーモニカを指差して。
チョコ「曲のキーがCならCのハーモニカなの?」
■
マキミキ「うんと」
マキミキ「ブルーズっぽく演奏するなら曲の4つ上のキーのハーモニカを使うと合うんだよ」
指折り数えるマキミキ。
チョコ「え、なんで?」
■
マキミキ「なんでって訊かれても理屈はよくわかんないけど、そういうもんなの!」
チョコ{インチョーに訊こうっと……}
チョコ。
■
マキミキ「やってみる?」
と差し出すマキミキ。かわいく。
チョコ「え、いいの?」
■
と手渡されるハーモニカ。
チョコ{……あ}
●5
■
ハーモニカを見つめるチョコ。
(ごくり)
チョコ{間接キス}
チョコ{いいのかな……?}
■
マキミキ「チョコ、お前いま間接キスとか思ったろ?」
ジッと見透かすマキミキ。
(ぎくっ)
チョコ「うっ」
チョコの後頭。
■
マキミキ「ばーか!」
マキミキ「ハーモニカプレイヤーはそういうのいちいち気にしないの!」
マキミキ「セッションでみんなで一本のハーモニカ回して吹いたりとかすんだぞ」
チョコ「ええーっ?」
とマキミキとチョコ。
■
マキミキ「変なこと考えてないで音出してみなよ」
マキミキ「左端の1番の穴を吹くとド、吸うとレ、2番の穴を吹くとミ、って順番に吹いて吸って音が変わる」
初夏の空。
■
チョコ{吹いて吸って吹いて吸って…}
(ド~ レ~ ミ~ ゾ~…)
ハーモニカを吹くチョコ。
■
チョコ「あれ?」
(ゾ、ゾ~)
ハーモニカに途惑うチョコの後姿。
チョコ「なんか、ファが出ない…し、音が出にくい…」
■
マキミキ「出ませんよねー?」
(にやにや)
マキミキ「それは別に壊れてるんじゃなくてそういうもんなんです」
イタズラっぽく笑っているマキミキ。
●6
■
チョコ「?」
マキミキ「ちなみに3番の穴を吸ったらラが出るはずですが出ませーん」
(シ~)
ハーモニカを吸うチョコ。
■
ハーモニカを見つめるチョコ。
チョコ「あ、ほんとだ? 音が足りないじゃん!?」
マキミキ「音を曲げて下げればいいんだよ」
■
チョコ「曲げる?」
マキミキ「貸してみ」
ふたり。手を出すマキミキ。
■
ハーモニカを吸うマキミキ。
(ファ~~!)
チョコ「あっ」
■
チョコにハーモニカがひょいと渡される
マキミキ「曲がったでしょ? これがハーモニカの「ベンド」」
■
マキミキ「チョーキングと同じで、口の中の操作で音を曲げてピッチを上げたり下げたりするの」
マキミキ「2番とか3番の吸音はベンドして一音下げないと音階にならないようになってんの」
ハーモニカ。
■
チョコ「なんで?」
マキミキ「知らない」
二人。
●7
■
チョコ{…インチョーに訊こう}
ハーモニカを見つめるチョコ。
マキミキ「でもベンドするとブルーズっぽい音になるでしょ?」
マキミキ「ハーモニカは「吹く」楽器じゃなくて、主に「吸う」楽器なんだよ」
■
チョコ「えーと…、じゃあどうやってベンドするの?」
マキミキ「舌を使うんだよ、舌」
マキミキ、舌をベロっと出して。
■
マキミキ「ハーモニカの操作は舌使いだから」
マキミキの口元。エロチックに突き出す舌。
■
マキミキ「ちゃんと吸って音出してみろ」
(ぷー…ぷぅ~)
チョコ「ん、んん…」
マキミキ「ほらもっと舌使えよ」
(ぼっ…ブォ…)
音だけの捨てゴマ。
■
マキミキ「不器用だなあ。こうすんだよ」
マキミキ「こう!」
と突き出した唇から舌をストローのようにして出して見せる。
■
チョコ「……」
目を逸らすチョコ。
■
マキミキ「あ」
ハッとするマキミキ。
●8
■
マキミキ「……お前、なんかやらしい想像してるだろ?」
ニヤッとする。
■
チョコ「いや、うん、なんか…」
マキミキ「うん?」
引き。チョコの顔を覗き込むマキミキ。
■
チョコ「…エロい」
かわいく照れながらマキミキを見る。
■
二人の引き。マキミキが可笑しそうに肩をすくめて笑いながらチョコににじり寄るマキミキ。
マキミキ「……ふふ」
■
マキミキ「ベンド上手くなるとキスとかも上手くなるんだよ」
と誘惑するような表情。色っぽい。
チョコ「え?」
●9
■
チョコ「……まじ?」
ニヤケる。
■
チョコ「……」
マキミキ「試してみる?」
欲情したような目でチョコを挑発して顔を近づける。
■
マキミキ「……」
キス寸前の色っぽい顔。
■
チョコ「へへ…」
(ごくり)
●10
■
チョコ「……もうっ、そうやってからかうの、よせよ」
と顔を逸らす。
■
マキミキ「!」
カッとなる。
■
(ごちん!)
と頭突き。
●11
■
チョコ「…っつー!」
よろけるチョコ。
マキミキ「じょっ、冗談に決まってんだろ!」
立ち上がって真っ赤になって怒鳴る。
■
チョコ「わかってるよ! なんで頭突きすんだよう!?」
ぶつけた頭を押さえて半泣きで。
マキミキ「うるさいっ」
■
マキミキ「もういいから聴いてろ」
マキミキ「こうやって舌使うんだよっ」
とプイっとハーモニカを取り出す。
■
(たんたんたんたん)
と足踏みして早くリズムを取る。
■
マキミキ、猛然と吹き始める。
(ぱぱぱぱーうぱうぱうっ)
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=Vx606E2OzPE
●12
■
(ぱーぅぱうぱぅぱっぱっ ぱっぱっぱ)
(ぷぁららぱらぱうぱぅぱぱっ ぱーうぱらららぱぅぱぅぱーぱらら)
(ぱーぱ ぱららら ぱぅぱぱぁー↓)
身をクネらせながらハーモニカを吹くマキミキ。
■
マキミキ<おまじないをかけても あんたにはちっとも効かない>
睨み付けるようにチョコにキッと顔を向けて歌う。
■
(ぱっぱっぱ)(ぱっぱっぱ)
ハーモニカのソロ演奏のかっこよさに圧倒されるチョコ。
■
マキミキ<おまじないをかけても あんたには効かなそう
モヤモヤして どうしていいのか分かんない>
マキミキの口元。挑発的に唇を舐めながら歌う。
■
(ぱーぱ ぱららら ぱぅぱぱぁー↓)
フェラチオするように背を丸めて吸い上げる。
●13
■
気持ち良さそうに吹き鳴らすマキミキ。
エロチックに。
マキミキ<黒猫の骨も 四葉のクロバーも持ってるよ
でもこのお守りは あんたにはちっとも効かない
ムラムラして どうしていいのか分かんない
ブードゥの魔法陣も描いた ハーブを枕の下にも入れた
だけどこの儀式は あんたにはちっとも効かない
気持ちが伝わらなくて どうしていいのか分かんない
よく効く兎の足も あんたの髪も一本肌身離さず持っている
けど魔法はちっとも あんたに効かないわ
どうしていいのか分かんなくなるほど 胸が痛い
呪いをかけても あんたにはちっとも効かない
呪いをかけても あんたには効かなそう
あんたをムチャクチャにしたいんだけど
どうすればいいのか分かんないの>
(『Got My Mojo Working』誤訳:坂井音太)
GOT MY MO-JO WORKING Words&MUSIC by Foster Preston
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Print rights for Japan administered by YAMAHA MUSIC PUBLISHING.INC.
http://www.youtube.com/watch?v=sP0crYPCHV0&feature=player_embedded
●14
■
チョコ「かっこいい曲だな!」
チョコ「歌と演奏が繋がって一人で掛け合いになってた」
と拍手。
(ぺちぺちぺち)
■
マキミキ「音が鳴ってないところが大事なんだけどね」
マキミキ「…ってお兄が言ってた」
■
チョコ「そうか、俺、正登兄ちゃんに教えてもらえばいいんだ」
■
マキミキ「!」
ムッとする。
■
チョコ「ところで今のどういう内容なの? 英語よくわかんないんだけど」
と無邪気に。
黙って弁当箱を取るマキミキ。表情は見えない。
■
マキミキ「呪いの歌だよっ!」
と吐き捨てながら立ち去る。
チョコ「えっ」
残されて。
あと6ページあれば前にこういうことがわかるシーンとか。
マキミキとチョコは同じ団地の棟。
隣同士くらい?
マキミキの家、母死別、父単身赴任、兄遊び人で不在がち。
マキミキは兄に憧れていて、兄好みの女像を目指している(無自覚?)。
兄はベタベタしない強い女が好きなので、
「おまえもう高校生なんだから一人でも平気だよな?」と好き勝手している兄に
強がりで「平気だよ!」と言っている。
兄好みの女=死別した母?
マキミキとチョコ母が前日バッタリ会う。
兄不在を聞き、食生活を心配して弁当を作る約束をするチョコ母。
めったにチョコに弁当を作らないチョコ母が作り、チョコもついでに弁当食べられる。
マキミキとチョコ母仲良い。「ウチの子になっちゃいなよ」「チョコがいなければおばさんちの子になってもいいな」わはは。
みたいな。