6話「Stormy monday」
↓コンテ
https://www.pixiv.net/artworks/85167616
(擬音・吹き出し外文字)
「セリフ」
{人物モノローグ}
<ナレーション・モノローグ・解説・歌>
■6話「Stormy monday」
●1
■
タイトル。
階段を上がってくるチョコと関口。
関口「教室移動の前に自習って教えて欲しいよなー」
チョコ「あー、まったく、月曜の一時限目から階段昇ったり降りたりさせないでくれよ」
関口「だりー」
■
関口「あれ? A組も自習か? うるせえな」
チョコ{A組って}
■
チョコ{まれちゃんたちのクラスだ……}
ドアの窓から何気なく覗き込む。
●2
■
自習なのに何も課題がないせいで休み時間の様相のA組。
ふざけあってプロレス技をかけている男子が大騒ぎしている。
女子たちがおしゃべりしている。
■
将棋を指している男子二人と囲んで見ている女子二人。
■
オタクっぽい女の子たち。
仲良しグループの輪がいくつもできている。
■
その中でポツンと窓際の席に座り、窓の外、空を見上げているまれ。
チョコ{お、まれちゃんいた…}
■
離れてやはりポツンと退屈そうに本を読んでいるインチョー。
チョコ{インチョー…、は読書か}
■
離れて机に突っ伏して寝ている? マキミキ。
チョコ{あの寝てんのがミキ?}
●3
■
チョコ{………?}
関口「なに見てんの?」
■
チョコ「あ、いや……」
■
チョコ{……もしかして、あいつらって}
チョコ{ぼっち……、なのかな……?}
と関口と廊下を去っていく。
■
(ガラガラガラッ)
とドアが開く。
教師A「おい騒がしいぞ!」
■
教師A「隣じゃ普通に授業やってんだ」
しんとなる教室。ドアのほうを見る生徒。
教師A「級長、誰だ? 静かにさせろ」
■
教師A「級長?」
誰だ、というように見回す。
●4
■
加山「香坂さんだよね?」
と女子(加山)が別の女子(伊田)と顔を見合わせる。
■
教師A「香坂…?」
■
本から顔を上げるインチョー
■
ザワついていた教室でみんながインチョーを見る。
■
インチョー、クールに。
インチョー「違います。私じゃありません」
■
加山「え? じゃ誰?」
前田「…あのー、僕です」
と冴えない感じの、いかにも押し付けられてやってる風の男子。
■
教師A「なんにも課題でてないのか」
前田「はあ」
ザワザワし始める。
■
インチョー{そこまで学級長っぽいのか私は……!}
本に目を戻すインチョー。
●5
■
教師Aが去って再びワイワイとうるさくなり始める。
ドッと笑う女子の輪。
■
前田「あ、あのー、うるさくするとまた先生が…」
と立ち上がってオドオドしつつ注意を呼びかけようとする。
■
マキミキ{……眠い}
突っ伏している。顔は見えない。
■
前田「み、みんな…、し、しずかにしないと…」
視線を落して消沈していく。
■
前田「……」
しょんぼり着席する後姿。
クラスメートの声「ははは」
クラスメートの声「うるせえよ」
クラスメートの声「キモくね?」
■
マキミキ{……空気悪い}
つっぷしたまま。
●6
■
インチョーの耳に声が入ってくる。
(ひそひそ)
加山の声「さっきまじでダブリが学級長だと思ってた」
■
伊田「最初誰かが推薦したけどダブリが自分で拒否ったじゃん」
加山「あー、思い出した。そうだったそうだった、空気読まねーよな…」
と話している。
■
そちらを見もしないインチョー。
伊田の声「一コ年上なんだからああいうときは引き受ける広い心持てっての」
■
インチョー{……「ダブリ」「ダブリ」って}
インチョー{留年して同じ学年二回やってるんじゃなくて、一年遅れて入学しただけなんだけど……}
■
インチョー{……やっぱり}
インチョー{高校なんか入るんじゃなかったかなあ}
●7
■
普通の旅客機が上空と飛んでいる。
まれ{あれ、ばくげっきかな}
■
まれ{もし、ばくげっきが爆弾落っことしたら}
まれ{きっと学校がめちゃめちゃになって}
まれ、ボンヤリ見上げている。
■
まれ{みんな死んじゃう}
■
窓の外を見ているまれを廊下側から。顔は見えない。
まれ{ひゅーーーー……}
■
まれ{ぼかーん!}
声は出さないが動くまれの口元。
■
まれ{……落ちないかな}
と、首をかしげたまま机に頭を置く。後からのアングル。顔は見えない。
暗く静かで穏やかな狂気を抱えている。
●8
■
昼休み。
(キーンコーンカーンコーン)
■
第二音楽室。
輪になってイスに座り、モソモソとパンを食べているマキミキ。インチョー。まれ。
マキミキ「まだ午後の授業あると思うと憂うつだー」
インチョー「……寝てないの?」
■
マキミキ「うん。週末の夜が楽しすぎると、その分さ、月曜って乗り切るのつらいよね?」
■
インチョー「そうね……」
インチョー「パン残しちゃおうかな」
とビニール袋に戻す。
マキミキ「参ってるねえ、そっちも」
苦笑い。
まれ、パンを食べ終わって片付けている。
■
インチョー、言われて教室での嫌な気分を引きずっているのか物憂げな表情で押し黙る。
■
マキミキ、敏感にそれを感じ取り、自分もまたちょっと参っていることを自覚して黙ってしまう。
注・別に気まずいとかお互い地雷踏んだとかではなく、それぞれの気分を察しつつも、なんとなく黙ってしまったという感じで。
■
まれ「んしょ」
とギターを抱える。
●9
■
まれが一息吸い込んで、ギターを弾き始めると駆け上がってくるように音が迫ってくる。
(たったったっ たったった たったったっ たったったっ!!)
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音にハッと目を見開くインチョー。
■
同じくハッとするマキミキ。
■
迫るギター!
■
ギターを抱きかかえて添い寝するように上体を倒すまれ。
(てれててん…)
と、しっとりタップリとタメるまれのギター。
http://www.youtube.com/watch?v=h-B3bWwK_Bk&feature=related
ボビー・ブランドの前奏みたいに。
●10
■
まれ<月曜の気分は最悪よ>
とニっと笑って歌う。
■
ヒューっ! と目を丸くして息を呑むインチョーとマキミキ。思わず「上手い!」というリアクション。ぞわりと背筋が伸びる。
(てれてれりと・てれれれん!)
■
まれ<でも火曜だって同じくらいひどいわ>
■
(てれれてん… てれってってってん… ぴっぴぴゅん)
一本とられた! と苦笑いしながら急いで参加しようとポケットを探ってハープを探すマキミキ、ピアノの前に座るインチョー。
●11
■
まれ<月曜の気分は荒れもよう でも火曜だって同じくらいひどいわ>
水曜はもっと悪くて 木曜も負けないぐらい哀しいの>
まれ<金曜はワシが飛んで 土曜には遊びまくる
金曜はワシが飛んで 土曜には遊びまくる
そんでね日曜は教会に行って 跪いてお祈りするの>
まれ<ねえ 神さまおねがい ゆるしてね
いいじゃん神さま ゆるしてってばさ>
(『Stormy Monday』誤訳:坂井音太)
STORMY MONDAY BLUES Word & Music by Eari Hines, Billy Eckstine and Bob Crowder
@1962(Renewed)by WARNER BROS. INC. All rights reserved. Used by permission.
Print rights for Japan administered by YAMAHA MUSIC PUBLISHING. INC
まれ、気持ち良さそうに歌い上げる。
ピアノで伴奏するインチョー。
マキミキ、目をつぶって鷲のように片手をバタバタさせて腰を振りながらハープを吹いている。
http://www.youtube.com/watch?v=M3Aw5Nol4QU
・参考:アコギのStormy monday
●12
■
マキミキ、ハープを吹き鳴らしてまれのギターと掛け合いの応酬。
ハープ(ぷわふぁーふぁふぁっ! ぷわふぁーふぁふぁっ!)
http://www.youtube.com/watch?v=J_GNIvs0x0U&feature=related
・BBキングの掛け合いみたいに。
■
ピアノ(てててて てんてれてんて たんたーん たっ たっ たんたらたんた)
すまし顔で微笑しながらノリノリのインチョー。
■
まれ「ろ~~~~ど はぶ ま~し~~~」
と大声で。
http://www.youtube.com/watch?v=MHWeK8Vheak&feature=related
・エヴァ・キャシディのように
■
うん、うん、とうなずいて拍子をとるマキミキとインチョー。
■
最後は3人で声を張ってコーラス。
三人「ろお~~ど はあ~ぶ ま~しーおんみ~!」
絶叫気味に。
■
ギター(ちゃりこ ちん ぷい~ん)
●13
■大
わっ、と笑ってセッションのデキに喝采する三人。
■
インチョー「今のは良いデキだったね!」
まれ「すっとした!」
■
マキミキ「これ以上ないデキを祝って本日は早退したい」
(キリッ)
■
顔を見合わせるまれとインチョー。
■
まれ「午後サボっちゃうの?」
マキミキ「それこそ」
マキミキ<Lord have mercy on me! (ルビ・かみさまゆるしてね)>
マキミキ「でしょ」
と片目をつぶってワルっぽくおどけて。
■
インチョー「どこ行く? うどん屋さん?」
クールに笑って。
マキミキ「それだ! 食欲出てきたね?」
と、ぺちんと指を鳴らして。
●14
■
マキミキ「撤収てっしゅー」
バタバタと駆け出て行く三人。
■
前のコマと間空けて
<放課後>
第二音楽室に入ってくるチョコ。
チョコ「あれ? 誰も来てない」
■
いぶかしむチョコ。不安げ。
チョコ「?」
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夕焼けの校舎。
カラスがカアカアと鳴いている。
チャイムが鳴り響いている
■
とっぷり暮れて、星が出た夜空を、暗い第二音楽室で見上げるチョコ。まれが空を見ていたように。 あれがブルーズの星だ。
チョコ「……ぼっちは」
リョコ「俺だ」
とギターを爪弾きながら哀しそうにつぶやく。
■
ハッとして、
チョコ「これがブルーズ?」