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5話「うどん大盛り」

↓コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/61136744



(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説・歌>



■5話


●2

 回想イメージ。

 部屋の隅に向かって、こちらに背を向け、うつむいてギターをドロドロ弾いているまれ。

インチョー「まれちゃんは深南部のデルタブルーズスタイルっていうか」

インチョー「ソロの弾き語り形式が得意なのね」

 第二音楽室。時間的には前回の続き。4人揃っている。

インチョー「チョコくんがやりたいバンド形式だとシカゴブルーズかな?」

インチョー「シカゴブルーズはロックの先祖よ」

インチョー「まれちゃんはそういうバンド形式やってみたくないわけ?」


●3

まれ「……あのね、前は独りだったけど、最近はみんなでセッションして遊ぶの、楽しいよ」

 まれ。

まれ「インチョーとか」

 インチョー。

まれ「マキミキと一緒にやるのは面白い」

 マキミキ。意地悪に笑ってチョコを見る。

マキミキ「チョコは、まだダメだな」

チョコ「う」

 チョコ。

インチョー「私が思うに、まれちゃんがチョコくんを前にして弾けるようになるには───」

インチョー「チョコ君が」

インチョー「ちゃんと私たちのセッションに参加できるようになればいいんじゃないかな?」

 インチョー。

マキミキ「あ、そうだよね」

 声だけ。


●4

マキミキ「まれちゃんがあたしとインチョーの前では弾けるのって」

マキミキ「最初に会った時セッションしたからだと思うし」

 と、思い出すように。

まれ「そうかも……?」

 こめかみに人差し指を当てて首をかしげて。

チョコ「うーん、こないだのセッション、俺はソロ無理だからパスしたし」

 腕組みをして。

チョコ「あれだとやっぱ何かセッションに参加したって感じじゃなかったよなあ」

インチョー「大丈夫、すぐできるようになる」

インチョー「あたしだってピアノちょっと習ったくらいで、それっぽく弾けるだけだし」

インチョー「ブルーズはシンプルな音楽よ」

 とチョコに。

インチョー「おおよその型もあるからね。川柳みたいに」

インチョー「12小節を3コードで」

インチョー「歌詞は三行。最初に同じ詞を二回くりかえして、最後に詞のオチが来てワンコーラス」

チョコ「どうゆうこと?」

インチョー「例えばねえ……」


●5

(でんででんど でんででんど でんででんど でんででんど)

インチョー<おなかがすいたら どうしよう?>

 とピアノを弾きながら歌う。

インチョー「って歌うでしょ? そしたらこうやって楽器で合いの手が入る それでまた歌う」

(つっぴっぴっぴ ぺっ ぱんぱらぱんぱ)

インチョー<おなかがすいたら どうしよう?>

 とピアノを弾きながらパッとマキミキを見る。

インチョー「はい、マキミキ」

(でんででんど でんででんど でんででんど でんででんど)

マキミキ「えっ」

 あたしっ? と自分を指差して確認しつつ急に振られてちょっと慌てて、

(つっぴっぴっぴ ぺっ ぱんぱらぱんぱ)

 眉間に一指し指を当ててえーと、と苦吟。


●6

マキミキ<あーあ うどんは大盛りで>

マキミキ<頼んじゃうかもね>

 と、しぼり出すように苦悩しつつ唸るように歌う。ブルーズシンガー然としている!

 インチョーも吹きだす。ぽかんとしているチョコ。

 まれ、大ウケしてる。

 マキミキ、不本意なオチで赤くなって苦い顔。

マキミキ「今のはインチョーのがムチャ振りだからね!」

インチョー「簡単だから今みたいなアドリブが遊べて面白いわけ」

チョコ「アドリブかあ……」


●7

マキミキ「難しく考えることないよ」

マキミキ「ブルーズっぽいと思ってやれば、それがその人のブルーズよ」

 チョコ、自分のほうが恥ずかしくなってマキミキの顔をまじまじと見る。

チョコ「……なんかミキがかっこいいこと言ってる」

マキミキ「ウチのお兄がそう言ってたんだもん!」

 つられて恥ずかしくなって顔を赤らめて。

■ 大

まれ「うん! そうだよ!」


●8

■大

まれ「もしね、その人の心の底からしぼり出されたような、すっごいアドリブ出たときは、うわーーーーってなるよ!」

まれ「元気が出てきて思わず「すごい!」って言うの!」

チョコ<そうだ。それがやりたいんだ、俺は>

チョコ<歌詞も、何を歌っているのかも理解できなかった>

チョコ<だけど感じたんだ>


●9

マキミキ「まあフレーズはすぐ覚えて弾けるようになると思うけど」

■大

マキミキ「結局、ムードを出せるかどうかのほうが大事だから」

マキミキ「チョコのセンスが試されるのだよ!」

 と挑発的に指差す。

チョコ「じゃあお前のムードとセンスは「うどん大盛り」なのか?」

マキミキ「ああ、そうだよ!」

 と開き直る。

チョコ「ぐっ」

チョコ「ムード……とセンス…かあ」

インチョー「まずは定番のフレーズとかいっぱい聴いたらいいんじゃない?」

インチョー「帰り、一緒にCD屋さん行こうか?」

まれ「うどん屋さんも!」



●10

 学校帰り。CD屋。

 店内。

 マキミキ、ごきげんに試聴している。

 まれ、楽しそうに棚から何かCDを出して見ている。

 少し離れたところで、チョコとインチョー。

チョコ「これ?」

 と棚の一角を指す。

インチョー「うん。ロバート・ジョンソン」

インチョー「クラプトンが尊敬してる伝説のブルーズマン」

 手にとってジャケットを見ているチョコ。


●11

インチョー「悪魔と契約して魂と引き換えにギターの技を身につけたとか、色々伝説があるの」

チョコ{これがロバート・ジョンソンか…}

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B9-%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3/dp/B0001FAFMM

インチョー「それ二枚組で分厚い解説ついてるけど」

 と棚から引っ張り出す。

インチョー「もっと安いのもあるよ」

 後ろ向きで部屋の隅に向かって演奏しているロバジョンのジャケット。

http://www.amazon.co.jp/King-Delta-Blues-Singers-Reis/dp/B0002MHEK0

 手渡すインチョーの手。受け取るチョコの手。

インチョー「この人、全部で29曲しか録音残してないって言われてるの」

 チョコ、手に取ったCDのジャケ見て、はっとする。


●12

■大

チョコ{後向きで演奏……}

 ロバジョンの絵のクローズアップ。

チョコ{まれちゃんみたいだ……}

 と見つめている。

インチョーの声「そのジャケットの絵」

■大

インチョー「まれみたいだと思わない?」

 とジッとチョコの顔を見る。


●13

 少し目を見張ってインチョーを見るチョコ。

インチョー「ロバート・ジョンソンはなぜか人に背中を向けて演奏していたそうよ」

 と意味ありげに微笑する。

 チョコ、まれのほうに振り返る。

チョコ「……」

 まれ、別のコーナーでCDを手にして見ている。

まれ「うわー。新しいライブ盤、出てたんだ……」

インチョーとチョコ「?」

まれ「欲しいなあ。買おっかなあ」

 CDを見ながらつぶやいてる。

チョコ{まれちゃんはどんなの聴くんだ?}


●14

 チョコ、まれに近寄って。

 インチョーも一緒に。

チョコ「それ、なに?」

 まれ、チョコの声にふりかえる。

まれ「わたし、この人の大ファンなの」

まれ「綾小路きみまろ」

 まれが手にした綾小路きみまろのCD。

http://www.amazon.co.jp/%E7%88%86%E7%AC%91%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E7%AC%AC4%E9%9B%86-%E6%8B%9D%E5%95%93-%E4%B8%AD%E9%AB%98%E5%B9%B4-%E4%BA%88%E5%82%99%E8%BB%8D%E3%81%AE%E7%9A%86%E6%A7%98%E3%81%B8-%E7%B6%BE%E5%B0%8F%E8%B7%AF%E3%81%8D%E3%81%BF%E3%81%BE%E3%82%8D/dp/B003ZH340I/ref=ntt_mus_ep_dpt_1

まれ「知ってる? おっもしろいんだよ!」

 胸の前で両拳を握って力説。

 がくっとうな垂れているチョコとインチョー。

(おわり)





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