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3話「たいこドンドン」

↓コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/61136341

●2

 放課後の第二音楽室。

 ピアノを弾いてる副会長。

 アンニュイな雰囲気。

 少し離れた椅子に座っているマキミキ。

 同じくアンニュイな表情でパックジュースをストローで飲んでる。

 ピアノを弾くのを止める副会長。

マキミキ「ん?」

 と顔を上げる。

副会長「今日、チョコくんは?」

マキミキ「……知らない」

 と不愉快そうに。

マキミキ「あいつ来ないほうがいいよ。まれちゃんがギター弾けなくなっちゃうし」


●3

副会長「じゃあ、まれは、どこ行ったの?」

マキミキ「隣の準備室でなんか漁ってたよ」

副会長「……」

 と準備室と繋がるドアのほうを見る。

 準備室のドアの小窓からまれが何かゴソゴソやっているのが見える。

副会長「まれー?」

まれ「見て見てー!」

 と、第二音楽準備室の中から大太鼓を見つけてきて、ストラップで装着している。

 さらに中太鼓を手に持っている。


●4

まれ「ほら太鼓! 太鼓!」

 と鼻息荒く、興奮気味。

副会長「うんうん。わかったから」

 と少し呆れ顔でなだめる。

 まれ、大太鼓を叩いてお神楽のようにステップを踏んで遊び始める。

(どんどどーん、どんどどーん)


▼参考動画

http://www.youtube.com/watch?v=2zRDyrTrgf0&feature=related

ドキュメンタリー映像のダイジェスト

0:40くらいからタイコどんどん。まるで日本のお神楽のような。


 何かに覚醒したように目を見開くマキミキと、はあっ? みたいな顔した副会長。


●5

(どんどどーん、どんどどーん)

まれ「大自然の呼び声よ! 命のビートなの!」

 とステップを踏みながら興奮!

マキミキ「おー! 来た来た!」

 と活き活きした表情で立ち上がってノッてくる。

副会長「ナニが来るのよっ?」

 と、マキミキを見る。

 マキミキ、中太鼓をストラップで装着して叩き始める。

(トントコトントコトコトン トントコトントコトコトン)

まれ「おーおう」

マキミキ「おぅおぅ」

まれ「おーおう」

マキミキ「おぅおぅ」

(どんどどーん、どんどどーん)

(トントコトントコトコトン トントコトントコトコトン)

 二人一緒になってノリノリでステップを踏みながら叩き始める。

 ついていけない副会長、呆れ気味に二人を見ている。

まれの声「おーおう」

マキミキの声「おぅおぅ」

(どんどどーん、どんどどーん)

(トントコトントコトコトン トントコトントコトコトン)


●6

 校舎の外観。第二音楽室から轟く太鼓の音。

(どんどどーん、どんどどーん)

(トントコトントコトコトン トントコトントコトコトン)

 学校の遠景。住宅街から見える校舎。太鼓の音が小さく聞こえる。

(どんどどーん、どんどどーん)

(トントコトントコトコトン トントコトントコトコトン)

ナレ<この太鼓の音は轟き──>

 学校の近所の武道所の外観。

 看板「川南流」がかかっている。

ナレ<──わずかに、学校の近所にある武道場まで届く>

(どんどどーん、どんどどーん)

(トントコトントコトコトン トントコトントコトコトン)

 さらに小さく聞こえる。

ナレ<室町時代から伝承されるも、いままさに失伝しつつある川南流陣太鼓──>

 薄暗い道場の中。板張り、壁には木刀が掛けられ、神棚と「精神統一」の額。

 道場の中央に正座している袴と胴着姿の老人。

ナレ<──その最後の伝承者でもある老道場主の耳に、この太鼓の音が入ったのである>

(どんどどーん、どんどどーん)

(トントコトントコトコトン トントコトントコトコトン)

 小さな音に耳をすまして気がつく老人。

老人「はっ……」


●7

老人「これは「落城の譜」!」

老人「城がいよいよ落ちるというときに、今が最後の陣太鼓を叩く……」

 と立ち上がる。

 小さく太鼓の音が聞こえ続ける。

老人「万一の場合以外、稽古ですら叩くことを許されない秘伝中の秘伝」

老人「このワシですら生涯一度も叩いたことのない秘譜……」

 と緊迫した面持ちでつぶやく。

老人「いったいどこの誰がっ?」

 と、バッと振り返る。

ナレ<しかしそんなことは、まれたちには今後一切関わりのないことであった……>

 と、再び学校の校舎の外観。

(どんどどーん、どんどどーん)

(トントコトントコトコトン トントコトントコトコトン)

 第二音楽室。

 マキミキがステップ踏みながら中太鼓を叩きながら片手でお神楽のようにブルースハープを吹く。

(じゃがぶがぶがぶー じゃがぶがぶがぶー)


●8

<あたしの太鼓は踊らない

 シミーダンスは踊らない

 太鼓は夜遅くダンスを踊らない

 シミーダンスは踊らない


 太鼓はあたしを愛している

 太鼓はあたしを愛している

 そうとも だから追いかけぬ

 あたしの愛するいとしい太鼓>

(『ドラム御神楽』 作詞:奈良本希)


●9

 まれとマキミキ、盛り上がって机の上にまで乗ってステップを踏んで一心不乱に叩きまくる。

(どんどどーん、どんどどーん)

(トントコトントコトコトン トントコトントコトコトン)

(じゃがぶがぶがぶー じゃがぶがぶがぶー)

 うわー…、みたいな目で見ている副会長。

副会長{どこのトライブだ、こいつら……}

(どんどどーん、どんどどーん)

(トントコトントコトコトン トントコトントコトコトン)

(じゃがぶがぶがぶー じゃがぶがぶがぶー)

 まれ、大太鼓を床につけて、叩きながらゴロンと転がって足を宙でバタバタさせてる。

 マキミキが横から補助してひっくり返らないように支える。

 二人ともすごい嬉しそう。

副会長「わーっ!」

 と、さすがに慌てる。

副会長「あぶないっ、あぶないからやめて!」

 と二人を止める。

 ふえ? みたいな顔で副会長を見るマキミキとまれ。

●10

副会長「もうダメ! 太鼓ダメ!」

まれ「なんでー?」

マキミキ「盛り上がってんのに。副会長も太鼓叩けば?」

副会長「あんたたちっ、どうかしちゃったんじゃないっ?」

 と叱る。

 まれとマキミキ、えー? と困惑したように顔を見合わせる。

副会長「南北戦争で奴隷解放されるまで、アメリカ南部では黒人がドラムを叩くことを白人によって禁じられていたの」

 南北戦争のイメージ。

●11

副会長「ドラムを叩くと、その音に人が集まってきて、みんなの気分が高揚するから、白人たちは黒人奴隷の反乱を恐れたわけよ」

 黒人がドラムを叩いて楽しんでいるイメージ。

副会長「こないだのワールドカップでも、渋谷駅前で無軌道なサッカーファンが集まったとき、暴動を恐れた警察は、真っ先にドラムを叩いて騒いでいたサッカーファンを検挙したわ」

 両脇から警官に捕まって検挙されるタイコを持ったサッカーファン。

副会長「抑えこむべきは扇動の要となるドラムというわけ」

マキミキ「そのウンチク、ウチらに関係ないじゃん」

まれ「何が言いたいのかわかんないよ」

(だん!)

副会長「てゆうかうるさいし、先生に見つかったらこの第二音楽室の出入り禁止されるかもしれないから、もうタイコ禁止!」

 と机を叩く。

 まれとマキミキ、びっくりする。

副会長「わかったっ?」

まれ・マキミキ「はーい」

 シブシブと返事。


●12

(ガラガラ)

 と背後でドアが開く音。

まれ「あ」

 副会長、ドキッとして振り向く。

チョコ「あれ、今日はタイコ? ウチのクラスまで聞こえてたよ」

 と入ってくる。

チョコ「面白そうだね」

副会長「面白くない!」

チョコ「えっ」

 と驚く。

チョコ「なに? どしたの?」

 と副会長の機嫌が悪い理由がわからず戸惑いつつマキミキとまれに窺う。

マキミキ「にへへ」

まれ「怒られたー」

 と苦笑い。

●13

副会長「ほら、もう、太鼓かたしておいてよ」

マキミキ「はいはい」

マキミキ「チョコ、準備室のドア開けて」

 と太鼓をかたづけはじめる。

まれ「あれ、副会長、帰っちゃうの?」

副会長「トイレ!」

 と廊下に出て行こうとする。

 廊下。

 耳に指を入れて首を傾げて、

副会長{あれ、なんか鼓膜がジンジンする……}


●14

副会長{まったく、ドンドンうるさいんだから……}

 廊下を歩いてる副会長。

副会長{どんどどーん、どんどどーんって}

副会長{どんどどーん、どんどどーん}

 と無意識にステップしながら歩いている。

副会長{どんどどーん、どんどどーん……}

 無意識にステップしたまま遠ざかっていく。


(おしまい)



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