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22/25

22話「You can run, you can run 1」

↓コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/86865974


加藤 男子A

吉川 男子B

榎本



(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説・歌>


●1

 タイトル。

マキミキ{体育祭…}

 少しワクワクしている。

前田「男女混合スウェーデンリレーはバトンが渡るごとに走る距離が増えていくリレーです」

チカ「ダルっ…」

加藤「疲れそー」

吉川「でもこれ体育祭のメインイベントらしいぜ」


●2

ヨナ「他のクラスは陸上部の人が出るって聞いたよ」

サイトっち「ウチの陸上部って誰?」

榎本「え? ウチ陸上部誰もいねえのかよっ?」

加藤「勝てないならやってもムダじゃね?」

前田「男女1名ずつですが、誰かやりたい人は?」

加藤「前田やれよ!」

前田「えっ」

吉川「そうだ、前田やれ。推薦する」

榎本「多数決! はいっ!」


●3

 大半が手を挙げる。

前田「あっ…うっ…」

 ムッとしているマキミキ。

 前田が黒板に自分の名前を書きながら

前田「…じゃあ、じょ、女子は」

マキミキ「はい」

 マキミキが手を挙げている。

 驚いて振り返るインチョー。

 まれが「おお」とみている。


●4

 放課後のグラウンド。

3年男子「おーい、A組こっちだよ一年生」

 と上級生4人がいるところに走っていく体操服姿のマキミキと前田。

3年男子「あれ、陸上部って1年A組は誰もいなかったのか……」

マキミキ「陸上部じゃなくてすいません」

 ムッとするマキミキ。

3年男子「ほら、この種目出るのって陸上部ばっかだからさ」

3年男子「まあいいや、体育祭は二週間後だ。がんばろうぜ」

 とりつくろうように。

3年女子「第一走者は50m、第二と第三走者が100m、第四第五が200、アンカーが400ね」

マキミキ「どうやって決めます?」

2年男子「もう決まってんだよ、女子男子女子男子の順で3年生から2年生1年生に繋いでいくんだ」

前田「えっ、あっ、ホントだ…」


●5

前田「じゃあ僕…」

2年男子「アンカー」

3年男子「ま、やるからには勝とうぜ」

3年女子「あたしら部の練習があるから、バトンの受け渡しの練習メインで放課後30分だけね」


 準備体操しながら、

前田「どうしよう。みんな脚速い人ばっかりだ」

前田「やっぱり他の人のほうがいいよ」

マキミキ{……}

 と少しイラついたように睨みつけて。

マキミキ「誰も代わってくれないと思うよ」

 冷やかに。


●6

前田「僕、小学校のときからいつもビリだったし、どうせまた…」

マキミキ「あたしはやりもしないで諦めたりしないね」

 とかぶせ気味に。

マキミキ「それに「どうせ」なんて絶対に言わない」

 怒ったように前田を睨む。

マキミキ「見ていてなんかイライラすんだよ、前田君」

マキミキ「最初から勝ち負けなんか考えんな」

マキミキ「バトン受け渡しの練習のあと」「あたしがコーチしてやるから!」

 と指差されてたじろぐ前田。


●7

マキミキ「スタートは飛び出すように」

 スタンディングスタートで構える前田。

マキミキ「自分が一番飛び出しやすい立ち幅と姿勢があるはずだからそれを探って」

マキミキ「はい!」

(ぱん!)

 と手を叩いてスタートの合図。

マキミキ「大きく腕を振って! 歩幅を大きく、脚も高く上げる!」

 バタバタと走る前田。

 マキミキが怖いのか必死。

インチョー「やってるね」

 その声に振り返るマキミキ。


●8

 制服姿のインチョーとまれ。まれ、手に持った明太フランスパンを食べかけ。

マキミキ「あー、まあなんか行きがかり上、面倒見ないとさ」

 と苦笑い。

マキミキ「まれちゃんもなんか出るんじゃなかったっけ?」

 と思い出したように。練習しないの、というニュアンス。

まれ「うん、だからパン食い競争の練習してるんだ」

 とパンをかじる。

インチョー「明太フランスで?」

 呆れて。

まれ「そう。本番より硬いパンをカジって鍛えてるの」

 得意げ。

 呆れて苦笑いのインチョー、マキミキ。


●9

 前田、はあはあ言いながら歩いてもどってくる。

マキミキ「最後まで走れてないみたいだけど」

前田「400mって思っていたよりずっときついね……」

 息を切らして。

マキミキ「うん、きついよ」

前田「体力尽きて、途中で諦めて」「もし歩いたりしたら、それこそ笑いものだね……」

マキミキ「これリレーだし、みんなで走るものだからさ、アンカーだからって気負わなくていいよ」

マキミキ「400mは医学的に人間がスプリントで走りきれる限界の距離らしいけど…」


●10

マキミキ「だから素人が最後まで400mを全力で走れたら上等だよ」

マキミキ「最初から誰も注目してないし、開き直って完走を目標にしたら?」

前田「そ、そうだね、それならなんとか!」

 とやる気を見せる。

まれ「注目してるよ!」

インチョー「同じく」

 と手を振る。

 ハッとする前田。

 校舎裏で二人三脚の練習をしているチョコと関口。



●11

 さらに次の日の放課後。

マキミキ「今日からフォーム直すよ」

マキミキ「身体をまっすぐに! 地面を蹴ったら後ろの脚は前の膝を勢いよく追い抜く」 前田に20メートルダッシュをさせている。

 マキミキの後で見学しているインチョーとパンをかじってるまれ。

マキミキ「ちがうちがう! 身体を立てるんじゃなくて前傾してまっすぐ!」

 と前傾して見せる。

マキミキ「よく見ろ! こうだよ、こう!」

 ヘトヘトになってる前田。

マキミキ「タラタラすんな! なめてんのか!」

 キイーってなってる。

 帰りがけにその様子を見ているクラスの男子。マキミキの声が響いている。

吉川「……すげえ鬼コーチだな」

榎本「なんか毎日やってるらしいぜ」

加藤「うへ、蹴った」


●12

 水飲み場で水を飲む前田。

マキミキ「明日からタイムはかろう」

前田「記録とるの」

マキミキ「早くなってると思うんだけど、実感わかないでしょ?」

 練習後。

 着替えた前田とマキミキ、まれ、インチョーが下校している。

前田「……僕、映画研究部なんだ」

 と歩きながら。

マキミキ「へー」

マキミキ「映画好きなんだ」

マキミキ「なんか面白い映画教えてよ」

 マキミキ。

前田「「サニー」っていう韓国映画が良かったよ」

前田「80年代のスケ番グループの女子高生が、現代になって再会するんだ」

 前田。


●13

前田「かわいくて幼かった女の子たちが」

前田「みんな年を取って結婚して」

 自分たちのことのように感じるインチョー。

前田「色んな経験をして」

前田「笑顔は変わって」

 同じくまれ。

前田「すごく面白くて」

前田「だけど僕はまだ高校生で、男なのに」

前田「なんだか無性に泣けたよ」

 歩く4人。前田の話をきいている。

前田「……見終わってからちょっと考えたんだ」

前田「もし大人になって」

前田「クラスのみんながこの高校時代のことを振り返ったとき」

前田「映画のように思い出せるのかもしれない」

前田「でも、その中で僕はどんな役なんだろう、って」

 遠くを見る前田。


●14

前田「ずっとみんなに「級長のウザい奴」とか「ドンくさい奴」って思われているかも」 伊田とチカが聞こえよがしに陰口を言ってる後ろを凹んだ顔した前田が通っている回想イメージ。

前田「でも、それは本当の僕じゃなく、いつのまにかみんなからおしつけられて」

前田「そういう役割を演じさせられてる僕なんだ」

 前田の話に共感して感心したような顔のまれ。あー、そうそう、みたいな。

前田「中学まではこんなんじゃなかったよ」

 とため息。

インチョー「……けど前田君、責任感強いなって思うよ」

インチョー「我慢強いし、投げ出さない」

 真面目な顔で。

マキミキ「ちゃんと見てる人もいるよ」

 と叱咤するように。



●15

前田「そ、それは僕がこのリレーから逃げないようにプレッシャーをかけてるんじゃないよね?」

 とマキミキに。マキミキテヘペロ。

マキミキ「明日もガンガンシゴくよ!」

 と前田の背中をバンバン叩く。

 次の日の放課後。

マキミキ「走れ走れ! 歩くな! 最後まで走って!」

 前田、走る。

マキミキ「おっ!」

(カチっ)

 マキミキの前を走り抜ける前田。ストップウォッチを見るマキミキ。


●16

前田「はあっ…、はあっ…、ぜっ…、はあっ…」

マキミキ「前田君、タイム上がったよ!」

 とストップウォッチを示す。

前田「はっ…ほっ…、ほんとっ?」

マキミキ「後半のペース落ちてるのは持久力ないからだけど、でもまあ、格好もついてきたね」

前田「はあっ…、じ、自分でも…」「前より…はっ…マシになってきてる気がして…る」

マキミキ「けっこう楽しいだろ?」

前田「あ、ありがとう…」

前田「た、玉木さんのおかげで、なんか…ワクワクしてきたよ」



●17

前田「あ、教室にタオル忘れてきちゃったから、取ってくる」

マキミキ「戻ってきたらバトンパスの練習すっから」

 と校舎の方へ走り去る前田に。

 1年A組。教室に残って喋っているサイトっち、チカ、ヨナ、加藤、吉川、榎本。

サイトっち「さっきグラウンドの隅でやってたの見たけど、前田、遅くね?」

チカ「つか、ほとんど歩いてたよ」

加藤「体力なさすぎじゃね?」

吉川「ありゃ、どうがんばっても足手まといだし、いらねえよ」

加藤「お前代われば?」

吉川「バカ、あんなしんどいのヤダよ。玉木も怖えーし」

サイトっち「玉木さんって言えば、なんで立候補したんだろ?」


●18

チカ「前田が好きだからとか?」

 ニヤリ。

サイトっち「えー? ないない!」

(どっ)

 全員笑う。

加藤の声「ま、勝てないのにあんな練習しても意味ないよな」

 廊下。前田の足もと。

前田「……」

 教室のドアを開けられない前田。

 廊下を走り去る、前田。


●19

マキミキ「前田君おそい! 逃げたかと思ったよ」

 戻ってきた前田に。

前田「あ、あの、玉木さん、僕……」

マキミキ「まれちゃんがバトンパスの練習につきあってくれるって」

 マキミキの後に体操着姿のまれと制服のインチョー。

まれ「わたし、前田君の特訓見て、やる気出てきたよ!」

 と拳をにぎってガッツポーズ。

まれ「パン食い競争、食べるぞ!」

 と明太フランスをもって。

マキミキ「明太フランスしまっときなよ……」


●20

マキミキ「インチョーは? 一緒に練習しない?」

インチョー「私は応援してるよ」

 とさわやかに笑ってかわす。

マキミキ「何度も言うけど、これはリレーだからさ」

 と前田にバトンを突きつける。

マキミキ「順位とか考えないで、このバトンを繋ぐことだけ考えようね」

 見透かしたように前田に微笑む。

前田「う、うん!」




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