学祭スターティン!
さあ、迎えました『学祭』当日。
寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
書記 兼 設営 兼 買い出し 兼 売り子 兼 後片付け 兼 運営との橋渡し役の僕はその日の朝、炊飯器のセッティングなどで走り回っていた。
え? 役職が多すぎる? 押しつけられている?
いや、そんなことはない。新聞紙の件は弓月さんに、サーターアンダギーの件はすみっこパイセンに、そして苦情受け付け係(CEO)は、神田川先輩に任せてある。
だが、まあ。ぼっち学祭なのではないか? そう思われるのも無理はない。
なんせ書記 兼 設営 兼 買い出し 兼 売り子 兼 後片付け 兼 運営との橋渡し役。
しかも、サークル員は11人もいるのに、主要4人以外は、影が薄いってか、透明人間の扱いだもんな。記憶力の悪い作者の都合だろうけど、ってかいつまでこんな状態なんだろう?
うん、ぼっちだ。それらの事情を鑑みれば、確かにそうなのかもしれない。泣けてくるな。
寂しくて?
いや違う。
情けなくて?
いや違う。
女子 1: 男子 3(+ノラロウ 雄 1 )
主要登場人物のこの図式がキツイ。もう一人くらい、女の子をくれえええぇえ。(叫べ‼︎)
それはそうと、僕はテントの中で机を並べたり、看板を立てたりして、大忙しなんだ。
『読書サークル研究会 白飯&サーターアンダギー即売会・弓月花音名人による新聞紙講習会 他』
この看板は、題字の周りをノラロウの肉球スタンプを借りて(それ以来ノラロウの姿を見ていない←酷い目にあった)、他とは少し趣向の違う、趣ある看板にしたものだ。
女子大生はとかく、猫の肉球に弱い。
猫を見ると、すぐにキャワユーイと言って、追いかけ回す習性がある。いわゆる母性本能がくすぐられる、というやつだ。
その母性本能を刺激する看板になったのは、間違いないだろう。
僕のアイデアだぞ。えっへん。
ただ。
肉球スタンプの時、ノラロウが嫌がって暴れたため、ところどころが破れたり、スタンプに使った書道の墨汁が、あちこちにベチャとついていたり、出来栄えはあまり良いとは言えない。
ホラーと言われれば……ホラーのジャンルに入る、のかも、しれない。
だが、お化け屋敷と間違われなければ、それでいい。(いつもの肯定)
「さあ、いらっしゃいいらっしゃい」
「ちょっとそこのお兄さん、寄ってってー」
「うちの○○○は絶品だよ! 買った買った」
○○○の例→唐揚げ、バナナ、リンゴ、ゴリラ、ラッパ etc。
お客さまの入りも上々、威勢の良い掛け声が聞こえ始めた。
僕は、10台すべての炊飯器を確認していく。
その中のひとつをパカっと開けてみると、白い蒸気がほわほわほわーっと辺り一面に漂った。
うちのテントの隣を陣取っている、インド研究会、略してイン研のメンバーからも、おおおっとどよめきが起こっている。
なんだって? イン研はカレー&ナン? それに加えてタンドリーチキンだと?
タンドリーは間違いなく美味いが(好物)、日本人なら、米! 米を食うんだ! 見ろ、このツヤツヤで光り輝く、白ごはんを!
ははーーーと、その場でひれ伏さねばならぬ。
白米さまは、古代エジプトの神、ラーのような存在なのだ。
日本古来の稲の神、ベィー。(米)
「そこを通る者よっっ、いったいどういうつもりで白米さまの前を、そのように軽々しく横切れるのだっっ。ひれ伏せ、愚民どもよ」
「ちょ、神田川先輩、やめてくださいよ。ほらあ、みんな逃げてっちゃうじゃないですかあ」
僕は、呆れながらも、炊きたてご飯をシャモジでかき混ぜては蓋を開け閉めするを、10台、すべてで繰り返した。