優勝商品の空気清浄機を狙っていこうぜっ
「さあ、みなの者。秋だ。突然だが、読サー最大の危機が訪れようとしているっ」
はいはーい。
僕たちは姿勢を正し、正座で注目した。(←宣言の時は常にこのスタイル)
「さあ、毎年学祭には不参加の我々、読サーだが、今年は逆に参加しようと思っている」
『逆に』の使い方にちょっとした違和感を感じながら、え、参加したことないんだ? 毎年? え?え?
じゃあ、なんで今年?
「今年、うちの大学は創立30周年ということでだな。学祭に参加したサークルのうち、栄光の優勝サークルには、なんとっっっ‼︎」
「なんとっ‼︎」
「空気清浄機が与えられるのだっっ‼︎」
「おおぉー」
ちょっと待って、その前に、優勝ってなんなん?
「国民投票だ」
「人気投票ですか。それで優勝商品が空気清浄機、と」
「うむ、そうだ」
「わあ、あったら嬉しいものナンバーワンなやつですね。このサークル室にも、絶対欲しいやつー」
弓月さんの言葉が、サークル員の心に、ドスドスドスっとトドメを刺していく。
我々が……臭いってことだよな? (余韻) と。
ピシャンと雷が落ちたかのように正座をしていた輩が、挙動不審な動作で、もぞもぞし始める。ちょ、体臭を嗅ぎあうのやめてっっっ。
僕は慌てて、
「と、とにかく、神田川先輩もその上着、羽織るなら早く羽織っちゃってください。『学祭』参加して優勝するつもりなら、面白い出し物を考えなきゃいけないんですからね」
僕がいつもより長く喋ったもんだから、神田川先輩がおののいている。
「お、おう。は、長谷部、おまえ……成長したな」
「ありがとうございます。『学祭』でなにをやるか、みんなで候補を出し合いましょう。明日までに一つは考えてきてくださいね。神田川先輩もですよっ」
「お、おう。承知した。では皆のもの、チーム一丸となって空気清浄機狙っていこーぜぃ」
「おーーーー‼︎ 」
はあああ、色々と疲れるサークルだ。