さあ、優勝サークルの発表です
「はい、どうぞー。次の方、お代、200円でーす」
最後の一杯を注ぎ終え、そして、僕たちの『学祭』は幕を閉じた。
完売だ。かなり儲かった。けれど、良い米を使ったので材料費はそこそこする。純利益は少ないかも知れないが、僕たちにはやり切ったという、満足感があった。
「まあ、例えるならフルマラソン完走ってとこか。長谷部、弓月。おまえら新人のくせに、めちゃくちゃ頑張ったな。俺は感動した。めちゃくちゃ感動した。ありがとうな」
神田川先輩が熱く語り、握手を求めてくる。
メンタルは豆腐だが、立ち直りは麻婆豆腐。
強いもんだ。さすが、サークル長を務めるだけある。(上から目線)
「すみっこ、いや、林先輩。サーターアンダギー、めちゃくちゃ好評でしたね。ママさんとオネーたんさんにもよろしくお伝えください」
僕がそう言うと、すみっこパイセンは珍しく上機嫌でこう言った。
「僕もなかなかの活躍だったなあ」
弓月さんの新聞紙講座の受講生の一員にまぎれて、白飯を食っていたことには自身、一切触れてこないが、まあサクラくらいにはなったかもしれない。必要なかったけど。
そして、夕方、片付けをしていると、校内放送があった。
『皆さま、学祭、お疲れさまでした。皆さまのご協力のおかげで、たいへん盛り上がるイベントとなりました。さて。人気投票の結果を発表します』
緊張感が走る。サークル員の手が止まった。さっきまでガヤガヤとうるさかった外野も、水を打ったようにしんとしている。
我が読サーも、固唾を飲んで見守っている。
『優勝サークルは、』
ごくっ。
僕は、多数の役職を抱えながら、不器用な手でご飯茶碗に白飯を盛り続けたんだ。
そりゃもちろん、途中、手首がいたくなったさ。
腱鞘炎を患ってしまうほど、それほどに炊飯器を空にし続けた。頑張ったんだよ。人気だって出た。
これだけ頑張ったんだから、どうか、優勝していますように!
『さあ、優勝サークルは、ドゥララララララ……(永遠)……ダン!
「弓月 花音ファンクラブ同好会」!!!!!!』
え。
「「「わああああぁぁぁぁあああ」」」
キャンパスのあちこちで、どっと歓声があがっている。
当の弓月さんを見ると、弓月さんは信じられないという顔を浮かべ、両手で口元を押さえている。
感無量のポーズ。
「え。弓月さん? ファンクラブ同好会って?」