シエルとネージュ
「そんなんじゃ魔王なんて殺せないよ。」
黒髪の青年が冷ややかな目線を送る先には膝をつき、剣を片手に肩で息を切らしている少女がいた。少女の汗が顎からポタっと落ち、乾いた地面に吸い込まれていく。少女は雪のように混じりけのない白い髪を後ろに一つに結っている。だが、結んだ髪は所々ほつれ、ボサボサである。激しい戦闘を行った跡であることがその様子を見てわかる。
「うるっさいなあ…。朝から…、はっ…ぶっ通しで…訓練してたら、疲れるに決まってんだろ!!」
ルビーの輝きより負けない瞳を持ち、珍しい容姿で幻想を見ているのかのようにかわいらしく、儚げな印象をあいてに持たせるような魅力を持つ少女は見た目に反して口が悪く、すぐに立ち上がり助走をつけて剣を振りかぶり反撃にかかる。
そのいつものじゃじゃ馬っぷりをみて青年はため息がこぼれる。
「はあ。出会った頃はあんなに控えめでかわいらしかったのに。どこにいったんだろうね。あの可愛らしさは。それにそんな猪みたいに突っ込んでいく癖も直しなっていつもいってるのに」
少女の反撃を軽く剣で弾き瞬時に剣を返す。朝から彼女の訓練に付き合っていたはずなのに、汗一つかかずに相手をしている青年は涼しい様子でさらに彼女に攻撃を加える。目の前に迫ってきた切っ先に対して身体を回転させ躱しそのままの勢いで剣を横に振るう。その瞬間、少女は心の内で一太刀入る確信をした。だが、青年は剣で防ぎ蹴りを彼女の腹に入れる。後ろに飛んで威力を消そうとするも蹴りの威力を消しきれずに意識を失い、予想以上に吹っ飛んでいく。このままでは流石に危険と考えた青年は瞬間移動を使い彼女の背後に回り、優しく受け止める。
「今日はここまでかなあ。まだまだ魔王を殺すには実力足りないけどね。でも自立するのもあと少し…かな。」
嬉しいような悲しいような何とも言えない表情をして腕で抱えている意識のない少女を横抱きに抱え直し、夜空より暗い瞳で見つめる。
「少し寂しいかな」
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フレッシュさを隠しきれない初投稿です!最近の趣味は寝ること(くず生活)