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地球の植民  作者: でうく
第Ⅰ章:『緋色(ひしょく)の空』が視える者たち
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Ⅴ.マーシャル襲来

「バッキー・・・」

私は目を覚ました。アンの声や物音が聞えていたから、正確には眠っていなかったのかも知れない。だが、体が動かなかったのは事実だ。眠っていたのではなく、寝ていたのかも知れない。

その結論はすでに出ている。やはり私は眠っていたのだ。脳は活発に活動しているが、体は活動を休止している。まさにレム睡眠――夢を見ている状態と同じである。これに呼吸が休止した場合、人々は金縛りと騒ぎ立てるのだ。

目の前にアン。思わず目を逸らしてしまう。目を伏せて、ソファの背凭(せもた)れに手を掛け起き上がると、アンがたどたどしい口調でこう言ってきた。

「帰っていたのですね。今日は早く終ったのですか?」

「途中で帰ってきた」

私は髪を掻き上げてそのまま膝の上で頬杖をつく。私の好物のホット‐ミルクが目の前にあるテーブルに置かれた。その女性らしい気遣い(現代では死語となっているが)とは裏腹に、アンの声には非難と詰問が多く含まれていた。

「何故です?」

(たま)には妻と二人きりの時間を・・・そんな洒落た言葉など、私にはとても利かせられない。沈黙が続く。やがてアンは、寂しげに笑った。

「・・・疲れていたのですよね。ごめんなさい」

・・・?アンがおかしい。私が眠っていた時からおかしかったと()えば、おかしかったのだが。


まるで私が研究を続けねば困る口調。しかも何か大きな意味合いを持っていそうだ。

私はアンのスラリと伸びた白い手を見つめていた。

「サーベイヤー」

マーズ=リコネッサンス=オービターがコンパクト‐カメラを取り出し、何やらいじる。サーベイヤーは授業を中断する際に挙手する様な感じで手を挙げて

「サーベスでいいよ。呼び難いだろ?」

と言った。相手はカメラに視線を当てたまま笑うと

「じゃあ俺もリコネスでいい」

と言った。

「サーベス」

「ん?」

リコネスは早速サーベイヤーを渾名(あだな)で呼ぶと、きれいに手入れされたコンパクト‐カメラを突如、彼に向けた。


「は~い、ピ~ス♪」


ぱしゃ♪なかなかいい写真が撮れた。リコネスは満足げにそのコンパクト‐カメラを見た。サーベスもノリノリのピース‐サインである。

「よし」

じゃ、と言って後ろ手に振り歩いてゆくオービター。サーベイヤーは待ち!と叫んでオービターを引き止める。

「なに」

振り返ったオービターは笑顔ではなく、また先程の他人を観察する様な仏頂面であった。サーベイヤーは手を伸ばして手招きをする。

「つわものよ。弱者を助ける気は無いか?」

「無いね」

用捨無い返答がすぐにきて、がっくりと肩を落すサーベイヤー。そんな暢気(のんき)な彼の姿を見て、オービターは嘲笑する様に口角を上げた。


「それよりさ、いいの?」


「?」


彼は、状況をよく呑み込めていない様である。オービターは呆れた顔をして、先程出したコンパクト‐カメラをサーベスに見せた。



写真(コレ)さ、マス‐コミの方に提供しても」



「は」

サーベスは、率直なただ感想を、平仮名一文字できれいに纏めた。開いた口が塞がらないと謂ってもいいだろう。

「何で」

「いや、俺を追わないから」

今度はリコネスが困った様に言った。肩をすくめて、だが何処か(たの)しそうだ。



「“緋色(ひしょく)の空”を視られるヤツなんて、そうそういないぜ?

アンタの事がワイド‐ショーなんかで取り上げられたら、国立航空宇宙局辺りにスカウトでもされて、定職も決るんじゃねぇの?」



サーベイヤーはカチンと来た。オポといいこいつといい、何故会う人会う人こんなにエキセントリックなのか。いや、それよりも



ニートである事を知られている。



「“緋色”の事となると、誰も彼も盲信的になるからねぇ。(コレ)になるのよ」



そう言って、オービターは親指と人さし指で輪っかを作り、金を示した。

「君って人は・・・・・・!」

「アンタもさ、困ってたんじゃん?なんかこう・・・スパイ・オポチュニティに協力させられてさ。解放され定職付、俺は金ガッポガポ。互いの為に、いんでない?」

サーベスは、心苦しそうにタートル‐ネックの襟に顔をうずめた。わざわざ両手を使って襟を立てて。オービターはおっ、と期待する。

「―――俺には、もう帰る家が無いんだ―――!」

「いや、俺にも無いから」

えぐえぐ甲羅の中で泣き始めるサーベスに、オービターは冷静にツッコミを入れる。顔の前に手をやり、手を動かすフリをしてその実顔を左右に動かしながら。

「むっ!それはいかん!」

サーベイヤーはぬわっと顔を出し、皮膚を襟に引っ張られストッキングを被った強盗の様な出立ちになりながらも

「いいか、リコネス!家というものは、出来る限り家賃が安い方がいい!いつ、何処で吹っ飛ぶかわからないから!月の払ったその日に吹っ飛ぶ事がある!!」

「ドコで吹っ飛ぶって家で、てか家が吹っ飛ぶんだろ」

サーベスの演説に、極めて冷静に応対するリコネス。サーベスはそうそう、と適当に相槌を打ちながら


「デーブ=インスペクターがコメンテーターとして出る『Charamil TV』の内コーナー『情報最前線』で扱われた『スパイ・オポチュニティ≠(イコール)マーズ=エクスプロレーション=ローバー!?』と『キャリア美女(ビジョ)刑事(デカ)の華麗なる諸行』?・・・の記事の情報提供者M・R・Oの正体は君だな!?マーズ=リコネッサンス=オービター!!」


「長げぇよ」


即座に斬り捨てるオービター。無理も無い。(おもむろ)に紙を出してそれを口に出して読んでいるのである。オービターの顔は一度も見ない。

恐らく、シェリフが書いたのだろう。牢獄内で接触した時に『M・R・Oをさがせ!!』の紙とは別にするか、その紙に細工をするかでサーベスに渡したに違いない。そういった面では頭の切れる彼女なのだろうが、国語は弱いようだ、とサーベスは思った。

『ビジョデカ』は明らかに本人の想い入れがみっちりだが『所業』を『諸行』と書いた事がシェリフのささやかな抵抗であった事を彼はとんと知らない。いや、まず誰も気づかないだろう。単なる書き間違いと皆思うはずだ。あと、『オポチュニティ≠ローバー!?』のキャッチーな見出しは彼女が勝手に考えたものである。


「しょうがないじゃん。真実を社会に表明するのが報道の仕事なんだから」

「なるほど・・・」


長い言い回しをした割には、彼のたった一言で言い(くる)められるサーベイヤー。紙の裏に“真実、社会表明。之、報道ノ仕事”と書き込んでいる。催眠とか洗脳とか、マインドコントロールとかすぐ出来そうだな・・・という物騒な事をオービターは思った。

「先生」

サーベスがメモを片手に手を挙げる。リコネスは、こいつ、学生時代はきっと真面目な生徒だったんだろうなぁと思い、返事をする。

「なに」

「シェリフとオポの事は解りました。でも、俺の事を売るんだったら、先生も自分を売らないと理屈としておかしいと思います」

「それは・・・」



オービターが言い掛けたその時、すぐ側で爆発音が轟いた。サーベスは見上げ、リコネスはカメラを構える。



何かが空中浮遊している。




「「ふんふんふんふん!!」」




妙な掛声と共に、二人三脚で人が墜ちて来る。一人はマーズ=ステート=シェリフ、もう一人はマーズ=エクスプロレーション=ローバーだ。


「!」

逸早(いちはや)くそれに気づいたオービターは、次々とシャッターを切る。1個目を数秒で使い切り、鞄へ放り投げつつ2個目で撮る。

「すげー手捌き・・・」

サーベイヤーが遠い眼で彼を見る。結局、彼女等が完全に着地するまでに、彼は5個のカメラを使用した。サーベイヤー、後ろで拍手。


そして、散々きゃあきゃあ言っていたオポがムク・・・と起き上がり、早速シェリフを罵倒する。

「痛い!形勢逆転じゃないですか!地方だからって甘く見ているからこうなるんですよ!!」

シェリフも勢いよく起き上がって、白眼でオポに()え掛る。

「うるさい!あれは・・・何だ。そうだ!カウンティのせいだ!奴が裏で手を()いていたに違いない!!」

「そうやって自分の失敗を他人のせいにするのやめてください!大体、そうならば爆破した意味が無いじゃないですか!!」

今度はぎゃあぎゃあ喧嘩を始める二人の女性を見て、オービターはまた違うカメラを構えた。


「ステート=シェリフとエクスプロレーション=ローバーに繋がり、アリ。と・・・・・・」


「撮られてるぞ!」

サーベイヤーが叫ぶ。オポとシェリフは飛び跳ねて(おどろ)いたが、オービターにも予期せぬ事だった様で愕いてピントがズレた。


「サー・・・ベ、ス・・・・・・」

オポがドキドキはにかんだ様な顔をしてサーベスを見る。すると自然に、オービターの姿が眼中に飛び込んで来た。

「・・・・・・?」

何気に傷だらけのカレ。傍には立ちはだかる様に男の姿が・・・・・・!

「あなた・・・サーベスに、何て事を・・・・・・!」

「「してないって」」

豊かな想像力を働かせて、勝手に物語を構築してゆくオポチュニティに、二人は真顔でツッコむ。サーベスは苦々しい顔つきをすると

「オポ・・・すまん・・・・・・」

と非常に申し訳無さそうに言った。今まで見た事の無い彼の表情に、オポは驚いて駆け寄る。これでお別れなんて嫌だ。

「どうしたんですか・・・・・・?」

オポが傷ついたサーベスの手を握る。サーベスは驚き、でも手を握り返してくれた。皮肉を嗤い、俯き、恥らいながらも遂にオポに告白したのだ。

「足挫いた・・・・・・」

オポが5秒ほど掛けて、じわじわと身体の全内腔が開き、目も鼻も口も、それぞれに開いた状態で固定した。

「・・・・・・は・・・?」

「結構大きな音がしたんだよねー。ぐきって。で、さっきからどうも痛くて・・立てないのデス」

サーベスが挫いた方の足を立たせようとする。しかし、結構ひどい様で、完全に立つ前に膝が勝手に地面に着き、彼は呻いた。

「逃げられないじゃないですか!」

オポがそう言った途端、バラバラとヘリコプターのプロペラの音が聞え始め、あっと言う間に耳を塞ぐまでの大きさまで近づいた。



「「「!!」」」



それは警察ヘリであった。これから地球へ移民しようという時に、よくそんな金があったものだ。まぁ、警察にとってみれば警官が犯罪者と共に脱獄したとなれば一大スキャンダルだろう。そして、例の如く此処に居るゴシップ記者がヘリの写真を撮っている。

「ハ!あたし達なんてあんな上から落ちてこの程度のキズなのに、あんたは捻挫かい!?チキンだね!チキン!」

「普段自分が言われてる事を、ここぞとばかりに連発しないでくれるかなぁー?」

いがみ合うシェリフとサーベス。この状況下でよく互いの声が聞えるものである。ヘリからヒトが出て来た事にオービターが気づいた。メガホンを構えている。



『ステート=シェリフ!!』



げっ!とシェリフは蛙の鳴き声のような声を上げる。

地方警察が大掛りにヘリなど出せるものではない。



『其処にスパイ・オポチュニティも居るな!!』



大御所の登場。マリネリス地方警察が、国家刑事警察機構に助けを求めたのだ。ヘリコプターは一応飛行しているのだが、カセイ谷から見ればそれなり、だがルナ平原・タルシス等彼等が来たであろう地域から見れば超低空飛行である。飛び降りんばかりの大御所。

「ボロさま・・・・・・!」

言った途端、ドン!と砲弾が飛んで来て擦れ擦れで4人の合間を通過する。ボロ=マーシャルが吼えた。

『ボロさま言うなと言っているだろう!キモイんだ!貴様は!!身の程を(わきま)えろ!!』

・・・おじさまが略語を遣う事の方が数倍キモイと思うのだが。此処に居る全員がそう思ったのだが、(あえ)て誰もそれを口にしなかった。


オービターがカメラを構える。偶然であろうが、マーシャルも軽機関銃を構えた。



5.56㎜ ICPO弾がぶっ放され、一時的に4人は散る。サーベスは動けなかったが、背面が壁だと案外弾は(あた)らないものだ。



マーシャルが弾を入れ替える。それより幾等(いくら)か手早く、オービターがカメラを入れ替えてマーシャルを撮った。


その間に、オポが立てないサーベスの元へと駆け寄る。それに気付いたシェリフは、呆れた様に溜息を吐いて、オポについてゆく。

「サーベス!!」

「来るな・・・オポ・・・・・・」

サーベスが力無く言う。確かに歩けない。だが彼が追われている訳では無い。正直なところ、オポ達が来ると自分まで撃たれる。

と、がしっとオポの居る反対側から肩を掴まれ、サーベスは驚き振り返った。

「オバサン・・・!「お姉様と御呼び!!」

シェリフがゴン!!とボロさま式スラム‐ダンクをする。サーベスの脳はぐわんぐわんした。

「全く!しょうがないガキだね!ほら、行くよ!めんどくさいが肩貸すよ!」

「は」

少しの間、脳みそが創った幻想の鳥と戯れていたサーベスは、シェリフが自分の肩に首を通すのを見て思った事を一文字で述べた。

「あんたが撃たれると心配して、オポチュニティ(こいつ)の逃げにキレが無くなってる。そしたらあたしの足手纏いになるからね」

「オバサン・・・・・・」

どっこらせ、とサーベスを担ごうとするオバサン・・・サーベスは顔を真っ(さお)にした。

「い、いや結構・・・・・・!そうなる位なら自力で歩く・・・!」

「は?立てないっつたじゃん」

? シェリフだけでなくオポも怪訝な顔をする。一頻(ひとしきり)写真を撮ったオービターは、手早く片付けを済ませながらサーベスを観ている。

「・・・・・・・・・重いから。俺」

サーベスの決死の告白に、オポは蔭で爆笑す。サーベスショック。シェリフも、笑うまいと努力した結果妙に歪んだ顔になりつつ言う。

「なぁに15の乙女みたいなコト言ってんだい!15の女だってイマドキ、あんなのなのにさ!」

シェリフがびし!とオポを指さして高笑いをする。オポは彼女に近寄って、彼女の指を逆向きに反らした。

「よーけーいーなーおー世ー話ーでーすー」

ぐぐぐ・・・と反らす力を徐々に加えてゆくオポチュニティ。シェリフはあひゃひゃと笑いながら涙目になる。そして、やっと怒った。

「痛いね!あんた!」

「あーらぁ、ごめんなさい?更年期のヒトは痛覚が鈍いのかと♪実験です♪」

「あたしゃまだ更年期じゃ無いよっ!」

醜い女の争い。戦渦にいるサーベイヤーたじたじ。そして現に、砲弾と銃弾の雨が降り注いでいる。


「てーかさ」


(ようや)くリコネッサンス=オービターが口を開いた。オポが真先に反応する。

「なっ、何です?」

サーベスを庇う様に両手を広げて、オービターの前に立つオポチュニティ。オービターは相変らず何を考えているのかわからない様な表情で、だらんとした腕を伸ばしてオポチュニティを指さした。


「アンタ達、離れた方がよくね?」


「・・・・・・え?」


オポチュニティの眼が驚きで、新緑の色に耀(かがや)く。

片や、オービターの眼は落ち着き、暗く沈む。


「其処の黒髪クンは元々追われてなかった訳だし、今一緒に逃げたトコロで、互いにとってマイナスにしかならないぜ?後で落ち合うとか風にしといた方がいんじゃね?」


オポは耳を塞いで、首を左右に振った。

「敵の言う事は聴きません!!」

「いつから敵に・・・」

サーベスがツッコむ。はっと思い出して、サーベスは牢で受け取った紙をシェリフに返した。

「・・・アレか?」

シェリフが、オポと揉めるオービターを見ながら紙を広げる。広げるとそれには“真実、社会表明。之、報道ノ仕事”と書かれていた。

「・・・・・・何だ、コレ」

「あれがリコネス・・・マーズ=リコネッサンス=オービター。その紙に書いてある言葉を読み上げたら、あっさり認めた」

「コレか?コレをか!?」

シェリフが眼球が飛び出さん力み具合でその紙を凝視する。それには“真実、社会表明。之、報道ノ仕事”と書いてある。

「そうだろうな・・・」

シェリフは納得した。というかオービターそのものを見ればそんな事は訊かなくとも解る。何故そんな事を確認する必要があるのか。シェリフとサーベスの会話が微妙に噛み合っていない事に気付く者は居なかった。

「!待て!じゃあその、M・R・Oって・・・・・・!」

シェリフはほぼ独力で結論を導き出した。不思議な事に、ココから先は会話が噛み合ってゆくのだ。


「敵で結構」


オービターの無表情に、微妙に感情が(まじ)る。あまりいい感情では無い模様。それでも最小限の顔色の変化だ。

「アンタ、結局その黒髪クンの同意を得ず引き()り回してるんだろ。それってさ、リバティ権を侵害してるってコトで犯罪になるんだぜ?なぁ、刑事サン」

「あっ、ああ」

急に振られ、シェリフはばつが悪そうな顔をする。逃走の罪の意識は有る様だ。オービターは面白いのか、猫の様な眼を細めて笑った。

「そういうコトだよ。マーズ=エクスプロレーション=ローバー?」

オポチュニティが目を見開く。サーベスとシェリフも、(むし)ろ彼女のその後の反応が気になって目を(みは)る。



『私の存在を忘れるなぁーーー!!』



ドーン!と、大砲のぶっ放される大きな音がカセイ谷に轟く。

弾の雨がひどくなる。マーシャルはギターの弦を弾ずるミュージシャンの如く、華麗に軽機関銃を弾ずる。

『フォッフォッフォッフォッ!!警察側(こちら)からすればスパイ・オポチュニティとステート=シェリフが出て来ればそれでよいのよ!!さぁ潔く出頭しろ!!貴様等は包囲されている!!』

ある事無い事豪語し、砲弾を花火の如くバンバン飛ばすマーシャル。遂に気が触れた!?ヘリ内で砲弾の準備をするマーズ=サン=バジリデは慄いた。

「くっ・・・!」

オポチュニティが非常に悔しそうな顔をする。ポンチョの様なコートの中で拳を握り締めると、オービターの傍に歩み寄った。

「・・・わかりました」

「・・・?」

オポはわかっても、他3名は意味が解らない。オポチュニティはくるりと振り返ると、サーベイヤーに向かって言った。


「私達、別れましょう」


「はっ?」


少々言葉に語弊がある様な気がする。オポは言うだけ言って叉オービターの方を向くと、彼がした様に、彼を指さして言った。

(あなた)のアドバイスに従いましょう。私達は別れます。ただ・・・その間・・・」

今度はサーベスを指さす。そして、一呼吸置くとオービターに頭を下げた。



「サーベスを匿ってやってください」

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