第6話「学校での僕たちの日常」
火曜日は忙しくて投稿できなかったため今回2話投稿です。2話目は20時ごろ。
「じゃあ、私は友達に挨拶してくるから!ゆうちゃんまた後でね!」
「うん、また後で。」
そういって僕達は並んで自分たちのクラスに入り、そのまま僕達は自分たちの友人に挨拶するためにそこで別れた。
ちなみにいつも何故かまりんと並んでクラスに入ると男子達から鋭い視線が向けられてしまう。正直登校するときとかにもすごい注目浴びるからなぁ…。
そうして僕は自身の机にまず荷物を置きに向かった。クラスにはすでにそこそこの人数が集まっており、立ちながら雑談をしている人々をスイスイと避けながら進み、そして僕は窓際に近い席の後ろの方の席に着いた。そこでゴソゴソと教科書を机の中に入れたりしていると、僕の机の前に2人組の影が立った。どちらも見知った顔なので、僕は笑顔で挨拶をした。
「おはよう、高崎、みちざね。」
「ええ、おはようございます。優太郎。」
「いよぉ優太郎ォ!今日もシケたツラしてんなァ!」
「あはは、そんなシケたツラかなぁー?」
「いえ、むしろツヤツヤしているようにも見えます。学園のアイドル様とのご登校でございますし、元気ハツラツな顔をしないはずがありませんね。」
「なはー!そりゃぁそうかぁ!でも安心しろォ?俺ァ人の幸福を応援するタイプの童貞だかんなァ!存分にイチャイチャしやがれィ!」
「べ、別にイチャイチャしないけど!」
そういって高崎には真面目な顔でよくわからないことを言われ、ケラケラ笑っているみちざねにはなぜか揶揄われてしまう。どっちも非常に個性的な人物たちだが、れっきとした僕の友人だ。
ちなみに高崎というのはこの真面目そうな口調の方だ。黒色の髪は少し長めで目に若干かかるくらいに前髪を伸ばし、眼鏡をかけている目元の『キリッ』としたイケメンである。テストではいつもまりんに次いで2位を独占し続け、生徒会副会長を務めるすごく真面目なやつだ。女子からの人気もすさまじく、まりんほどではないにしてもすごくモテる。あと着痩せするタイプだ。
もう片方のヤンキー口調の方はみちざね。大きなリーゼントを携え、薄くそられた眉毛や睨みつけるような鋭い目はヤンキーそのものだが、根はめちゃくちゃ良い奴である。人間不信気味な僕も彼のことだけは心の底から信頼している。
二人とも僕の友人だ。僕自身あまり友達を作ろうとしない人のため、しゃべりはすれども他の人はクラスメイト程度の関係だ。だから僕の友人はこの学校では2人だけとなるのかな。
みちざねとは中学校からの友達で、唯一僕の事情を知る人物でもある。
高崎の方は高校からの友人である。未だに彼のような人気者の奴がなぜ僕と友達になってくれているかはいまだにわからないが、彼はまじめだがすごく優しい奴のため、僕もそこそこ気を許している。
「それよりもうすぐ中間テストですよ。優太郎はともかく、みちざねは大丈夫なのですか。」
「あん?俺ぁしっかり赤点はとらねぇように勉強してっかんなぁ!しっかり赤点ン回避して、童貞の名をけなすようなこたぁしたくねぇからなぁ!」
「ええ・・・。もっと上を目指そうよ。」
などと無駄な話をしながら過ごす学校生活。中学の頃はバイトや育児や高校のための勉強で忙しかったため、こうして空いた時間に無駄話ができるくらいに余裕は出来たんだなぁと思うとなぜかくるものがあるなぁ。中学時代は朝は新聞配達、放課後は別のバイトか子育ての手伝いで時間がつぶれていたため、朝の時間や休み時間は必然的に勉強時間か睡眠時間に充てられていた。だからこそこうして無駄話をするようなこと一つとっても僕にとってはとても新鮮なものだった。なぎささんや僕の両親にはもっと学生らしいことを経験しろと言われているが、僕としてはこんなことができるだけでも幸せだった。
それよりももうすぐ中間テストかぁ…今回こそ順位一桁を狙いたいものだ。
「ゆうちゃーん!」
「ぐほぁ!」
突如背中から強い衝撃を受け、僕は口の中にあった空気が外に吐き出される感覚を味わった。しかしすぐにそれが何者かに勢いよく抱き着かれた衝撃だということを理解する。腕は首に回され、背中にはやわらかい何かが押し付けられた。この人物の正体はおそらく…
「えへへー。です。」
「いやあんたかよ!」
僕は抱き着いてきたのはまりんだなと思い、後ろを振り返って確認したがまりんではなかった。後ろには金髪をサイドテールに纏めた少女がいた。道理でまりんにしては背中の感触が乏しいなと思ったわけだ。すごく失礼だけど。
「なーつーこー!なにやってるの!」
「い、痛いです!止めるのです!頭がバカになってしまいます!」
その後その金髪の少女は僕の体から力ずくで引き放されて、何事かと後ろを振り返るとその時にはその少女は頭をグリグリされてジタバタと暴れていた。ちなみにグリグリしているのがまりんだ。
「お、おはよう、木村さん。」
「おはよイタタタタございまイテテテテすゆうちゃんさアァ!イタイイタイイタイ!!」
挨拶をしようにもグリグリがやむことは無く、おはようございますすら言えていなかった。まりんはかなりご立腹らしく、目元のところまで陰で暗くなっており、頭には青筋が出ていた。
ちなみにこのグリグリされている人物は木村夏子。まりんの友人の一人だ。
そもそもまりんの女子の交友関係はとても広く、クラス学年問わずにいるくらいだ。その中でも特に仲の良い3人組がいるのだが、そのうちの一人がこの人だ。
金色のセミロングな髪をサイドテールでまとめ、大きな緑色の瞳に幼い顔立ちで、しかも身長が低いため中学生くらいにしか見えない。しかし彼女もまりんに劣らないくらいにはかなりの美少女だ。一部から「木村さんの赤ちゃんになりたい」とよく言われているが、僕から見たらただの馬鹿にしかみえない。彼女には悪いが。
ちなみに3人組のうち2人はさっきまりんがいた席の方からこちらを見ていた。先ほどまで4人で固まって話をしていたようだ。一人は銀色の長髪の凛とした佇まいの美女で、もう一人は丸眼鏡を掛けて口を『△』の形にしている黒髪の少女だった。
「で、結局なにか用事があったの?木村さん。」
「いえ、単純にまりんの愛しの旦那をからかいにきただけです。」
「えぇ…。」
ようやく解放された彼女は頭をさすりながらもあっけらかんと答えた。そういうとまりんから鋭く睨まれてしまい、木村さんは『ヒィッ!』とおびえた声を出した。
そう、彼女は馬鹿だ。いつも僕をからかいに来ていつもまりんにとっちめられている。木村さんは学習しないのかな…かもめのほうが多分賢いよ…。
「もう、ゆうちゃんは私だけが触っていいの!ねー!」
「ちょ、ち、近いよ!」
そういってまりんは木村さんと同じように首に腕を回して抱き着いてくる。そうすると今度は背中に当たるものの質量が大幅に増えた。僕は頬が熱くなり、なぜかすごく恥ずかしかった。
『ギロリ!』
何故かまりんに抱き着かれてから一気にクラス中から鋭い視線を浴びせられた。彼女は僕と付き合っているという噂が流れている今でも根強い人気があり、こういうことをされるたびにいつも嫉妬や殺意の視線を向けられてしまう。しかも廊下の方にも彼女を見に来ている他クラスや他学年の人物もおり、その人たちからも視線を向けられてしまう。もしまりんとの間に実は子供がいるんですとか言ったら殺されそうだなぁ…。
「ちょ、ちょっと!みんな見てるから離れて!」
「えー、別にいいでしょ!私たちの仲なんだから!」
「本当にそういうところだから!」
そういって僕は強引にまりんを引きはがす、めちゃくちゃ強い力で抵抗されたが、僕が必死にもがいていたら向こうから力を弱めてくれた。あぁー、死ぬかと思った。いろんな意味で。
「ほ、ほら!まりんの友達も待ってるだろうから早くいってあげな!」
「ぶー。あとでしっかり構ってよね!」
「はいはい、わかってるよ。」
「あー強引に引きずられるのです~。」
そういってまりんは木村さんの服の襟をつかんでそのままズルズルと引きずって2人組の方へ戻っていった。よくわからないが今になってどっと疲れが沸いてきた。未だに睨まれてるし、なんか朝なのにすでに授業の気力をそがれてしまった。
「なはは!見せつけてくれるなぁ!これだから童貞は辞められねぇんだァ!」
「ふふ、あまり風紀を乱さない程度に仲良くしてくださいね。」
あぁ、そういえばこの2人の存在を忘れていた。なんで僕がやられているのを黙ってみているんだ。みちざねはケラケラと笑っており、高崎からは微笑ましいものを見るような視線を送られてしまった。
あ”ぁー。疲れたー…。
僕が気力をそがれた状態でぐでーんと机で手を伸ばしてだらけていると、朝のホームルームの時間を告げる鐘が鳴り、教壇にはいつの間にか教師の姿があった。
高崎とみちざねもそそくさと自分の机へと戻っていった。教師の朝の連絡事項や無駄話を、ボーッと倦怠感の残る体で聞いていた。教室の開いた窓からは春のあたたかな風が舞い込んできて、この倦怠感を含んだ体を優しくなでていた。ポカポカとした温かい日差しと相まって非常に眠気を誘われてしまった。
あぁ、まずい、これは眠くなってしまう。そう思った僕は背筋を伸ばして眠気をごまかすように教師の話にしっかりと耳を傾けていた。