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第3話「過去その2_今後についてと2人の意思、そして出産…」



こうしてあっという間に時は過ぎ、僕はまりんの両親と、僕の両親を交えて話し合いが始まった。


まず妊娠に至った理由について聞かれた。

これについては、僕とまりんの両者の性についての認識や危険性について深く理解していないがための過ちに至ったと僕の方から話した。

もちろん嘘だ、原因はあの倉庫での出来事が原因であろうが、それについて話すのはなんとなく拒否感が沸いたのだ。

もちろんその事をまりんに話したら、全て私の責任だから僕が咎められる理由は何も無いと言っていた。

しかし僕は、あの出来事を素直に話すことは、まるで自分は無関係であり、罪は全てまりんにあると言っているようで、それはなんとなくはばかられたのである。

それに、もしその通りに話してしまえば...彼女は僕に遠慮して、遠くへ行ってしまう。どうしてかそう思ってしまった。何故か僕はそう考えたら胸が酷く傷んだのだ。

ちなみに嘘をつくと僕があらかじめまりんに伝えたのはこの前の帰り際である。彼女は僕が罪を被る必要はないと必死に説得しようとしていたが、僕はかたくなに譲らなかったのである。


そうやって偽りの事実を話すと、僕は僕の母親に強くビンタをされた。

「何を馬鹿なことをしているの!」と強く言葉を投げかけられ、父は「まぁまぁ」と母を諌めていた。

そうであろう。僕のせいで両親に迷惑をかけてしまった。そんなバカ息子のことを許せるわけがないだろう。

向こうの両親は黙ってそれを聞いていた。なぎささんは表情を暗くしており、まりんの父は腕を組んで考え込むように目を閉じており、まりんは相変わらず落ち着きはらっていた。


こうして次に、孕んだ子をどうするかという議論に移った。僕の父と母は概ね中絶することに意思が傾いているようだった。経済的理由や、身体的な負担の考慮、そして僕らの可能性のある将来を早いうちに潰されてしまうという懸念があったがために、その結論に至ったのだろう。中絶以外認めないという意思がないのは、やはりそれが命であるという事実が重くのしかかっているのだろう。なぎささんはあまり中絶に対しては乗り気ではなく、まりんの父はというと...


「俺は、まりんの意志を尊重したい。」


とだけ告げていた。まりんの父は、娘はもちろん僕のことも一切咎めるような姿勢を見せていなかった。もしかしたら原因について薄々と気がついているのかもしれない。でも嘘をついてまで庇った僕のことを案じて、嘘をついたことについてはあえて触れていないようにも思えた。

そして僕の意見はというと...僕もまりんの意思を尊重したかった。彼女は先程からずっと落ち着いた様子を見せており、もしかしたらすでに自分の中で答えが見つかっているのかもしれない。もしそうなのであれば僕はまりんの味方をしたいと考えていた。


「私は」


先程からだんまりを決めていた彼女だが、彼女に判断を委ねられていると分かると、やはり落ち着き払った様子で、まるですでに言う言葉を決めていたかのように、すらりと気持ちを口にしていた。


「私は誰がどう言おうと、この子を産みます。」


ざわっ。まりんの父以外はその言葉に驚きを隠せないかのように動揺した。

そして、僕はそれを聞いて...ひどく安堵したような心境に陥った。

そうか、もしかしたら僕が感じていた罪悪感は、もちろん向こうの両親や僕の両親に酷く迷惑をかけ、まりんには負担をかけることに対しても持ち合わせていたが、罪悪感のひとつに、望まれていないにも関わらずこの世に生を受けてしまい、大人の都合によって捨てられてしまう我が子への謝罪の思いもそのひとつに入っていたのかもしれない。ならば僕の答えはひとつだった。


「はい。僕もまりんの意見に賛成です。中学に通う間はご迷惑をおかけするかもしれませんが、僕は中学を卒業したら働きます。」


僕がそう答えると、僕の両親からは反対の意見があがった。なぎささんはそれを聞いて罪悪感を感じたような表情になり、まりんの父は僅かに眉毛をピクリと動かしただけで、言及をするようなことはなかった。


両親からは、「そんな早いうちに将来を決めつけるようなことはさせられない。別にこれ以降子供を産めないわけではないし、やり直しだって出来る。だから考え直して欲しい」というようなことを告げられたが、僕は思いを変えるつもりはなかった。

おそらくまりんが堕ろしたいと言えば、僕は悲しいながらもなくなくそれを受け入れていただろう。しかしまりんは僕達の子を産みたいと言った。ならば僕はその意見を尊重してあげたいと思った。


僕は考えを変えるつもりはない。と強く何度も言い返すと、両親はしぶしぶと言った感じで受け入れてくれた。


ただし、話し合いの結果、僕には高校だけは絶対に通えと強く言われ、そこだけは譲れないと強く言われてしまい、僕が折れる形となった。経済的な援助や出来るだけの手助けもすると言っていたため、まりんの意思やまりんの両親の都合を確認してからではあるが確かにそれならば通いながら子育ては出来なくはないと考えた。別に通信か定時制であれば仕事をしながらでも行けるとは思ったのだが、両親はできるだけ普通の高校生活を経験してほしいと言っていて、全日制の高校を強く勧められた。


それで、まりんはどうするかと聞くと、出産をしたら中学を休んで子育てに専念するらしく、その後の予定については、今この場で話し合わされた。

結果として、高校には行くことにして、高校にいる間はなぎささんが面倒を見ることになった。彼女も通信か定時制でも構わないと言っていたが、まりんの両親が僕の親と同じような理由で強く反対したため、結局彼女も全日制の高校へ進むことになった。

中学を休学すれば、内申がほぼ機能しなくなることは明白だが、その内申で行ける高校はあまり治安が良くないため、内申がなくてもそこそこ偏差値が高くて家から通える私立が奇跡的に近くにあるため、そこに通うことにするようだ。幸いまりんの成績は驚くほど良いため、問題なく合格することが出来るだろう。


その後もさまざまなことを決めていき、ある程度の方向性が決まっていった。

やはりこの歳での出産はかなり危険ではあるが、話し合った結果しっかりと出産をすることが決まった。

子供が産まれてからは、まりんは中学を休学して育児に専念し、僕は中学に通いつつも中学生でも出来るバイトに参加しつつ、まりんの家から通うことによって子育ての手助けもしていく方針だ。必然的に部活には顔を出せなくなるだろう。娘が1人増えたようなものだし、バイトはしなくても良いとなぎささんは言ってくれたが、やはりこれは僕達の責任であるため、わずかでも育児費の足しにして欲しいと思ったため譲らなかった。

そして、育児にはそれなりに負担があるし、僕もできるだけ手助けがしたかったため、まりんさんの両親に頼み込んで家に居候させてくれないかと頼んで、了承を貰うことが出来た。


こうして話し合いを終えた僕達は、出産にむけてさまざまな準備をしていった。


そうして月日は経ち、現在は4月。始業式を終えて、僕達が中学2年生になっていた頃...


「おんぎゃー!おんぎゃー!」



僕とまりんの間に小さな命が誕生した。


 

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