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亡くなった人にもう一度逢えたなら

駅を出てからバスに乗り停留所を三つほど超え次の停留所で降りた。山崎さんに家までの道のりを案内してもらい玄関の目の前まで来た。が、なんと言って奥さんに会えばいいのだろう…

腕時計で時間を確認すると時刻は11時を回ったところだった。時間としては授業を受けているはずの高校生がいきなり訪ねてきたら不審に思ってしまう。頭の中で悶々と考え混んでいると山崎さんが口を開いてこう言った。

「僕の教え子といえばいいよ 教師をやっていたから。君の着ている制服の学校にも数年前に赴任したことがある」

それならとインターホンを押した。中から人が出てくる気配がない。聞こえてないだけかと思いもう一度押してみた。チャイムが響くだけで中には誰もいない出かけているのだろうか。

日を改めて伺おうと歩き出したとき声を掛けられた。

「あの何か御用でしょうか?」

玄関から一人の女性が現れた。長い黒髪に目鼻の整った顔立ちすらっとした容姿の出で立ちをしたとても綺麗な人だった。

いないものだと思っていたから急すぎて慌ててこう言った。

「ええと、山崎先生が亡くなったと聞いてご焼香をと思いまして」

やばい焦っていると疑われるかもしれない。

「祐一さんの生徒さん?わざわざありがとうね。

さ、どうぞ」

だけど、深く探るようなことも聞かずに俺を入れてくれた。仏間に入ると山崎さんの遺影と仏壇が置いてあった。山崎さんの方を見るとなんとも言えない表情をしていた。

もし、俺が幽霊で自分の遺影を見たら同じ表情をしているだろう。



焼香を済ませると奥さんがお茶でも飲んでいってと飲み物を出してくれた。向かい側に彼女が座って対面するような形になった。

「連絡も無くいきなり訪ねてしまってすいません」

「いいのよ 祐一さんも教え子に来てもらえて喜んでるだろうから」

「いい生徒に恵まれてたんだなあ、祐一さんあんまり仕事のこと話さないから知らなくてね。でも仕事以外のことだと色んなことを話してくれて一緒にいられてとても幸せだった」

俺としては数時間前に彼に出会ってほとんど知らないようなものだけど、奥さんの嬉しそうに話してる顔を見ると本当に幸せだったんだと感じられる。山崎さんも彼女のにこやかに話している顔を懐かしそうに眺めていた。

お茶を飲みながら 考える。

あとはどうやって奥さんと山崎さんを逢わせるかだ。

「そろそろお暇します。ありがとう御座いました」

「こちらこそ、ありがとう」

玄関まで歩いたところで奥さんのほうに向き直りこう質問した。

「あの、山崎先生に逢いたいと思うことあります?」

奥さんは驚いたように目を見開いた。

「もちろん、会えるのなら今すぐにでも逢いたいよ」

毅然と彼女はそう答えた。

「今すぐにでも会えるとしたら彼に何を伝えたいですか?」

「一緒に過ごせてよかったと言いたいな」

「その山崎先生なら貴女の前に立ってますよ」

その言葉が彼女を怒らせてしまった。

「からかってるの?冗談にしても悪戯が過ぎるよ」

本人にわからないように能力を反映させるには見えないようにするしかない。

「目を瞑って下さい」

「何?目を瞑ったらあの人が還ってくるの?そんなバカなことあるわけないでしょう」

奥さんは声を震わせながら答えた

「いいからお願いします」

渋々目を閉じた。これで準備が整った。

「失礼します」そして、奥さんの手に触れた。



「目を開けて下さい」

俺に促されて目を開けた彼女は驚いた表情(かお)で感動のあまり涙を流して彼に抱きついて嗚咽をもらした。

「あぁ…祐一さん、祐一さんが私の前に」

山崎さんは最愛の人を抱きとめた。

「辛い思いをさせてごめん響佳」

「大切な日に君を一人にさせてしまって悪かった。寂しかっただろう」

「もう逢えないと思ってた」

「僕もさ、だけど偶然僕と話せるあの青年に出会ったんだ。成仏する前に君の顔を見ておきたいと話したら彼が響佳に逢わせてあげられると」

山崎さんが俺のほうを見て奥さんに説明した。

「失礼なこと聞いてすいませんでした」

「謝らないで私たちはこうしてまた逢うことができたんだもの。本当にありがとう」

笑ってお礼を言った彼女の顔は山崎さんが見てきた笑顔の中でも一番素敵な顔であることだろう。

「さてと、僕はそろそろ逝くよ」

「うん、祐一さん一緒に過ごせて私はとても幸せでした」

山崎さんの頰に奥さんは口づけをすると彼は照れ臭そうに笑って「僕も君と一緒いられて最高の時間(とき)を過ごせたよ。ありがとう」

最期に彼女にそう伝えて山崎祐一さんの魂は空に昇っていった。


















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