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「へぇ、結構近くまで来てるんだ。パワハラしても腐っても勇者ってとこかな。でも、これ以上は進めないだろうし」
ジュリの言葉にオオグが首を傾げる。
「なんで?」
「ゲームだと詰んだ状態だから。魔王城まではユウヤさんがいないとたどり着けないようになってる。
ちょっと地図かして」
ジュリはユウヤから地図を返してもらう、すると、スキルの効果が無効になる。
もう赤い転移も青い点も紫色の点も、そして隠し通路すら消えてしまう。
その地図を三人に見せながら、
「こういうこと」
ジュリはそういった。
そして、続ける。
「ゲームと一緒だよ。必要なアイテムなりキャラなりがいる状態じゃないと起きないイベントがある。
この追放はたぶんイレギュラーなことなんだと思う。
もしくは、」
そこでジュリは言葉を切って、オオグを見た。
「この出会いがイレギュラーだったか」
「イレギュラー?」
ユウヤが聞き返す。
「もしくは、全部がただの偶然か。わからないけどね。
ただ、勇者は【英雄の導き手】を追放したのは、明らかに間違いだったってこと。
でも間違った行いが正解っていうゲームもあるから、本当にわからない。
ただ、これはゲームじゃないし生きてればイレギュラーばっかりで正解もわからないことばかりだから、やっぱり勇者は間違いをおこしたってことになるけど。
それにしても、ユウヤさんは偉いね」
どこか遠くを見る目をしながら、ジュリは呟くように最後の言葉を言った。
意味がわからなくて、ユウヤは聞き返す。
「偉い? 何が?」
「最初だったって言うのもあるんだろうけど、パワハラされて追放されたけど、死を選ばなかったこと。
いや、死を選ぶのも権利があるからどうこう言う気は基本ないよ。
ただ、さ。なんでこういうイジメを受けて自殺をしたらダメなのか、わかる?」
「命を粗末にすることになるから?」
「うん、それもある。でも、何よりも負けになるから。
逃げて引きこもってもいい。逃げるのは悪くない。
だって、それは生きてるから。こういうことで死ぬと負けなのはね、本当のゲームオーバーになるから。
生きてる間は何度もリトライできる。
負けても勝つまで挑戦し続けることが、できる。
でもね、死っていうゲームオーバーを選んじゃうと、もうリトライできなくなる。
ここが、作り物のゲームと違うところ、死んだらそこで終わり。
だから、憎しみでも殺意でもなんでも良い、持って生きた方がいい。
だって、それは勝ちだから。逃げは負けじゃない。引き分けだよ。
それをね、やられた事のない人間はわからないから。
まぁ、つまり、何が言いたいかって言うと、ユウヤさんは生きることを選んだ。自覚の有無はさておき、生きている。
それだけで凄いなって思ったってこと。
死んだら負けってのはね、逆を言えば加害者側の勝ち逃げになるから。
勝った方は、罪の意識もなく幸せに生き続けるかもしれない。
他人を不幸にしておきながら、笑って生きるかもしれない。
それって、悔しいでしょ?」
腹が立つのは、たしかだ。
綺麗事ばかりではないのだ、世界は。
「あの国だと、美徳とされてることのほとんどが、無言の弾圧になるからね。
真面目な人ほど損をするようになってる。
ただ、経験上言わせてもらうとどんなに時間がかかってもこういうことって自分に返ってくるものだから。
中学時代、イジメをしてたやつは高校で先輩達に同じことされて、中退したらしいし。
社会人になって二年目から始まったパワハラ上司は数年後ガス漏れに巻き込まれて大怪我したり、車大破させる大事故起こしたりしたし。
同時期にあたしを貶めた、パートのババァは別の問題起こして仕事クビになったし。
これが仕返しになるのは、たしかにそうなんだけど、社会的な制裁で終われば良いよね、その勇者たち」
ジュリの言葉に薄ら寒いものを感じた。
ただ、倒せませんでした。手柄は別の人のものです、で話は終わらない、と言っているようだ。
そんなものだろうか。
「ま、たしかに、万人に好かれる存在なんてファンタジーだもんなぁ」
ジュリの言葉にオオグがそんな独り言を呟いた。
ジュリはユウヤへ地図をもう一度渡す。
スキルが有効になり、魔物や勇者たちの現在地がまた表示サレナ。た。
「その前に根本的な問題があるけどな、その勇者パーティ」
「なに?」
ユウヤはエステルを見た。
「食料とか水とか。備蓄がなくなったら自分たちで確保することになるだろうけど、たぶん、人間関係荒れるぞ」
人の悪い顔をしている美少女がそこにいた。