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 何が起こった?

 ユウヤは理解出来なかった。

 いや、違う理解できることは、ある。

 オオグの友人である、ナチが殺されたのだ。

 首がとんで、血が舞って。

 そして、死んだ。


 「何が、起きて」


 ユウヤは、視線を突如現れた褐色の肌をした青年へ向ける。

 少し、つまらなそうにその青年は、今しがた手にかけた少女の遺体には興味を示さずこちらを、ユウヤを見ていた。

 その瞳に宿るのは、憎悪。

 そして、殺意だった。


 「……お、オオグ! ナチがっ!!」


 「…………」


 しかし、オオグはユウヤの声に反応しない。

 不思議そうに首を傾げてナチの飛んだ首を見て、それから自分の手を見つめている。

 ただ、黙ったまま。


 「オオグ?!」


 オオグはやはり反応を示さない。

 本当に聞こえていないようだ。

 しかし、何か呟き始めた。

 同時に、パチッ、パチッと何かが弾ける音が響き始めた。


 「あぁ、これは、楽しくない。


 いや、知っていたはずだ、お前は知っていたはずだ。


 あぁ、そうだな。俺は誰よりも知っているさ。


 そう、そうだ。お前は知っていた。


 そう、そうだな。俺は知っていたさ」


 音は続く。

 オオグの方から聴こえてくる。


 「おい、オオグ?

 何を、何を言ってるんだ?」


 と、そこでオオグはユウヤを振り返った。

 そこには困ったような笑顔が浮かんでいた。


 「本当に、なんで俺には理解出来ないんだろうな?


 お前が望んだから。ただ、それだけのことだ。


 望みなんて、特に無かった。子供の頃からあるのはただ一つ。


 望めばいい。そうすれば全てが叶う。地獄でお前は俺とそう契約しただろう?

 あの時、お前は俺に誓った。

 俺に永遠の愛を誓った。

 そして俺はお前の残酷さ、歪み、その全てを愛そうと決めた。

 お前はあっさりと弟を切った。

 その壊れて歪んだお前の感情、お前の愛は嫌いじゃない。

 俺はお前を愛している。

 歪んで壊れたまま笑い続ける、そんなお前が大好きだ。

 ほらほら、ここにはお前の大好きな師匠はいない。

 あの筋肉馬鹿(エステル)もいない。

 ここには、お前しかいない。

 さぁ、選べ。

 望みを吐き出せ、欲を暴走させろ。

 

 あぁ、そう、そうだ。そしたら、俺は、理解出来るようになるんだろう?

 そういう契約をしたから。そして、お前は外に出る。

 だが、悪い。俺には暴走させる程の欲は無いんだ。愛とやらもよくわからない。何しろ壊れてる自覚が無いからな。


 いいや、あるさ」


 そんなオオグに訝しそうにするのは、褐色の青年もだった。

 近づいてくる青年へ、オオグは振り返る。

 ユウヤは、気づいた。音の正体はオオグの髪を束ねていた金糸の入った紅いリボンだった。

 リボンの繊維が少しずつ弾けて解けているのだ。


 「ほら、お前の大好きな、俺が嫉妬するほどお前が愛して止まない【楽しい】が近づいてきたぞ。

 さぁ俺に体をよこせ。俺にお前を喰わせろ。それだけで、お前の快楽を心を満たしてやるよ。

 俺は、恋人には優しいんだぜ?」


 バチっと一際大きな音をたてて、オオグの髪を束ねていたリボンが弾け飛んだ。

 途端に、オオグの気配が消えた。

 否、変わった。

 ユウヤの目にオオグは映ったままだ。

 そのオオグの存在が()()()()()()


 ユウヤの目に映るのは、肉体はたしかにオオグだが中身が違う。

 ユウヤの瞳には、オオグの体に重なるもう一つの影が視えていた。

 それは、ユウヤの理解の範疇を超えた存在だった。

 何か、わからないのだ。


 「…………なんだ? お前?」


 「さてね、なんでもいいさ。俺は愛する恋人のために頑張るだけだからな。

 俺の存在なんて、あってもなくても同じ。

 俺の存在はコイツにだけ認知されてればそれでいい。

 はは、これであの忌々しいコイツの師匠も、兄貴面する男(イナムラ ミコト)も出し抜いてやった!」


 そして、大声で笑った。

 狂ったように、オオグの体を乗っ取った何かは笑った。

 ひとしきり笑ったあと、ソレは指を振った。


 「あぁ、なるほどなるほど、対象を限定して能力を無力化したのか」


 そうして現れたのは、金棒だった。

 大きい棘がいくつも付いた、身の丈ほどの金棒。

 そう、もとの世界の日本で、子供の頃さんざん読んだ絵本に登場した鬼が持つ武器だ。

 その金棒を片手で持って、褐色の青年へ向ける。


 「異端な存在同士、ちょっと手合わせしてくれよ」


 オオグの口を借りて、ソレはそんなことを言った。

 

 

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