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 「あぁ、そうそう言い忘れてた。

 俺さ、師匠にも言われたんだよ。壊れてるって。

 どこがどうとかはよく分からなかったし、今でもわからないままだけど。

 わかるのは、楽しい。それだけなんだ。

 自分の体を動かすのは楽しいし、誰かと遊ぶのも楽しい。

 でもだからって、赤の他人が苦しむのを見て楽しいと思う趣味はない。

 って、聞こえてるか?」


 しゃがんで頬杖をついて、オオグは幻覚でのたうち回ったりお互いがお互いを傷つけ、殺しあってる元勇者パーティ達を見た。

 異世界の猪もそうだが、一部の魔物や動物の血には幻覚を見せる作用がある。

 不用意だった彼らにそれをぶちまけた瞬間から、それは始まっていたはずだ。

 どんな幻覚かは本人たちにしかわからない。

 少なくともいいモノではないだろうと思われる。


 「よし、そろそろだな」


 一通り幻覚に振り回されて疲れてきた、もとい動きが鈍ってきたであろうところで、オオグは大きな捕獲用の網を出現させる。

 そして、文字通り元勇者パーティを一網打尽にしてしまう。


 それから懐にしまっておいた手配書を取り出して、【生死(デッド・オア)問わず(・アライブ)】の文字を確認する。


 賞金首。

 そう金になるのだ。この四人は。

 それもその生死は問わずに。


 「あと、まぁこれは一応伝えておくと、お前らを捕まえて得た金は、俺たち以外の場合は税金から、俺たちが捕まえたら全額が慰謝料としてユウヤに渡されることになってたんだ。

 これを誰が提案したかっていうと、お前らに代わって勇者役を勤めたジュリさん。

 王様との取引は、まぁそれなりに白熱したんだ。

 でも勇者特権とでも言うのかな?

 とってきた魔王の首をよその国に持っていく、みたいな脅しをかけたら一発だった。

 あの人、パワハラにはなんか個人的な恨みがあるらしくて、それを欠片でも晴らしたくてお前らを社会的にも精神的にも苦しめるためだけに、途中から俺たちに協力してくれたんだよ。

 まぁ、八つ当たりだわな。

 でも、お前らも相当恨まれてたみたいだしなぁ、その恨みや怒りの矛先が、国に向かないようにする目的もあったみたいだし。


 怖いよなぁ。人って、怖い。

 ほんと、なにで恨みを買うかわかったもんじゃないし。

 って、聴こえてない、か」

 

 オオグの視線の先では、虫の息で動かなくなりつつある、かつては英雄だ、勇者だ、と持て囃された者達が転がっていた。




 オオグはその後、一旦ユウヤ達の下にもどると少し留守にすることを伝える。

 ただ、嘘を伝えても仕方ないので元勇者パーティのことはあえて言わず、


 「なんか、手配書の賞金首が潜んでてたまたま遭遇したら倒せた。

 ちょっと換金してくる。気にせず先に食べてていいぞ」


 とだけ伝えた。


 「りょーかーい」


 ヒラヒラと手を振ってナチが答え、ユウヤは真剣に料理に取り組んでいて聴こえていないようだ。

 そうして、オオグが換金に行くのを見送って、ナチは鍋を確認する。

 いい具合に煮えていた。



 手続きなどで、数日かかるかもと思われた支払いだがあっさりと払って貰えた。

 よくもまぁ、これだけの貨幣を用意出来たものだ。

 とは言っても、さすがに全額とはいかずいくつかの書類を書かされ、引換券のようなものをもらった。

 今後は行く先々にあるお役所で、この引換券を見せれば現金と交換してくれるらしい。

 国際指名手配ということもあり、どこの国でも換金は出来るようだ。

 この辺はジュリの本気が垣間見れる。

 八つ当たりにしては、やりすぎな気もしないではないが。


 高い位置にあった太陽が、だいぶ傾いて真っ赤になっている。


 「鍋、残ってるかなぁ」

 

 そう呟いて、オオグは役所を後にした。




***



 「うーん、個人的な考えなんだけどね」


 昼休み、のんびりお茶を啜りつつジュリはエステルへ言った。


 「なんだよ?」


 パキンっとよく冷やした板チョコを食べやすい大きさに割って、それを口に放り込んで、ジュリは続けた。


 「この前、異世界で魔王倒したじゃん?」


 「倒したな。そして瞬殺だったな」 


 「アレで終わったとおもう?」


 「と言うと?」


 「いや、テンプレなんだよねー。王道とも言うけど」


 「なにが?」


 「魔王を倒したら、大魔王が実はバックにいたーとか。

 神様が裏ボスーっとか」


 「え」


 「あれ? エステル気づかんかった?

 なんて言うか、すんごい視線感じたんだけど」


 「マジ?」


 「まぁ、他所の世界のことだし。知らん顔して帰ってきたけど、今度それで呼ばれたらあんただけでなんとかしてよ。

 この前はたまたま、連休だったから行っただけで次はないと思うし」


 そう都合よくスケジュールが合うとは思うな、と釘を刺されてしまった。

 

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