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 どうして、こんなことになったのだろう?

 わからない。

 少し前まで、彼は勇者として持て囃されていた。

 そう、この世界を滅ぼそうとしている、魔王を討伐するためにいよいよ最終決戦にと旅立つまでは。

 少し大きな街では歓待され、傅かれていた。

 勇者である彼だけではない。

 その仲間達も、英雄だと持て囃されていた。

 それなのに、だ。

 魔王城への道が見つからず、一旦情報を集めようということになり、人間の住む大陸へと戻ったのだったが、待っていたのは石を投げられ、罵詈雑言を吐かれるという扱いだった。

 すぐに、侮辱するな、と自分達に石と罵詈雑言を投げた奴らを黙らせた。

 衝動的に斬って捨てたのだ。

 たった一人だった。

 そう、斬ったのはたった一人。

 この手のひら返しはいったい何なのだ。

 訳が分からないまま、人里を離れた。

 とにかく情報が必要だった。

 そうして、まるで貧民のようにコソコソしながら情報を集めて判明したのは、自分達がお尋ね者になったということと、魔王が他の者によって討伐されていたということだ。

 魔王の首は、彼らを支援していた国。

 その、国王の元へと運ばれ、広場にてさらし首となっているとのことだ。

 では、魔王を倒したのはいったい誰なのか、ということになる。

 その答えは仲間の聖女が手に入れて来てくれた。

 それは、肖像画だった。

 魔王を倒した、【勇者一行】の肖像画。

 この肖像画は彼らを支援していた国の内外を問わずに、ばら蒔かれているらしい。

 四人組の男女の集まりだった。

 その中に、見知った顔を見つける。

 ユウヤだった。

 本来なら、自分達を魔王の元に連れていかなければならない雑用係。

 それで、全て話が繋がったように彼ーー元勇者は思えた。

 ユウヤが彼らを貶めたのだ。

 少し厳しく当たった腹いせに、国を騙して元勇者達をお尋ね者にしたのだ。

 そうとしか、考えられない。

 指名手配の件はそれで説明できる。 


 残る疑問は、ユウヤがどうやって元勇者と同等の力量を持つ人材を見つけることが出来たのか、ということだ。

 そう簡単に見つけることなど出来ない。

 見つけたとしても、ユウヤなんかの話を信じることが出来るのかというと、答えは否である。

 良くも悪くも冒険者や討伐業は実力が物を言う。


 「まさか」


 元勇者の言葉に、賢女も頷く。

 意味が分からず、首を傾げたのは魔法使いの少女と女戦士である。


 「そう、ユウヤさんはどんなに実力が伴わなくても【導く者】。

 【導く者】は、神に愛された【()】を持つと言います。

おそらく、能力を隠していたか。こちらのパーティを抜けた後に能力に目覚めたのだと思われます」


 「あの野郎っ!!」


 今までの恩を仇で返しやがった!

 そう叫ぶように言って、元勇者は肖像画を睨む。


 そこには、困ったような、でも嬉しそうな表情を浮かべている雑魚(ユウヤ)が、描かれている。


 「思い知らせてやるよ。ユウヤ。

 誰を敵にまわしたのか、思い知らせて苦しませて、殺してやる」


 暗く、黒く、元勇者が歪んだ笑みを浮かべた。




***


 ユウヤ達が、というよりジュリが魔王を倒してから1ヶ月後。

 国を上げてのお祭り騒ぎもようやく落ち着いてきた。

 美味しいものを食べてそれなりに、ユウヤなりにこのお祭りを楽しんでなんだかんだとゆっくりと過ごしていた。

 喫茶店の片隅で、ユウヤはのんびりとお茶を飲んでいた。

 肖像画が出回ったため、大騒ぎになってしまうので顔はフードで隠している。

 それはオオグも同じだった。

 ちなみに、ジュリとエステルはだいぶ前に仕事があるとかで帰っていった。

 ただ、エステルはまた近いうちにこちらに来るらしいが。

 会話の流れで今後の話になる。


 「いや、だからなんで?」


 「だってお前、もう、お役御免なんだろ?

 十分な恩賞もらって、のんびりするなら、同じのんびりなら俺と一緒に遊ぼうぜ。

 元々そのつもりだったし。

 それに」


 そこでオオグは、少し真剣な顔をする。


 「それに?」


 「ジュリさんが、やけにお前のこと心配してたんだよ」


 「なんで?」


 「ほら、魔王倒した後の打ち上げの焼肉の時に、お前からパワハラ勇者の詳細聞いてただろ?」


 「あー、うん」


 「あの人が分析するに。ほぼ百パー、仕返ししてくるだろうから、気をつけた方が良いって言われたんだよ」 


 「…………」


 仕返し。

 もちろん、それも覚悟の上でユウヤは自分を追い出したパーティの元仲間たちの悪行を王様に訴えた。

 魔王の首級という手土産と、別の勇者を連れていたことを王様は理解してくれた。

 今や、元勇者パーティ達はお尋ね者になりどこに行っても後ろ指を指される存在となってしまった。

 また、ユウヤの告発によって調べたところ彼の余罪が明らかになったのだ。

 その殆どが婦女暴行であった。それも、性的な。

 救いなのは、望まぬ妊娠の報告が無かったことだろう。


 「で、このお守りを渡してくれって今日送られてきた」


 オオグに言われ、渡されたのはビー玉のような水晶に首から下げられるように紐が通されたものだった。


 「そのパワハラ勇者に殺されそうになったら、それを思いっきり割れってさ」


 「わかった」


 「というわけで、遊ぶか!」


 ウキウキとオオグは地図を出してくる。


 「こっちの大陸にも、あちこち面白そうな場所あるんだなー。驚いた」


 それは、この大陸の地図だった。

 魔大陸もそうだが、この大陸ですら未開の地はまだまだあるのだ。


 「お前にはいきなり魔大陸でのサバイバルはレベルが高かったみたいだし。

 もうすぐ来ると思うんだけど」


 「くる?

 って、だれが?」


 「俺のサバイバルの先生。

 色々教えてくれる。それも、イージーモードで」

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